グローカル外交ネット

令和4年2月28日

在サンフランシスコ日本国総領事館

1 サンフランシスコ日本町を直撃した新型コロナウイルスの影響

 サンフランシスコには、北米に現存する3つの日本町(注)のうち一つがあります。日本人の移民や居住の歴史は19世紀後半に遡り、20世紀初頭以降、サンフランシスコ日本町は現在の場所において日本人や日系人の居住地として発展してきました。その後、第2次世界大戦下の強制収容の時期を経て、今では日本人だけでなく米国人を惹きつけ、日本の文化を日系コミュニティにとどまらず、米国の多様な社会に伝える場として重要な役割を果たしています。
 日本町の中心にはジャパンセンターというモールがあり、ラーメンや寿司、たこ焼き等の日本食の飲食店や、日本食品のスーパーマーケット、書店、日本の100円ショップのような廉価で便利なグッズを購入できるショップ、その他アニメや漫画に関連する店舗等が多数入っており、週末には若者や観光客等の多くの来客で賑わっていました。しかし、カリフォルニア州が新型コロナウイルス感染防止対策として自宅待機令を発令した2020年3月以降、来客数が激減し、モール内の店舗の多くは営業停止を余儀なくされました。カリフォルニア州は、2021年6月にようやく自宅待機令を解除し、徐々に来客数は戻り始めていますが、日本町の各店舗がそれまでに受けた経済的なダメージは大きく、モール内に増えていた空き店舗がもたらす負の影響も懸念されていました。
(注)サンフランシスコのほか、サンノゼ、ロサンゼルスに所在。

2 都道府県のアンテナショップをサンフランシスコへ

(写真1)Japantennaの入り口 Japantenna外観

 そうした危機的な状態だった日本町に賑わいを取り戻そうと、「Japantenna」という企画が動き出しました。日本の銀座や日本橋等には多くの都道府県がアンテナショップを出し、魅力的な観光資源や食品、特産品等を発信していますが、そのアンテナショップを異国の地であるサンフランシスコでも設けようという企画でした。しかも、一つの都道府県に限らず、一定期間ごとに様々な都道府県に焦点を当てるというアイデアです。
 企画を推進する日本人・日系人の方々により非営利法人「Japantenna」が設けられ、本業を他に持つ彼らが中心となり、夜間や週末等に少しずつ企画の実現に向けて準備が進められました。また、カリフォルニア州北部の鹿児島県出身者らが集う北カリフォルニア鹿児島県人会との協力も実現し、第一回「Japantenna」では鹿児島県にスポットライトが当たることになりました。そして、ジャパンセンター内の空き店舗スペースを活用し、2021年11月12日から12月5日までの約1か月間、金曜日、土曜日、日曜日に営業する形で、鹿児島県から直送された焼酎や日本茶、工芸品等の特産品や観光資源等を紹介する物産展の開催が実現したのです。

(写真2)リボンカットイベントに参加する市長と人々 サンフランシスコ市長・総領事等によるリボンカッティング
(写真3)物産展を見る市長と人々 サンフランシスコ市長の店内見学

 在サンフランシスコ総領事館としても、本企画が日本の地方の文化や魅力を発信する点で効果的であったことに加え、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により生活に支障が出ていた当地の日本人・日系人の支援に直結するものであったことから、外務省の「海外在留邦人・日系人の生活・ビジネス基盤強化事業」を活用してこの企画を支援しました。また、開店前のレセプションでは公邸料理人が鹿児島県から直送された食材を用いた料理をサンフランシスコ市の市議会議員等の公選職や日系コミュニティのリーダー等に振る舞いました。リボンカットイベントにはサンフランシスコ市の市長も出席し、総領事とともに祝辞を述べました。
 結果的に、営業期間を通じて約6,000人(1日平均で約500人)が来店し、その内訳も日本人、日系人、その他米国人が同程度の割合であり、日系人以外の米国人訪問者の多くが鹿児島県を知らなかったことから、当地における鹿児島県の認知度向上や魅力の発信に大きく貢献することになりました。加えて、ジャパンセンターモール内の他の店舗とのクロス・マーケティング(注)も実施されたことで、モール内の回遊性の向上も実現し、日本町の活性化につながりました。
(注)「Japantenna」店頭で配布されたステッカーをモール内の協力店で見せた場合の商品の授与や、協力店で購入可能な鹿児島県特産品を「Japantenna」店内で明示等。

3 続く都道府県の企画に向けて

 今回、出店に至るまでの準備のほとんどは前述のとおり本業を他にもつ熱意ある「Japantenna」関係者の方々により行われ、営業期間中の店舗運営も文化的背景が様々な約60人のボランティアスタッフにより行われたほか、多数の日系コミュニティが組織を超えて連携し、本企画を支援しました。本来、日本の都道府県が海外で物産展を一定期間大規模に実施する際は、現地での支援体制づくりが特に難しいポイントだと思われますが、こうしたプラットフォームが築かれたことには大きな価値があるでしょう。また、初めての企画ということで基本的に特産品等の販売は行われませんでしたが、そうした産品の販売を望む声も多かったようです。今回の企画の結果生まれたこうした価値や経験を活かして、次回以降の都道府県のイベントに向けた検討も進むことになるでしょう(注)。
 日本には、各地方に歴史的に根付く文化や特産品、豊かな食文化、多様な観光資源があります。比較的日本文化に対する認知度が高いカリフォルニアであっても、東京、京都、大阪等の大都市に比べるとその他のエリアはまだまだそれほど有名ではありません。しかし、日本人が地方に観光に赴くように、また、銀座や日本橋等にある各都道府県のアンテナショップに魅力を感じるように、ここ米国でも日本の地方に魅力を感じる人が多くいることを今回の企画は示しました。引き続き地方の魅力を多くの米国人に感じてもらうことで、地方の産品の販路拡大等に加え、再び国際的な人の往来が戻ってきた際に、実際にその地方に行ってみたいという観光需要を高めることにもつながるでしょう。
(注)もし本件プロジェクトにご関心がある都道府県担当者の方がいらっしゃれば、ぜひ当館までご連絡願います(連絡先:yusuke.shimada@mofa.go.jp)。

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