グローカル外交ネット
外務省での勤務を通じて
外交実務研修員 各務 百合香
(岐阜県から派遣)
1 はじめに
私は、2020年4月に岐阜県から外務省に派遣され、外交実務研修員としてアフリカ部アフリカ第二課で勤務しています。岐阜県では、中小企業者への資金貸し付け、県土整備政策の総合企画・調整の業務等に携わっていました。これまで国際関係の仕事の経験が全くなく、加えて自身の語学能力に自信がないこともあり、未知の世界である外務省での勤務に大きな不安を抱きながら東京に来たことを覚えています。この度、本寄稿の機会をいただきましたので、今後、外務省で勤務される外交実務研修員皆様の少しでもご参考になりましたら大変幸いです。
2 業務内容について


(アフリカやTICADのことを随時発信していますので、是非フォローをお願いします!)
私が所属するアフリカ第二課は、本省の中では「地域課」といわれる日本と各国の二国間関係を担う課で、要人往来などを通じて、政治・経済面や国際場裏での協力など、よりよい二国間関係構築のために日々業務をしています。アフリカ大陸54か国中、東部アフリカ及び南部アフリカを所管しており、私はナミビア共和国及びレソト王国を担当しています。お恥ずかしながら、着任したばかりの頃は、ナミビアとレソトのことはおろか、「アフリカ」に関する知識すら満足にありませんでした。そのような中で、「国担当というのは外務省の中でその国を1番知っていないといけない」という言葉を耳にし、非常にプレッシャーを感じました。日頃から、担当国の政治情勢、経済、新型コロナウイルス感染状況等の情報収集をはじめ、大使館とのやりとりを通じた業務進行、突然降ってくる案件への対応等、業務は幅広いです。残念ながら、新型コロナウイルス感染症により、担当国の要人往来は叶いませんでしたが、コロナ禍による在留邦人の退避支援や駐日大使館との交流、日々の業務を通じて、地域課の醍醐味である「外交」を肌で感じることができました。その中でも特に印象深い業務を2つ御紹介します。
(1)外務大臣のアフリカ出張
2020年12月、外務大臣がアフリカ4か国に出張することがあり、私はコロナの防疫担当をさせていただきました。厚労省との調整をはじめ、大使館を通じて収集した各国の防疫ルールを踏まえ、「この国に入国するには何日前にどの国でPCR検査を行う」といった条件を整理して大臣一行の日程に反映する等、やることは様々でした。当時、コロナ禍での大臣出張はあまり前例がなく、全てが手探りだったことに加え、日々変わりゆく各国のルールに戸惑い、「自分のミスで一行が入国できなかったらどうしよう。」という不安と緊張感と共に日々業務に当たりました。上司や周りの皆様からの多大なご支援により、大臣一行が無事に各国の訪問を終え帰国した時には、今までに経験したことのない安堵と達成感を感じました。他省庁や関係部局、担当国以外の大使館の方々とのやりとりを通じて、「大臣出張」という一見華やかな外交活動の裏には、想像以上に多くの方々が関わっており、並々ならぬ皆様のご尽力よって成り立っていることを知ることができ、大変貴重な経験でした。
(2)アフリカ開発会議(TICAD)
TICADとは、1993年に立ち上げられたアフリカ開発に関するフォーラムであり、アフリカのオーナーシップと国際社会のパートナーシップという原則の下、アフリカ主導の発展を力強く後押しています。これまでに計7回の会議を実施し、本年はTICAD8を開催予定です。私は広報を担当しており、本番に向けて機運を高めていくべく、共催者や関係者の方と連携の下、業務を進めています。「広報」と一言にいっても、国内外と訴求対象も幅広く、ツールも様々なので、とても奥が深いと感じています。中にはアフリカ側の協力も得て進める案件もあり、(広報に限った話ではありませんが)他国との調整は自分の想像以上に難しく、思うように事が進まないことのもどかしさを感じることもあります。それでも、諦めずに粘り強く働きかけた結果、少しでも事態が進展した時には喜びを感じますし、一担当のクリエイティブな発想が求められる広報業務はとてもやりがいのある仕事だと感じています。
3 本省勤務で感じたこと
日々の業務を通じて感じることは数多くありますが、中でも特に感じたことが2つあります。
1つ目は、職員皆様の仕事に対する意識の高さです。地域課という仕事柄、現地との時差による定時外の勤務は勿論のこと、例えば担当国で暴動が起こり、特に在留邦人に関わる危機事案であれば、深夜であろうと至急の対応が求められます。そのような中でも、各担当が強い使命感と責任感をもって、深夜、週末を問わず働かれる姿を間近にし、私自身、仕事に対する向き合い方を見つめ直すきっかけとなりました。
2つ目は個々の職員に与えられる裁量です。外務省では、各担当の意見を取り入れてもらえる余地が大きく、その分、個々の十分な専門性や高い職務遂行能力が求められます。以前、担当国のある案件を担当した際に、「今各務さんがどれだけ頑張るかによって今後が変わってくるよ。」と言われ、国担当という仕事の責務を改めて認識しました。以降、そのような意識を持ち、日々業務にあたっています。
4 おわりに
本省勤務も気づけば残すところ3か月余りとなりました。外務省独特の言い回しやカタカナ用語、日々飛び交う様々な言語、これまで経験したことのないスケールの仕事をとんでもないスピード感でこなしていく職員の皆様、そして膨大な業務量。何もかもに衝撃を受け、このまま2年過ごしていけるだろうかと、特に最初の半年間は大変不安な気持ちを抱えながら過ごしました。今でも、自分の至らなさに日々反省し、勉強の毎日です。そんな私が何とかここまでやってこられたのは、困った時は助け合おう精神で、どんなに忙しい時でも嫌な顔一つせず相談にのって下さるアフリカ第二課の皆様の温かなお力添えがあったからです。アフリカ愛に溢れたアフリカ第二課の皆様と一緒にお仕事をすることができたことは、私の人生でかけがえのない財産となりました。このような貴重な学びの機会を与えていただいた岐阜県、そしてこんな私を受け入れて下さった外務省、お世話になった関係者皆様に、改めて心から感謝申し上げます。
春からは在外公館での2年間の勤務生活が待っています。残された日々を悔いのないよう大切に過ごし、本省で学ばせていただいたことを糧に少しでも成長できるよう、日々精進いたします。ありがとうございました。