グローカル外交ネット

令和4年1月21日

長野県松川町

1 ホストタウンのきっかけ

 長野県松川町は、「生活改善」に関するJICA研修員受入れをきっかけにコスタリカとのご縁が生まれ、2016年12月にコスタリカのホストタウンとなりました。研修という枠を越え、より幅広い世代・分野で事業を展開することで、遠い国にも親しみを持ち、人とつながり温かみのある交流で親交を深めてきました。

2 町民有志団体「コスタリカくらぶ」が誕生!

(写真1)踊りのステージを見る人々 コスタリカ祭りにおけるダンサーとの交流の様子

 最初は多くの町民が「ホストタウンってなに?」「コスタリカってどこ?」という状態でした。まずはコスタリカを知ってもらうことからホストタウン事業が始まりました。具体的には、地域のイベントでのコスタリカ料理提供、中学生がデザインしたコスタリカの友好をPRするポロシャツの販売、コスタリカの柔道選手を招いての交流会など様々なことに取り組んできました。
 これらの活動を進める中で、町民有志による「コスタリカくらぶ」が発足しました。コスタリカくらぶ主催の、映画「コスタリカの奇跡」上映会は、町内外から約270人もの参加があり、ホストタウンや相手国について広く知ってもらう機会となりました。また、2019年夏には、コスタリカ人ダンサーを招いてのイベント「コスタリカ祭り」を開催し、歌や踊りのステージ、伝統料理教室、民族衣装体験、中米展示コーナーに加え、ボッチャ体験や選手団への応援旗作成などを行い、東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けての機運醸成を図りました。自主企画の講演会「プラビダ会」では、在コスタリカ日本国大使館に勤務されていた山口知也さん、翌年には河本秀夫さんをお迎えして、コスタリカでの活動や国の特徴についてお話をお聞きしました。
 活動を通じ、町民からは「コスタリカに行きたくなった」「選手たちを応援したい」「海外に興味が沸いた」などの声が多く届くようになり、当町のホストタウン事業に多大な貢献をしていただきました。

3 ホストタウン事業を通した子どもたちの成長

 この事業を子どもたちの学びにつなげたいと、2019年3月、町で初めての海外派遣事業「コスタリカ・スタディツアー」を実施しました。地元の高校生10名が、半年間の事前学習ののち現地を訪問。小学校や高校交流ではお互いの国や生活について紹介したり、折り紙やダンスをしたり交流を楽しみました。ホームステイや「生活改善」研修地視察などを通して日本との違いを体感した高校生たちは、「国際関係に興味がわいた」「将来留学したい」と進路にも大きな影響があったようです。
 また、日本で開催された柔道やテコンドーの世界大会には応援観戦ツアーを組み、町民が会場で声援を送りました。参加した小中学生は「世界レベルの試合を生で見られて感動した」「私もいつか世界の舞台に立ちたい」と、貴重な機会になりました。選手からも「遠い国へ一人で試合にきたが、ホストタウンの声援が励みになった」などの言葉がありホストタウンの意義を実感しました。

4 オンラインで広がった交流の輪

 コロナ禍では、コスタリカとのつながりが途絶えないよう、オンラインでコスタリカから中継したマリンバコンサート、学生交流会、現地バーチャルツアーなど新たな交流の形を模索しました。また、大会前に町から選手団に向けた応援動画も作成し、コスタリカの選手団壮行会で上映されました。オリンピック観戦ツアーなど中止になった事業もあり、大会直前までコロナに対する不安もありましたが、無事に大会が開催され、テレビ越しに選手たちの活躍を見たときは胸が熱くなりました。

5 コスタリカ選手団との交流が実現

(写真2)ハードル競技をしている選手 オリンピック陸上競技出場選手との交流
(写真3)パラリンピック出場選手と児童たち パラリンピック出場選手への児童手作りメダルの贈呈

 大会時には、オリ・パラともに出場を終えた選手との事後交流を実施することができました。オリンピックでは陸上選手2名と駐日コスタリカ大使夫妻が来町しました。中学生の有志10名が実行委員会となり、町の紹介や文化体験など歓迎会の内容を考え、当日の司会や運営も自分たちで行いました。「皆で考えた企画を楽しんでくれてうれしかった」と達成感でいっぱいの笑顔が心に残っています。ほかにも選手と一緒に走ってみる陸上交流会や講演会を開催しました。
 パラリンピックでは、コスタリカ初となる金・銀メダルを獲得した陸上選手2名と関係者3名を迎え、小・中学校との交流や着物体験、農園で果物収穫体験などを実施しました。子どもたちはテレビで応援していた選手との対面に目を輝かせ、選手団も「こんなに遠くから応援を送ってくれて、今日会えたことは本当に幸せ」と喜びを分かち合いました。

6 おわりに

 日本から遠く離れたコスタリカとの交流を通して「自分の世界が広がった」という地域の方々、「海外への憧れが将来の目標になった」という若者、「コスタリカ選手を応援した」という子どもたち。 いろんな人々の心の動きを生み出すことができました。この事業が 一人ひとりの世界や興味を広げるきっかけとなり、誰かの人生に活かされるものとなっていたら、こんなに嬉しいことはありません 。
 今後は、対外的な交流だけでなく、町内に住む外国籍の人々とつながる多文化共生社会の推進にもホストタウンの経験を活かしていきます。

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