グローカル外交ネット
お互いの気持ちはまるで新緑から深緑へ。それはやがて常緑に!
(緑色をシンボルカラーとする国、アイルランドとのホストタウン交流事例より)
北海道遠軽町
千葉県成田市
外務省地方連携推進室
1 緑でつながる北海道遠軽町
遠軽町(えんがるちょう)は、北海道オホーツク管内のほぼ中央の内陸側に位置し、全国有数の行政面積を誇る人口2万人弱の町です。大雪山系の山々から広がる豊かな森林と清流を有する「緑」豊かな遠軽町は、「緑」が街中を埋め尽くされる伝統的な祭り「セントパトリクス・デー」にちなみ、緑が国のシンボルカラーにもなっているアイルランドのホストタウンに登録されています。
2020年12月に遠軽町がホストタウンに登録されたきっかけは1964年の東京オリンピックまで遡ります。同大会では44か国の選手団がそれぞれ持ち寄った272の樹木の種子が日本各地に配布され、このうちアイルランドのパイン類などの樹種の苗は遠軽町に所在する児童自立支援施設「北海道家庭学校」の敷地内で、施設の子供たちの手によって展示林として現在まで大切に育てられてきました。50年以上の時を超えて、今では160本以上の樹木が大きく育っています。この展示林をきっかけに、駐日アイルランド名誉領事を通じた駐日アイルランド大使の協力により、同国のオリンピック・パラリンピック委員会の同意を得て、ホストタウンに登録されました。アイルランドとのホストタウン交流の取組を通じて、展示林を「みどりと国際交流のレガシー」として、「森林を守り、育てること」及び「国際交流」の大切さを次世代に継承する活動を展開しています。

遠軽町はホストタウン登録後、コロナ禍の中においても、様々な交流事業を展開しています。2月13日に行われた交流事業では、笠間聖司アイルランド名誉領事による「アイルランド講座」や、アイルランドのオリンピック出場選手に向けた応援メッセージ入りオリジナルエコバックを作成する「小中学校お絵かきエコバック作り」が行われました。子供たちはクレヨンを使ってヒグマやエゾシカ、花や昆虫、国旗など思い思いの絵を描き、同国選手に使ってもらえるよう一生懸命オリジナルのエコバックの製作に励みました。

3月20日には、道の駅遠軽森のオホーツクで「エンアイリッシュデー」が開催されました。これは町民のアイルランドへの愛着と東京大会に向けた機運醸成を図るため行われたもので、エンアイリッシュの「エン」は遠軽の「遠」と「縁」の意味が込められています。この日は、アイルランドの「セントパトリックス・デー」にちなんで、緑の物を身に付けた来場者にミニキャンドルをプレゼントするイベントを開催し、同会場は緑色に染まり、盛り上がりを見せました。また、夕方からは、同道の駅を緑色のライトで照らすグリーンライトアップと本格的アイリッシュバンド「ノーツオブノース」によるコンサートが行われ、来場者はアイルランドの雰囲気を味わい楽しんでいました。
2 共生社会でつながる千葉県成田市

2018年8月にアイルランドを交流の対象国としたホストタウンに登録され、その1年後にはパラアスリートとの幅広い交流を契機に共生社会の実現に向けた取組を加速し、東京大会以降につなげていく同国の共生社会ホストタウンにも登録された千葉県成田市。コロナ禍にもかかわらず、2021年に入ってからも活発な取組が進められています。
2月11日に、アイルランドパラリンピック委員会協力の下、共生社会応援プロジェクト「Para Beats!勇気を奏でよう。A celebration for para athletes」を開催し、両国のアーティストをリモートでつないだコンサートも実施しました。U2などのプロデューサーでもあるアイルランドの伝統楽器の第一人者ドナル・ラニー氏と、元鼓童メンバーで日本を代表する和太鼓奏者である林田ひろゆき氏が作曲したパラアスリートへの応援歌「PARA Beats! Ireland and Narita in Harmony」を中心に、両国の障がい者ユニット等も加わって、会場とYouTube配信とのハイブリッド形式によるリモートセッションを行い、国境や年齢、障がいの有無などを超えて奏で合う音楽で交流を深めました。このプロジェクトを機に結成された、成田市の障がいを持つ子供たちのよる和太鼓衆「不動」6人にとっては初舞台という貴重な体験になったようです。参加したメンバーからは「毎日15分ほど練習していたので、手にまめが出来てしまいました。緊張したけども、とても楽しかったです。」といった声が届けられました。成田市は、このプロジェクトによる成果を一過性のものにすることなく、大会後も、そのレガシーを生かし、さらなる共生社会の実現のため、様々な取組みを推進していくこととしています。
このほか、5月1~5日に成田市で開催された「NARITAスポーツツーリズムフェス」では、ボッチャや車イスバスケットボールといったパラリンピック競技に加え、アイルランド発祥の伝統スポーツ「ゲーリックフットボール」の体験会も行われました。
3 おわりに
今回はアイルランドのホストタウンに登録されている自治体のうち、2つの自治体の最近の取組に焦点を当てて紹介しました。
コロナ禍で世界中が困難な状況にある中、「緑」「共生社会」「音楽」といった様々な切り口で、オンライン形式も一部織り交ぜながら、どのような形でホストタウン交流を行うことができるのか、工夫・模索する姿を見ることができました。いよいよ東京大会が開幕しますが、大会が終わった後も住民の間で相手国との関係がレガシーとして残っていくことを願っています。