グローカル外交ネット
ホストタウンを超えたホストファミリーを目指して
(秋田県能代市とヨルダン)
秋田県能代市
能代市は過去にヨルダン・ハシェミット王国との交流はありませんでしたが、内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局からの推薦を受けて駐日ヨルダン大使館と協議を重ね、ヨルダンは国として再生可能エネルギーや観光に力を入れているなど、政策面での共通部分が多いことや両地域に「世界遺産」を共通して有していることなどから、2019年8月にヨルダンのホストタウン登録に至りました。また、2020年4月には同国の共生社会ホストタウンにも登録されました。
1 これまでのヨルダンの交流や広報などの取組
ホストタウン登録直後の2019年9月には、東京での世界選手権を終えたヨルダン空手・テコンドーチームの選手団がそれぞれ能代を訪問し、書道や弓道体験、空手の技術指導等を通して、高校生をはじめ市民と交流しました。
しかしこの時点では、多くの市民が同国の情勢どころか、位置さえ分からない状況であったため、駐日ヨルダン大使館から全面的に協力いただき、市民がヨルダンの情勢、歴史・文化等について学ぶため、同年12月にリーナ・アンナーブ駐日ヨルダン大使及び元JICA職員による講演会を実施しました。また、同イベントでは駐日ヨルダン大使館とスポーツ、文化、経済、教育等の交流を将来的に行うことを同意するパートナーシップ協定を締結したほか、民族衣装の試着体験や大使館料理人によるヨルダン料理の振る舞いを行いました。
2020年1月には、市長をはじめとした能代市訪問団がヨルダンを訪問し、パラリンピック委員会や各競技団体の代表者と事前合宿や2020東京大会に向けた取組等について意見交換しました。また、オリンピック委員会会長であるファイサル王子とも会談し、本市が同国のホストタウンとなった報告をするとともに、今後のスポーツ、経済、教育等の交流について意見交換し、親交を深めました。
2 コロナ禍におけるオンラインを中心としたホストタウン交流の推進
2020年4月以降は、新型コロナウイルス感染症の影響から同国との交流に制限がありましたが、オンラインを交えながらこれまで以上にイベント等の開催に力を入れ、市民等がヨルダンを理解する機会を創出したり、双方でメッセージ動画を送り合ったりすることで、コロナ収束後の積極的な国際交流の実現を願うとともに、ヨルダンとの絆をより深めることができました。
同年10月には、市民以外の方々にもヨルダンとのホストタウン交流の取り組みを紹介し、両地域の観光スポットや特産品をPRして今後の誘客につなげることを目的として、東京駅隣接施設において駐日ヨルダン大使館と共同でイベントを開催しました。会場には6日間で約1,500名の来場があり大きなPR効果があったほか、今後の事前合宿受け入れや交流イベントに向け、ヨルダンや中東地域出身の方々と接点をもつ機会となり、東京開催による大きな成果がありました。
また、同年11月、12月には、現在もヨルダン在住でボランティア活動されている日本人講師によるオンライン講演会やヨルダンラグビー協会や選手等とのオンライン交流、ヨルダン人監督による難民キャンプで生活する家族を描いた映画の上映会、映画に関連する写真展を開催するなど、様々な側面からヨルダンの知識と理解を深めました。
さらに、2021年2月には、ヨルダンのハラール料理を通じて、共生社会を考えるイベント等を実施しました。約1週間実施した「能代×ヨルダンを結ぶ”絆”グルメフェア」では、白神ねぎなど能代の食材を積極的に取り入れ、ヨルダンの方でも食べることができるオリジナルヨルダンコラボ料理を、それぞれの飲食店の特色を生かしながら新たに考案して各店で提供しました。また、同イベントに合わせて食を中心としたムスリム講習会を実施し、イスラームへの基本的な知識から、実際にハラール対応の料理を試食しながらムスリムの食文化やハラールについて市民等が学びました。
3 大会や大会後を見据えたホストタウン交流発展の展望
これまで様々な交流等を実施することで、ヨルダン本国及び同国駐日大使館との親交が深まったこと、ヨルダンの知識や人の繋がりが増えたこと、市民等におけるホストタウン事業への理解者や協力者が着実に増えたことなど、地域のホストタウンにおける関心度が高まっていると感じています。また、イベントに高校生や障がい者など、障がいの有無、老若男女問わず、多くの市民が参加してくれたことで、市民レベルの国際交流の可能性も感じています。
この機運を継続的に高めながら、大会では、事前合宿の受け入れ、現地応援団派遣やパブリックビューイングの開催等、市全体でヨルダン選手団を応援する体制を整えるとともに、子供たちがオリンピアンと交流することで、スポーツ選手を目指すきっかけとなり、将来日本を代表する選手になってくれることを期待しています。
大会後については、ヨルダンとは将来的に、文化、スポーツ、教育、経済等様々な交流の取り組みに合意している中で、小中高生のスポーツ交流、交換留学等の教育交流、観光や企業人材の行き来などの経済交流を通して、お互いがホストタウンとして快く受け入れ、いずれはホストタウンを超えたホストファミリーになれるよう、今後も様々な事業展開を推進していきたいと考えています。
これまで、国際交流が少なかった本市にとって、このホストタウン交流を絶好の機会と捉えています。まずは今夏、新型コロナウイルス感染症拡大防止の対策を講じながら、万全の体制でヨルダンの皆さんをお迎えしたいと思います。