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復興ありがとうホストタウン・パラスポーツと音楽でつながる交流(宮城県加美町とチリ)
宮城県加美町
加美町は、仙台市から北に約30キロメートル、宮城県北西部に位置し、秀峰薬萊山や鳴瀬川の清流にはぐくまれた緑豊かな町です。
また、国内有数の音響効果を誇る“中新田バッハホール”を有しており、国内外の一流演奏家によるコンサートが開催されるほか、市民オーケストラ“バッハホール管弦楽団”が創設され、地方からの文化発信の象徴的存在として知られています。
加美町のホストタウン相手国であるチリ共和国は、南米大陸の太平洋側に位置し、アンデス山脈、氷河、砂漠地帯などの壮大な自然、サーモン、銅、ワインなどで有名な“世界一細長い国”です。
1 加美町・南三陸町・チリ共和国のつながり
加美町がチリ共和国(以下、チリ)のホストタウンとなった契機は、南三陸町とチリとの友好に深く関係しています。
加美町は、東日本大震災で被災した南三陸町をはじめとする沿岸部の住民を受け入れるなど、復興支援を行ってきました。その間、両町民の交流が促進され、今でも南三陸町へ戻った方と支援した方の交流が継続しています。
一方、南三陸町は1960年のチリ地震津波以来、共に復興を目指したチリとの友好関係を結んでおり、1991年には友好の証を後世に伝えるため、チリ人の彫刻家により制作された、モアイ像が志津川地区に設置されました。以来、モアイ像は友好と防災のシンボルとして町民に親しまれてきました。
しかし、そのモアイ像は、2011年東日本大震災の津波により叩き飛ばされてしまいました。それを知った日智経済委員会チリ国内委員会は復興を願い、新たなモアイ像を南三陸町に贈ることを検討し、2013年にイースター島で制作されたモアイ像が贈呈されるなど、支援を受けました。
こうしたチリからの支援への感謝をあらわす取り組みを、震災当時から南三陸町との交流を続ける加美町が、ホストタウンとなって実施することになりました。
子どもたちが、パラリンピックを目指す選手と交流し、夢を追いかける姿を目の当たりにすることは素晴らしい教育であり、さらに事前合宿の受け入れにより、様々なノウハウが蓄積されることで、スポーツツーリズムの推進や地域振興にもつなげていけると考えています。
2 パラカヌー事前合宿2019(パラスポーツを通じた交流)

2019年8月、チリのパラカヌー選手団が来町し、2週間の事前合宿を実施しました。合宿期間中には、町内の小学生や町民との交流事業が行われたほか、南三陸町訪問では復興状況の視察や、志津川高校情報ビジネス科が取り組む「南三陸モアイ化計画」(注)について説明を受け、理解を深めました。
また、選手の安全確保のため、消防署による救急訓練も実施。これは通訳センターを介し、選手自身が母国語で119番通報する訓練です。
選手団は精力的に各種活動に参加し、交流を深めました。この事前合宿の様子は、町ホームページ、広報誌、新聞、テレビ等、多くの媒体で発信され、広く知られることとなりました。
(注)南三陸モアイ化計画とは、南三陸町内にモアイ像が点在していることから、モアイ像をモチーフにした商品などを制作・販売を行うことで地域活性化を目指す取組。
3 チリ青少年オーケストラ財団FOJI(音楽を通じた交流)
チリには「フォヒ・チリ青少年オーケストラ財団」(以下、フォヒ)という8歳~24歳の青少年が参加するオーケストラがあります。各地域に18の団体があり、国内外で数多くの演奏会を行っています。青少年は奨学金制度を利用しながら音楽を学び、音楽家を目指します。

2020年2月、中新田バッハホールを訪れたフォヒは“優れた音響設備や温かい雰囲気が素晴らしい”と絶賛し、また、“音楽を通じて生まれた加美町との友好に感謝し、交流が深まることを願っている。ぜひ、チリの青少年オーケストラと、バッハホール管弦楽団の交流演奏を実現したい。”と今後の交流へ期待を語りました。
さらに一行は南三陸町を訪問し、友好の証としてチリから贈呈されたモアイ像や復興の様子を視察しました。今後も音楽を通じた更なる交流促進に努めていきます。
4 チリ出身の国際交流員
チリパラリンピック選手団の事前合宿受入れに向け、準備を円滑に進めるため、2019年8月から加美町スポーツ推進室に国際交流員(CIR)としてチリ出身のカタリーナ・サラビアさんが採用されました。
カタリーナさんは、ホストタウン事業において通訳・翻訳はもとより、子どもたちや町民にチリ文化の紹介等、加美町とチリの架け橋としてさまざまな業務を担っています。
5 2021年の取り組み

加美町は、復興ありがとうホストタウンに加えて、パラリンピアンとの交流をきっかけに共生社会実現に向けた、ユニバーサルデザインのまちづくりや、心のバリアフリーの取り組みを推進する、共生社会ホストタウンにも登録されました。
2021年は、東京2020大会の直前にパラカヌーのほか、パラ陸上、パラパワーリフティングの事前合宿を受け入れる予定です。
今後もホストタウン事業を通じて誰もが暮らしやすい町「人にやさしいまちづくり」の実現、更にスポーツと文化交流を促進し取り組んでまいります。