グローカル外交ネット
ホストタウン給食を通じて相手国・地域をよく知ろう!
外務省大臣官房地方連携推進室
「次の給食ではどんなメニューが出てくるのだろうか?」といったクラスメートの会話が聞こえてきそうです。ホストタウンに登録された自治体が,相手国・地域のことを市民にもっと知ってほしいと,小・中学校の給食に相手国・地域の郷土料理を提供する取組が日本全国に広がっています。今回は3つの自治体の取組を取り上げ,それぞれネパール,コロンビア,セルビアのメニューを学校給食で提供した際の感動や苦労について伺ってみました。
まずは長野県駒ヶ根市がネパールの国民食の「ダルバード」を給食で提供した取組を紹介します。市教育委員会の海外派遣国際交流事業に参加した生徒自身が給食での提供を通じてネパールを紹介することを提案し,実現に至ったものです。
実際の調理にあたっては,給食センターの調理員がJICA駒ヶ根青年海外協力隊訓練所のネパール語講師から調理法を習い,小・中学生向けに本来の辛みを抑えて提供しました。慣れない独特の香辛料の味に戸惑う生徒もいた一方で,「意外に美味しい」とおかわりをする生徒も出ました。海外派遣事業に参加した生徒は自らの食体験をクラスメートと共有できたことを大変喜んだそうで,これまでネパールの国の存在自体知らない生徒も,今回の生徒発案の給食提供により全員がネパールの存在をしっかり認識するようになったそうです。

続いて,埼玉県加須市がコロンビアのメニューを提供した取組を紹介します。コロンビアは東京大会の事前キャンプを加須市で行う予定であり,馴染みのある学校給食でコロンビアの料理を提供することで,同国やホストタウンへの市民の理解を深め,東京大会を盛り上げるきっかけにしたいという想いから実現したものです。アヒアコ(コーンクリームスープ)やギザド・デ・ポーヨ(チキンと豆の煮込み)といった普段聞き慣れないメニューが並びました。コロンビアと日本では,主食の扱いや味付けなど食習慣が異なるため,日本の小・中学生用にアレンジするのに苦労し,加須市周辺では中南米料理を提供する店がなかったため,わざわざ都内の店を訪問して,味付けの確認をしたそうです。
その甲斐あって,実際に給食を食べた子供たちは「コロンビアはサッカーが強い国。ギザド・デ・ポーヨはトマトの味がしてハヤシライスみたいだった。アヒアコもじゃがいもにスープの味が染みこんで,おいしかった!」とコロンビアという国や食文化への理解を深めた様子でした。給食提供に携わった栄養士は,「食を通じて世界が広がる手だてになればよい。機会があれば,東京大会を盛り上げるために,またコロンビア給食に挑戦したい。」と次なる取組に向けて意気込んでいます。

3つめに紹介するのは,セルビアのホストタウンの山口県防府市による取組です。防府市ではホストタウン推進事業の取組の一つとして,平成28年度からこれまで何と35回にわたりセルビア給食を実施しています。セルビア風のパン(ソムンパン),ハンバーグ,サラダ,カツレツ,スープ(ピレチャ・スーパ,ホワイトチョルバ)といった色とりどりのメニューは,駐日セルビア共和国大使館の大使秘書から教わったレシピをもとに生徒が食べやすいようにアレンジされ,初めて登場するものについては,学校や市で栄養を担当する職員が安全面や価格面において提供可能なメニューになるよう食材業者等と協議を重ねました。
生徒や学校の関係者は「食べやすくておいしい。毎回同じメニューではなく,工夫されたメニューが組まれている」とセルビア給食を楽しみにしている様子が伺えました。お馴染みになったセルビア給食の日には,セルビアに関する資料もあわせて掲示することで,セルビアという国を理解し,同国のバレーボールチームを応援する雰囲気を醸成しています。こうした動きは,同じくセルビアのホストタウンの埼玉県富士見市にも広がっており,ホストタウン同士の横の連携強化にも貢献しています。

最後に,相手国の学校給食を提供したそれぞれのホストタウンから,相手国や子供たち,東京大会に向けたメッセージをお届けします。
- 長野県駒ヶ根市:
「これからも市民を巻き込んだ草の根レベルでホストタウン相手国の理解を促す取組を実施し,東京大会では市を挙げて相手国を応援する機運を高めます!」 - 埼玉県加須市:
「おいしくておかわりも争奪戦だったのでコロンビアへの関心も高まったのではないか。家に帰って話題にしてもらい,東京大会では日本とともにコロンビアを家族ぐるみで応援してほしい。」 - 山口県防府市:
「セルビアバレーボールチームが東京大会で金メダルを取れるよう,これからも市内小・中学生はもちろん,市民一丸となって応援していきます。『ナプレット セルビア』(頑張れ セルビア!)」