グローカル外交ネット
地元食材を使ってホストタウン相手国の皆さんをもてなしたい!
外務省地方連携推進室
東京大会に出場する選手を自分たちが作ったGAP食材で応援したいとの思いを込めて,全国各地のホストタウン自治体から40の高校生を中心としたチームが参加し,GAPに認定された地元の食材を用いて選手の口に合うように,また選手のパフォーマンスの向上も考えて栄養価の高いメニューを考案し,競い合いました。
2019年末から2020年始にかけて内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局の主催により開催された「GAP食材を使ったおもてなしコンテスト」です。各チームの取組については,以下のウェブサイトをご覧いただきたいと思いますが,ここではコンテストで大臣賞を受賞した宮崎県延岡市と鹿児島県鹿屋市のチーム,事務局長賞を受賞したチームからは市をあげての独創的な取組をメニューにも反映させた福島県郡山市のチームの取組を紹介します。
宮崎県&延岡市&延岡学園高等学校&宮崎県立農業大学校(ドイツ)

延岡学園高等学校は以前からドイツ柔道選手が延岡市で合宿を行う機会にランチバイキングの提供に取り組んできました。こうした取組を通じてドイツ選手団への親近感が生まれたことや,考案したメニューをブラッシュアップさせることで,ドイツ選手団へのおもてなしの質を上げることができると考えたことがコンテスト参加への動機となりました。食材はハウス栽培で様々なGAP食材を栽培する農業大学校のレッド・ピーツなどを活用しました。こうして考案されたメニューの一つが「鶏むね肉のレムラードソース添え」です。
これまでの交流で,ドイツ人は日本人の作ったドイツ料理を積極的に食べようとしないことが分かっていたため,ドイツ人にも食べやすい日本の料理,ドイツのスパイスなどを使用し日本料理の中にどこか母国を感じられるような料理を目指しました。メニューの考案にあたっては,延岡市のドイツ人国際交流員からドイツ人が好む味付けをヒアリングし,ドイツに留学経験のある市民にも試食してもらいました。
ドイツ人アスリートとの交流においては,最初は恥ずかしそうに接していた生徒も回数を重ねるごとに目に見えて積極的になっていく姿が見られ,多様な価値観を受け入れるようになってきたようです。今回のコンテスト受賞を受け,「やればできる」という生徒の自信やモチベーション向上にもつながり,若い世代に海外への興味・関心や国際意識が醸成され,SNS・新聞等での情報発信により,ホストタウンの取組が市内全域への浸透拡大に繋がったようです。
鹿児島県鹿屋市&学校法人前田学園鹿屋中央高等学校&鹿児島県立鹿屋農業高等学校(タイ)

鹿屋市の特産品の「かのや紅はるか(サツマイモ)」。高い糖度が特徴で,収穫後の貯蔵期間など独自の厳しい条件をクリアしたものだけが地域ブランド名を付すことができます。鹿屋市のホストタウン相手国のタイでも甘い「サツマイモ」は大人気で,同国に盛んに輸出され,経済交流促進に一役買っているのが「かのや紅はるか」。鹿屋農業高等学校が栽培するGAP認証取得予定の「かのや紅はるか」をふんだんに使い,鹿屋中央高等学校が考案したのが「かのや紅はるかのタルト 柿の生姜コンポート添え」でした。
コンテストに先立つ2019年11月,タイ政府観光庁福岡事務所や鹿児島市内にあるタイレストラン関係者他の参加を得て上記メニューの他「GAP食材を活用したタイ王国のおもてなし料理試食会 キバレ!タイ王国!!“スースー タイランド”」が開催されました。試食会では「黒豚のハンバーガー」「黒豚の豚汁」「エビとアボカドの『かのやグリーンパパイヤ』のサラダ」(かのやグリーンパパイヤは,鹿屋市産で鹿児島GAPの認定を受けたもの)などが提供され,「ハンバーガーはジャンクフードというイメージがあるが,「黒豚のハンバーガー」は健康に良さそうな食材,味付けとなっている」「パパイヤの新しい食べ方を提案してもらった」など料理は全て美味しく,選手も喜ぶ内容との評価をいただきました。普段からタイ人が食す食材と鹿屋市の郷土料理とのコラボレーションにより生まれたメニューになるよう,タイの皆様に日常食として気軽に食してもらえるようなメニューづくりに努めたそうです。
こうした取組を経て,おもてなしコンテストでは,ウェブ投票,紙による現地応援投票により多くの鹿屋市民の皆様からの応援があり,市内小中学校においても全児童生徒を挙げて応援に臨むなどホストタウンに対する市民の関心が高まったとの手応えを感じているようです。
福島県郡山市&福島県立岩瀬農業高等学校(ハンガリー)

鯉の生産量が日本一の郡山市は,鯉を食べる食文化を広めるために「鯉に恋する郡山プロジェクト」を推進しています。欧州の内陸国のハンガリー,実はこの鯉を食する文化を通じた交流が縁で,郡山市はハンガリーのホストタウンに登録されています。
岩瀬農業高等学校はGGAP(GLOBALG.A.P.)取得に力を入れていて,2019年11月19日時点で高校としての認証取得数が日本一となりました。同校の生徒たちがハンガリーの選手をおもてなしするために考案したメニューは,鯉を生かした「ハンガリーロール」です。
ハンガリーでも食材としてよく使われる赤と緑のパプリカでハンガリー国旗をイメージし,それに郡山産の鯉ソーセージや岩瀬農業高校生産のコシヒカリ(GGAP食材),卵焼き(県内生産GAP食材)やエビフライを加えたものです。ハンガリーロールの他生徒たちが考案したメニューはどれもハンガリーの選手に好評で「ハンガリーの鯉料理よりも美味しい」とのコメントをいただきました。舞台裏で,ハンガリーの選手が宗教上または好みにより食べられない食材を調べるため,事前にしっかりヒアリングを行う,また,鯉は骨が硬く臭みが残るので調理方法に工夫を凝らすなどの地道な努力を行っていたことがこうした評価に結び付いたのではないでしょうか。
コンテスト参加を通じて生徒たちは自信を深め,選手の皆さんにも記念プレゼントを贈ったり,握手を交わすなど交流を深めたことで,よりハンガリーに対する親近感を持つことができたそうです。
この他の37チームもそれぞれの創意工夫あるユニークな取組が実施されています。こうしたおもてなしの心が相手国の選手や市民の皆さんに伝わり,末永い友情につながっていくことを願っています。