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将棋とチェスがつないだ姉妹都市
(山形県天童市とイタリア共和国ヴェネト州マロスティカ市の交流)
外務省地方連携推進室
山形県天童市は,全国屈指の将棋駒の生産地であり,天童市の駒は伝統的工芸品として指定されています。桜の名所として知られる舞鶴山では,毎年4月に天童桜まつりが開催されています。(注 令和2年度は,コロナウイルス感染拡大防止のため中止)期間中には多彩なプログラムが開催されていますが,中でも「人間将棋」は,1956(昭和31)年から天童市で観光振興の一環として開催されるようになり,この桜まつりのメインイベントとなっています 。甲冑姿の武士や腰元の衣装をまとった人が,巨大な将棋の駒となり,大きな将棋盤上で対局を行います。将棋のまちとして知られる天童市ならではの取り組みであり,毎年の春の風物詩となっています。
一方,イタリア共和国ヴェネト州マロスティカ市は,中世の歴史と文化の面影が残る 風光明媚な地域にあります。同市では,西暦偶数年の9月の第2金曜日から日曜日までの3日間, 中世の華麗な衣装を身にまとった人が出演者となって演じる「人間チェス」が開催され,国内外から訪れる多くの観光客を魅了します。
この遠く離れた2つの都市が結びつくきっかけとなったのは,1983(昭和58)年に,天童市の「人間将棋」について知った埼玉県在住のイタリア人貿易商が,マロスティカ市を紹介し,同市との姉妹都市協定を提案する手紙を天童市宛に送ったことでした。
その後,1988(昭和63)年に天童市マロスティカ訪問団一行が,マロスティカ市を初めて訪問し,「人間チェス」を鑑賞。その翌年の平成元年には,フランチェスケッティ市長をはじめマロスティカ親善訪問団が来童し,「人間将棋」を鑑賞,姉妹都市提携に至りました。
将棋とチェスは一見まったく異なるもののように見えますが,古代インドのボードゲームを起源とし,その後,ヨーロッパにはチェス,日本には将棋として伝来したと言われています。この不思議な縁が取り持った両市の姉妹都市交流は,1989(平成元)年の提携から今に至るまで続いています。
姉妹都市提携後,両市では市民交流をはじめ,相互に表敬訪問の実施,互いの市民を讃える賞の創設(スポーツで活躍した天童市民に対してはマロスティカ市から「銀の騎士トロフィー」が,社会貢献の顕著なマロスティカ市民に対しては天童市から「天童賞」が授与),直近では,市民同士の交流促進を目的とし市民から選ばれた親善大使をマロスティカ市に派遣する取り組みも行われています。
また,姉妹都市交流の過程では,この姉妹都市のきっかけとなった「人間チェス」を天童市民が和紙で作成し,マロスティカ市に寄贈されました。また,マロスティカ市の小・中学生からは,東日本大震災からの復興を願った絵画が天童市に届けられました。姉妹都市提携を契機に,温かい市民同士の交流も生まれ,両市は友好関係を深めています。