グローカル外交ネット

令和5年10月12日

在南スーダン日本国大使 堤 尚広

山本・前橋市長表敬(左奥からクレン・在京南スーダン大および堤・駐南スーダン大使、手前一番右が山本・前橋市長)

 南スーダン共和国は、2011年にスーダン共和国から独立した歴史の非常に若い国です。独立に至るまで40年間スーダン内での内戦、そして、独立後は国内の衝突と苦悩の連続でした。2018年の和平合意、2020年の暫定政府の成立で、ようやく平和の定着と民主的国家を目指して歩んでいる最中です。今回ご紹介するのは、その南スーダンと前橋市の交流です。

 令和5年(2023年)7月24日、私は、前橋市を訪問しました。2020年7月20日以来、これが二度目の訪問です。山本龍前橋市長との面会のほか、南スーダンからやってきたサッカー選手と面会しました。

 南スーダンと前橋市との交流は、何度もメディアで取り上げられていますので、ご存知の方も多いかと思います。2019年11月から2021年8月まで、前橋市は、南スーダンのオリンピック・パラリンピック選手団を受け入れました。その間に、選手団はオリンピック・パラリンピック出場のためのトレーニングのみならず、日本語を勉強し、地元社会と大いに交流したと伺っています。2020年7月に、私が岡田誠司前在南スーダン大使と一緒に前橋市を訪問し、選手団に「ホームシックはありませんか」と問うたのに対し、「全くありません」と答えてくれました。その後私は南スーダンに赴任し、2020年10月1日、首都ジュバで、 キール 大統領に天皇陛下の信任状を捧呈しました。その際、私は、選手団が大変元気にしていること、日本食が好きなこと、前橋市から暖かく迎えられていることを報告しました。

 今回の前橋市訪問においては、私から山本市長に、ともに前橋を訪問したクレン南スーダン共和国駐日大使をご紹介しました。クレン大使は、山本市長に対し、オリンピック・パラリンピック選手団の受け入れ、本年5月からの二人のサッカー選手の受け入れなどに対する感謝を述べ、今後の更なる交流拡大を提案されました。山本市長は、将来、南スーダンの二人のサッカー選手には、地元のサッカークラブ「ザスパクサツ群馬」へ入団してほしいと仰いました。
 その際、私からは、日本が南スーダンを支援する5つの理由をご説明しました。すなわち、

  • (1)日本の外交政策「積極的平和主義」に合致
  • (2)「人間の安全保障」の実現
  • (3)東アフリカの安定確保(東アフリカは日本にとってアフリカ大陸へのゲートウェイ)
  • (4)国際問題での南スーダンからの支持獲得
  • (5)活発な二国間交流の拡大を期待(ビジネス、文化、草の根)

 日本側から見た場合にも得るものがあることで、両国関係は持続可能なものになることを説明し、前橋市が実践されてきた南スーダン選手の受け入れは、最も素晴らしい形の草の根交流です、と申し上げました。

 山本市長との面会の後、二人の若き南スーダン人サッカー選手に会いに行きました。Marko選手とChristopher選手と面談しました。二人とも高校生世代です。サッカーのトレーニングだけでなく、日本語を学び、同世代の日本の若者と交流しており、人気者だそうです。その際、クレン大使が、二人の若者に対して、まるで自分の息子であるかのように、優しく接しているのを見て、胸が熱くなりました。私は、二人に2年前にオリンピック・パラリンピック選手団にしたのと同じ質問をしました。「ホームシックはないか」。二人はキッパリ「全くないです」と答えました。寿司ととんかつが好きだとも言っていました。8月31日、ジュバで私はDeng Dau外務大臣代行(当時)にそのことを報告しました。

Fuji Language School(南スーダン選手の滞在先)訪問
(左から本間・Fuji Language School校長、Marko・南スーダン選手、堤・在南スーダン大使、クレン・在京南スーダン大使、Christopher・南スーダン選手、渡邊美那・在南スーダン大書記官)

 この素晴らしい前橋市の取り組みは、今後も継続すると思います。南スーダンに前橋市ファンが増え、地元サッカークラブで南スーダン出身選手が活躍し、双方の交流が深く広いものになることを、心から願い、応援しています。

 <参考資料>

日本大使館Facebook
  • 日本は南スーダンでどんな活動をしているのか
世界で一番若い国 南スーダン入門
  • 南スーダンで働く日本人による南スーダン紹介
  • 最近の前橋市の南スーダンとの交流の紹介
グローカル外交ネットへ戻る