グローカル外交ネット
沖縄の伝統文化の価値を引き出して
地域コミュニティに貢献するグローバル観光の基礎を築いていきます!
糸満市役所 観光・スポーツ振興課
地域おこし協力隊
トゥイトゥー ルドヴィック
1 自己紹介
沖縄本島の最南端に位置する糸満市において、役所の観光・スポーツ振興課に地域おこし協力隊として活動中のトゥイトゥー・ルドヴィックと申します。糸満では覚えやすい「ルド」と呼ばれています。
出身地はフランスで、リヨンとスイスのジュネーブの中間点に位置する、人口600名、アルプスの麓にある森・川・山の自然が豊かな村で育ちました。元々好奇心旺盛な性格で、大学生になったころ、趣味程度で日本語の勉強を始めました。日本に本格的に興味を持ち始めて、1999年に東京に交換留学するチャンスが訪れた時に訪日しました。当時、日本にずっと住みたいという意思があったわけではありません。途切れは多少ありますが、日本滞在歴は延べ20年間に近ついていますかね。気が付いたら、人生の半分は異国の日本で過ごしているので、不思議な気持ちです。家族・友達・仕事などが安定していることもあって、最近まで東京で生活していましたが、3年前、沖縄県糸満市に移住することを決めました。
2 なぜ移住?なぜ糸満市?
なぜ東京の快適な生活からあんな遠い場所に?とよく聞かれます。沖縄に来る前、都内で大規模な日系の総合包装容器メーカーで海外営業の仕事をしていました。業界のリーダー企業で、世界各地のお客様との付き合いもあって、学びも多く、刺激的な仕事でした。決して不満があったわけではありません。
しかし、大人になった自分の中に、幼い頃友達と一緒に森の奥に山小屋を作っていた豊かな自然を必要としている気持ちが湧いたことや、娘に自然の美しさを感じてほしいこと、また大量生産・大量消費といった経済中心におかれた自分の環境に疑問を強く感じて、人生の軌道修正の時期だと確信しました。「環境を破壊しない、コミュニティのため役に立つ仕事がしたい!」現在ではよく聞く話のような気もします。
移住先となった糸満市を選んだ理由は、人と場所との縁です。現在糸満市で観光振興を担当しているので、自画自賛と思われても仕方ないですが、糸満市はやっぱり最高のまちです。亜熱帯の海があって、潜ればすぐそこに綺麗なサンゴ礁があり、無人島、森、洞窟、岸壁の海岸、マングローブ地帯まであります。また、那覇空港から近く、市の一部が繁華街です。田舎暮らしと大都会のいいとこ取りで、不便を感じたことは一度もありません。毎日太平洋を眺めバランスよく暮らしていることもあり、クオリティ・オブ・ライフが高く充実した毎日を送っています。
日本にこんな住み心地のよい場所があるなんて、もっと早く発見したかったです。「外国人だから」地方暮らしは非現実的との固定観念があったのかもしれませんが、動いてみたら、いいことが訪れました。
3 活動内容 伝統文化をテーマにインバウンド観光の振興
私の活動テーマは「インバウンド観光」です。糸満市は沖縄戦終焉の地として有名ですが、その知名度を裏返すと平和観光のイメージの定着が強いため、他の観光資源の発展が遅れ気味です。那覇空港から近いというのもあって、観光者が長く滞在しない傾向が一つの大きな課題です。他に、多言語ガイドの人材育成や地域に貢献する高付加価値の観光商品の確立も地域課題として挙げられます。
そこで、目をつけたのが、地域の独特な「海人(漁師)文化」です。沖縄はかつて琉球王国だったことや、戦後に27年間アメリカ統治下にあったこともあって、日本本土とは異なる文化があります。糸満市は特に「海人のまち」と呼ばれて、王朝時代から漁のおかげで豊かな地域として、今でも濃い文化が引き継がれています。旧暦に基づいた行事から、言葉、料理、集落の構造、商売の考え方など、ユニークなものが沢山あります。
それを観光資源化するために、私はアドベンチャー・ツーリズム(以下、AT)の商品を開発・販売していく計画を策定しました。ATというのは、「アクティビティ」を通してその地域の「自然」と「文化」のリアルな体験をする高付加価値の観光商品をさします。主に欧米豪の富裕者層をターゲットにした少人数の旅行商品です。糸満漁師の伝統的木船「帆掛サバニ」を中心に地域のストーリーを外国人に語る旅行商品を作るのが、私の主要な仕事です。経済効果も狙っていますが、造船のニーズを増やして船大工の技術伝承に寄与することも期待しています。モニターツアーは年内に実施する計画です。地域の役に立ちたいとの願いを込めて、活動させていただいています。
4 結論 外国人は地方に出番!


糸満の人に聞くと「ここは何もないよ!」と答える人が多いです。家の中に飾ってある花瓶は常に視野に入っていて、当たり前すぎる光景になって認識されなくなりますが、移動させたり、向きを変えたりするとその存在に改めて気が付きます。地域の宝物である文化財も同じだと思います。私は糸満市の広報誌に市の魅力を再発見するコラムを毎月書いています。正直外国人から見ると当たり前のことしか書いていないのに、市民の皆さんから見れば、自分の地域と文化について外国人の視点から語られている点がすごく新鮮に感じられるそうで、感謝の言葉を沢山いただいています。外国人は外国人の立場で、各地域でできることが沢山あると感じています。外国人は日本各地に飾ってある花瓶(魅力)を動かすことで、普段気付かれにくい魅力を改めて認識してもらうことに長けているのではないかと思います。
