グローカル外交ネット

令和5年5月22日

駐バルバドス日本国特命全権大使
福嶌 香代子

 3月17日、ホストタウンとしてバルバドスとの交流を推進してきた山形県南陽市を訪れました。コロナ禍が拡がる前、南陽市はバルバドスからオリンピック協会(BOA)理事長、首相府付文化担当大臣等を受け入れ、また、バルバドスにも南陽市長をはじめ同市の関係者が訪問し、交流が行われていたと聞いており、機会があれば同市を訪問したいと思っていました。

1 南陽市市役所訪問

 訪問当日、南陽市役所に着くと、多くの職員の方々が拍手で迎えて下さいました。白岩孝夫市長を表敬し、市役所関係者、バルバドスからのJETプログラム参加者であるセイジ・ベルグレーブさん等も交え、同市とバルバドスとのこれまでの交流及び来年の日・カリブ交流年2024に向けた今後の交流について意見交換を行いました。私から白岩市長に対し、南陽市のこれまでの交流活動に御礼を述べるとともに、日カリブ交流年2024について説明を行い、交流年に向けて南陽市とバルバドスとの間で交流が行われることへの期待を表明しました。白岩市長からは南陽市訪問を歓迎するとともに、今後もバルバドスとの交流を推進していきたい旨の話がありました。

(写真1)市長表敬 (左より 白岩市長、福嶌 香代子大使、ベルグレーブ氏)の際の記念写真の様子 市長表敬 (左より 白岩市長、福嶌 香代子大使、ベルグレーブ氏)

 その後、市庁舎において、市の関係者約40名を対象に講演を行い、バルバドスでの経験に基づき、両国間関係について話をしました。Q&Aセッションでは質疑応答が活発に行われました。更に、市の職員数名とお会いし、南陽市の学校での活動を中心としたSDGsに関する取組や、農産品などの特産品に関する取り組み等について伺い、懇談しました。

(写真2)市の関係者を対象に行った講演会の様子 市の関係者を対象に行った講演会

2 市内施設訪問

 南陽市を訪問したスポーツ選手や政府要人が訪れた市内の施設を関係者の方々の案内により視察しました。

「シェルターなんようホール」(南陽市文化会館)

 「シェルターなんようホール」(南陽市文化会館)は、木の香りがするとても美しいホールでした。同会館の大ホールは1400席以上を擁し、「最大の木造コンサートホール」としてギネス記録に認定されているそうです。地元のスギ材が使用された建物は先端技術により耐火、耐震建築性を備えているとのことです。コンサートホールの独特の音響効果に魅せられた多くのミュージシャンがここでコンサートを行ってきたとのことで、建物の一角には壁一面に沢山の有名なミュージシャンのポスターが展示されていました。この建物の中には会議室、音楽練習室、木の遊具が置かれている子供のための「木育ひろば」、キッチン・スタジオなどがあり、地元の人々が集う憩いの場にもなっています。

(写真3)シェルター南陽ホールで写真に写る シェルター南陽ホールと福嶌 香代子大使

南陽市民体育館

 南陽市民体育館にはバレーボール、バスケットボール等の球技が出来るコート、剣道、柔道等の武道が出来るスペース等があり、冬の雪に閉ざされた時期でも運動出来る場所となっています。視察時には球技のコートにおいてゲートボールを楽しむ市民の方々の姿が見えました。屋外には1周すると丁度1キロのランニング用トラックや子供のためのアスレティック・スペースが整備されています。

「夕鶴の里」資料館

 「夕鶴の里」資料館は、付近に日本の民話「鶴の恩返し」を想起させる地名があり、地域に口伝えで残されてきた鶴の恩返しをはじめとする多くの民話をこれからも伝えていくために作られた由です。同資料館では語り部による「鶴の恩返し」の臨場感のある語りを聞くことができました。地元の子供達が語りを学ぶ機会を通じて語り部の伝統文化の継承も行われている由です。バルバドスにおいても文化遺産の継承が課題となっており、共通の課題への取り組みが行われている様子が伺えました。

3 南陽市のご当地自慢

 南陽市のご当地自慢の一つとしてラーメンが挙げられ、かつ、出前で来客をもてなす「出前文化」があるそうで、白岩市長等と美味しいラーメンを頂きました。南陽市の新幹線の最寄りの駅の赤湯駅にもラーメンの写真の掲示がありました。南陽市はぶどうなどのフルーツ、ワインといった特産品があり、また、「いで湯の里」と呼ばれるように、良い温泉もあるとのことで、今後沢山のバルバドス人が南陽市を訪れ、様々な交流の機会を通じて南陽市の魅力に触れられると良いなと思います。

4 今回の訪問と今後の交流について

 今回の南陽市訪問は、同市関係者の方々の懇切な協力のお陰で、充実した表敬、講演、視察等の機会となりました。随所に温かいおもてなしの心が感じられ、同市を訪れたバルバドス人にとっても良い思い出になったことが頷けました。また、南陽市の関係者から大使訪問は有意義であったという声が聞け、嬉しく思います。
 オリンピックのホストタウンを機会に育まれた南陽市とバルバドスとの絆は、日本において未だバルバドスを知る人が少なく、また、バルバドスにおいても日本について知る人が少ない中、両国間の貴重な交流の絆です。日・カリブ交流年2024に向けて更なる交流が行われ、この絆が一層深まっていくことを願っています。

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