グローカル外交ネット

令和4年7月22日

在ジャマイカ日本国大使館 特命全権大使
藤原 聖也

1 はじめに

(写真1)平井鳥取県知事、浜崎ジャマイカ鳥取議連会長との記念写真 本年4月鳥取県訪問の際の平井鳥取県知事、浜崎ジャマイカ鳥取議連会長表敬

 鳥取県は2016年にジャマイカ・ウエストモアランド県と姉妹都市提携を提携しました。それ以降、鳥取県とウエストモアランド県は、職員派遣・技術交流、青少年交流、マラソン交流などを実施しています。私は、2020年8月にジャマイカに着任後、最初の地方訪問として、同年12月にウエストモアランド県を訪問し、バーテル・モーア・ウエストモアランド県知事にお会いしました。また、本年4月に鳥取県を訪問し、平井伸治鳥取県知事他関係者と意見交換を行いました。鳥取県は2017年に2020年東京オリンピック・パラリンピック競技のホストタウンになるなど日本とジャマイカの交流において重要な役割を果たしています。

2 陸上トラックが紡ぐ交流の歴史

 鳥取県とジャマイカの交流のきっかけは、2007年8月の世界陸上大阪大会の際にジャマイカ陸上チームの事前合宿を鳥取県が受け入れたことです。当時、鳥取県陸上競技協会が、陸上強豪国の合宿誘致を希望していたところ、ジャマイカ陸上競技連盟が関心を示し、実現したと聞いています。鳥取市内には1985年の鳥取国体のために建設された布勢陸上競技場があります。陸上トラックには、当時としては先進的なイタリア・モンド社製のゴムが使われており、速いタイムが出やすいと評判です。

(写真2)2015年の事前キャンプの際に写した記念写真 2015年のジャマイカ選手団の事前キャンプ
©鳥取県

 昨年山縣亮太選手が9秒95の日本記録を出したのもこの競技場です。同社製ゴムは新国立競技場にも使われています。
 2007年の事前合宿には、当時男子100m世界記録保持者だったアサファ・パウエル選手や女子100mで金メダルをとったベロニカ・キャンベル選手、ウサイン・ボルト選手などそうそうたるメンバーが参加しています。その後鳥取県は、2015年8月の世界陸上北京大会に参加するジャマイカ・チームの事前合宿を受け入れました。北京大会ではジャマイカ選手団は金メダル7個を含む計12個のメダルを獲得するという好成績を収めました。  昨年の東京オリンピックで女子100mの表彰台を独占した、エレーン・トンプソン・ヘラ、シェリー・アン・フレーザー・プライス、シェリカ・ジャクソンの3選手や男子110mハードルの金メダリスト、ハンスル・パーチメント選手も参加しています。いずれの合宿でも、公開練習やサイン会、陸上競技を通じた青少年との交流が行われ、ジャマイカは鳥取県の人々にとり身近な国になっています。

3 ジャマイカ最西端に位置するウエストモアランド県との姉妹都市交流

 ジャマイカ陸上チームの事前合宿が契機となり、ウエストモアランド県と鳥取県の姉妹都市提携が実現しました。ウエストモアランド県との姉妹提携はカリコム諸国との間では初めてになります。ウエストモアランド県はジャマイカの最西端に位置し、観光と農業、漁業が盛んです。ネグリルはビーチリゾートとして有名で、セブンマイルビーチや「世界一楽しいレゲエマラソン」で知られています。2016年3月の姉妹提携時にはバーテル・モーア県知事が鳥取県を訪問し、平井知事も同年7月ウエストモアランド県を訪問しています。2018年には、米子高校ダンス部5名、鳥取湖陵高校料理クラブ5名がウエストモアランド県を訪れ、2019年にはウエストモアランド県内の青少年9名が鳥取県を訪れるなどの交流が続いています。鳥取県とウエストモアランド県はお互いマラソン大会を開催しており、鳥取マラソンとレゲエマラソンの上位入賞者の相互派遣という両県ならではの交流も行われています。

4 コロナ禍を乗り越え、これからも続く交流

 2020年以降は新型コロナウイルス感染症の影響で往来を伴う交流は実施できていませんが、ビデオレターを通じる高校生の交流やTottoriチームとしてビデオでのレゲエマラソン参加が続いています。残念ながら、2020東京大会のジャマイカ選手団の事前合宿は中止になりましたが、鳥取県は東京オリパラ選手村のジャマイカ選手団激励のため、オンラインで壮行会を開催し、県内高校書道部員の応援メッセージ色紙などを贈呈しました。このような温かい応援を受けたジャマイカ選手団は金メダル4個を含む合計9個のメダルを獲得するという好成績を収め、鳥取県の人々は大いに喜んだと伺いました。

(写真3)ジャマイカの国旗とともに「ONE LOVE From TOTTORI」の文字が掲示されている布勢陸上競技場での記念写真 布勢陸上競技場に掲げられた
「ONE LOVE From TOTTORI」

 本年4月に私が鳥取陸上競技協会会長でもある浜崎晋一ジャマイカ・鳥取友好議員連盟会長とともに布勢陸上競技場を訪問した際には、ジャマイカの国旗とともに「ONE LOVE From TOTTORI」の文字が掲示されていました。JICA協力隊としてウエストモアランド県に派遣されていた職員の方からは早くジャマイカに戻りたいと伺いました。鳥取県とジャマイカ・オリンピック協会はポストオリパラの交流覚書を交わそうとしています。鳥取県のみなさんの「We love Jamaica!」の熱い思いを原動力に、今後も鳥取県とジャマイカとの交流が続いていくと確信しました。
 2024年は日本とジャマイカの外交関係開設60周年です。それに向けて大使館としても鳥取県とジャマイカの交流がますます発展するよう応援をしていきたいと思います。

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