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「Team Nigeria」 ホストタウンからスポーツ交流へ(千葉県木更津市とナイジェリア)
在ナイジェリア日本国大使館
特命全権大使 松永 一義
1 はじめに
ナイジェリアというと皆さんどのようなイメージをお持ちでしょうか。最近では、日本でも活躍するナイジェリア出身のスポーツ選手が増えています。また、サッカーの強豪国という印象をお持ちの方もいるかもしれません。
ナイジェリアは、いまや2億を超える人口を持つアフリカ一の経済大国であり、サブサハラ・アフリカのおよそ5人に1人がナイジェリア人と言われています。また、日本に輸入されているごまの約4割がナイジェリアからの輸入です。皆さんが普段何気なく使っているごま油も、実はナイジェリアのごまから作られたものかもしれませんね。米国・インドと並ぶ世界三大映画産業の国でもあり、ナイジェリアで制作された映画は「ノリウッド映画」と呼ばれています。
今回は、ホストタウンをきっかけに始まった、アフリカの巨人ナイジェリアと千葉県木更津市の交流をご紹介させていただきます。
2 ホストタウンとしてのおもてなし
千葉県木更津市は、2013年に「西アフリカフェスティバルin木更津」を開催したことがきっかけで、東京オリンピック・パラリンピック競技大会のホストタウンに名乗りを上げ、ナイジェリア五輪委員長であるハブ・アーメド・グメル氏の尽力もあり、2019年に正式にナイジェリアのホストタウンに登録されました。ナイジェリアの選手団「Team Nigeria」が日本に向けて出発した時には、首都アブジャの空港で、グメル委員長及び大使館職員で盛大に見送りました。木更津市到着後は、選手たちは市からの温かいおもてなしを受け、最新の体育館など整った設備の他にも、日本食材を使ったナイジェリア料理など、木更津市がまるで我が家のようにくつろげる環境を用意してくれたことに感動していました。東京2020大会終了後には、グメル委員長と女子レスリングで銀メダルを獲得したブレッシング・オボルドゥドゥ選手から、御礼のビデオメッセージが木更津市に送られました。


3 スポーツ用具の寄贈
木更津市は、東京2020大会終了後も、ナイジェリアとのスポーツ交流に賛同し、野球用具及びサッカー用具の寄贈を表明してくれました。木更津市から寄贈された用具をナイジェリアに持ち帰り、今年の5月にアブジャで開催された野球イベントでは、ナイジェリアの野球選手たちに対し、バットやグローブなど多くの用具を寄贈することができました。野球用具は揃えるだけでもお金がかかるものであり、当地では普通の若者にはなかなか入手しづらいことから、選手たちには大変喜ばれました。また、この野球イベントでは2日間に渡るセミナーを開催し、野球の技術的な教えだけでなく、日本人が野球をする際の行動規範や物の考え方についての講義が行われ、多くの参加者が耳を傾けました。
また、サッカー用具については、7月末にナイジェリア最大の商業都市ラゴスで開催されるイベントで、ラゴスの少年サッカーチームへ寄贈されます。木更津市からの贈り物を身につけて、野球やサッカーなどのスポーツに励んだ少年たちが、将来的に世界で活躍するような選手に成長したり、「時間を守る」「用具を大切にする」といった日本の基本的な行動規範を身につける日が訪れるのはそう遠くないでしょう。ひいてはそれがナイジェリア経済の発展にも寄与することを願い、またその中から、今後日本企業とビジネスをするような人材が出てくることを期待しながら、今後もスポーツ交流を続けていきたいと思います。

4 これからも続く両国の交流
東京2020大会は終わりましたが、木更津市とナイジェリアの交流はこれで終わりではありません。5月に当地でイベントを開催したアフリカ野球・ソフト振興機構は、JICAの地方自治体と連携した草の根技術協力事業を活用し、今後も数年単位で継続的にナイジェリアとの交流を進めていく計画を立てています。そのためには、引き続き木更津市の協力が必要不可欠と言えます。
また、木更津市の企業が、アフリカ一の経済大国となったナイジェリアで、事業を展開するきっかけ作りにも繋げていきたいと考えています。ホストタウン交流から始まった関係が、末永く続くことを願いつつ、更には日本とアフリカの関係強化に繋がることを信じ、今後も大使館としての活動を続けていきます。