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令和3年9月30日

岐阜県商工労働部地域産業課

はじめに

 豊かな自然に恵まれた山紫水明の岐阜県では、木工、刃物、陶磁器などの地域に根付いた産業が、人々の生活とともに発展してきました。
 そんな中、県の特産である美濃手すき和紙が、先日フィナーレを迎えた東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の表彰状に使用され、1位から8位の入賞者に渡されました。

美濃和紙の歴史

(写真1)丁寧に箱に収められた本美濃紙 本美濃紙
上品な色合いと陽の光に透かした ときの優雅な地合いが特徴

 美濃和紙の歴史は古く、奈良の正倉院には、現存する日本最古の紙として702年の美濃国の戸籍用紙が所蔵されています。
 平安時代以降は、紙の普及により質の高い美濃和紙の需要が増加し、江戸時代には高級障子紙として最上の評価を受け、「美濃判」という規格も生まれました。近代になると、ウィーンやパリの万国博覧会などを通じて、海外にも紹介されるようになりました。
 美濃和紙の中でも、原料や製法などがより厳格に定められた本美濃紙の製作技術は、1969年に国の重要無形文化財に指定されました。
 また、1985年には美濃和紙として国の伝統的工芸品の指定を受けました。

美濃和紙の特徴

 美濃和紙は、柔らかみのある繊細な風合いをもちながら、強靭で耐久性があり、薄くてムラがないという特徴を備えています。これは、紙を漉く際に、通常の「縦揺り」に、ゆったりとした「横揺り」を加えて繊維を絡み合わせるという、美濃和紙の産地特有の技法によって生み出されるものです。
 職人の手によって漉かれた美濃和紙は、時を経るほどにその白さが増すと言われています。古くから障子紙や表具用紙に使われてきましたが、長良川流域では、岐阜提灯や岐阜和傘などにも用いられ、独自の伝統産業の発展にもつながりました。

(写真2)美濃和紙で作られたウェディングドレスを着る女性 美濃和紙ウェディングドレス
最新の加工技術により耐水性の低さといったウィークポイントを克服し、 美濃和紙特有の優しい風合いを持つドレスに仕立てられている

 今日では、その質感や素材としての特性を活かし、インテリア照明や、本美濃紙をつかった造花などにも使用されています。さらに、美濃和紙産地では、職人自身が漉いた本美濃紙やさらに薄く漉いた美濃和紙に、最新技術による加工を施し、ウェディングドレスに仕立ててご息女に贈られるなど、その活用の可能性はさらに広がっています。

世界における美濃和紙

 2014年には、本美濃紙を漉く技術が「和紙:日本の手漉和紙技術」として細川紙(埼玉県)、石州半紙(島根県)とともに、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。
 美濃和紙の薄さ、強靭さ、均質さなどの品質の高さは世界でも認められており、国内だけでなくイギリスの大英博物館、フランスのルーブル美術館、アメリカのスミソニアン博物館といった世界各国の著名な博物館でも、古文書や絵画など国宝級の文化財の修復に使用されています。
 近年では、本美濃紙や美濃手すき和紙に加え、機械すき和紙の技術も発達しており、こうした品質の高さを正しく伝えるための新たなブランドマークを設けました。こうした取組を通じて、美濃和紙の魅力を国内外に向けて発信しています。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会

(写真3)東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の表彰状と同じ技法で作られたサンプル 美濃手すき和紙の透かし入り表彰状
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の表彰状と同じ技法で作られたサンプル

 そうした中、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の入賞者に美濃手すき和紙製の表彰状が贈られることになりました。
 この表彰状には、美濃和紙産地に伝わる「透かし」の技術も用いられており、光にかざすと、整然と広がった繊維の中に、美しい透かしのデザインが浮かび上がります。見事入賞を果たしたオリンピアン・パラリンピアンの方々には、上質な美濃和紙の魅力を体感いただけたものと思います。

今後の展開

 豊かな自然の恵みを受け、流域の人々と共に発展してきた美濃和紙は、SDGsの理念を体現する伝統産業であり、本県が世界に誇る文化でもあります。
 県では、今回の東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に採用された成果を活かし、今後も産官一体となって美濃和紙の品質の高さを発信していきます。

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