グローカル外交ネット

令和3年9月21日

外務省地方連携推進室

1 都城市とウランバートル市の概要

 宮崎県都城市は宮崎県の南西部に広がる都城盆地の中央に位置しています。南から北へ流れる大淀川、西の霧島連山、東の鰐塚山地等、緑豊かな美しい自然に恵まれています。そのような豊かな自然に育まれ、都城和牛、らっきょう、焼酎、都城茶等の農畜産物は全国市町村別の農業産出額が日本一で、その他にも、伝統技術に支えられた都城木刀や国の伝統工芸品に指定されている都城大弓(竹弓)は、全国トップの生産量を誇っています。また、「肉と焼酎」を中心とした返礼品が人気の都城市のふるさと納税納付額は全国一位です。
 ウランバートル市はモンゴル国の首都であり、159.7万人(2020年)が居住しています。四方を山に囲まれた盆地で、都市部と大草原の両方が存在し、近代的な高層住宅や工場と伝統的な移動式住居のゲルが共存する草原の中の大都市です。

2 交流のきっかけ

 都城市とウランバートル市の交流のきっかけは、都城市民の想いと風力発電機でした。その始まりは1992年に遡ります。
 当時、モンゴルはソ連の崩壊の影響でほとんどの物資の輸入が途絶え、発電手段がなかった遊牧民はロウソクを頼りに生活をしていたそうです。モンゴルを訪れた都城市民がこうした事情を知り、遊牧民や子どもたちに「明かりを届けたい」と国立都城工業高等専門学校の技官らに相談したところ、同学校の技官6名のグループは大いに賛同し、1992年「モンゴルに風力発電機を贈る会」が設立されました。
 同会は、モンゴルでは年間を通じて平均2.5メートル以上の風が吹いていることから風力発電に注目し、また、遊牧民のことを考え、(1)安くできる(2)メンテナンスが比較的簡単(3)持ち運び(移動)が可能(4)現地で材料を調達できる(5)環境にやさしい発電機など条件を絞ることとなりました。
 当初開発した風力発電機は自転車やバイクの発電機を利用したものでしたが、その後、試行錯誤がなされ、全く新しい型の風力発電機の研究開発が進みました。新しい型の風力発電機は、風速約1メートルから発電を開始できるものであり、特許も取得しています。
 また、「モンゴルに風力発電機を贈る会」による風力発電機の寄贈及び設置は毎年行われておりますが、寄贈だけではなく、製作方法、修理の方法などの技術指導も合わせて行われており、遊牧民の生活支援にもつながっています。モンゴル国内でも、この風力発電機を贈る活動は大きな話題となっており、遊牧民から大変感謝されているそうです。最近では、モンゴルで製造された風力発電機を地元企業が輸入し、日本国内での販売を始めています。
 このような支援活動が契機となり、1995年、国立都城工業高等専門学校とモンゴル国立科学技術大学は学術交流協定を取り交わしました。また、都城市とウランバートル市の間で、馬頭琴(ばとうきん)演奏会やモンゴルでの都城市写真展の開催等、様々な民間交流が広がり、1999年11月モンゴル国ウランバートル市と都城市が友好交流都市の提携合意書に署名することとなりました。

(写真1)モンゴルに風力発電機をたてている様子 「モンゴルに風力発電機を贈る会」活動風景

3 その後の交流

 2000年から2008年の間に行われた都城国際交流協会主催の「モンゴル日本語学習キャンプ」では、市民がウランバートル市を訪問し、交流を深めました。現在は、両市の中学・高校生がホームステイなどを通して、交流を続けています。
 また、長年の交流が実を結び、都城市は2020年東京オリンピック・パラリンピックのモンゴル国レスリング競技のホストタウンに登録。モンゴルの若手選手を招き、「モンゴル・日本レスリング交流会」を開催しています。
 その他、モンゴル国ウランバートル市の方々に都城産宮崎牛を味わってもらいたいという願いから、2015年以降、在モンゴル日本国大使館主催の天皇誕生日レセプションパーティーの招待客へ振る舞い、ウランバートル市内の日本食レストランでは、講演会や試食会を継続して行っています。
 さらに、都城市からウランバートル市の子供たちに「ランドセル」を送るという取組みも行われています。都城市では、6年間大切に使ってきた「ランドセル」を、次に必要とする子どもたちに利用してもらい、物を大切にする心を次へと繋ぐことを目的とする「ランドセル便」という事業を令和元年度から実施しています。この事業を通じて令和元年度に集まったランドセルを、ウランバートル市で必要としている子どもたちへも贈りたいと、モンゴル国出身の国際交流員が所属する国際化推進室を通して、ウランバートル市へ相談し、ウランバートル市の孤児院などでの活用を見据え、実現することとなりました。この結果、令和2年10月に、船便で116個のランドセルが輸送されました。新型コロナウイルス感染症の影響により、ウランバートル市がロックダウンの状況にあったため、到着後直ぐに子どもたちへの贈呈ができていない状態が続いておりましたが、令和3年1月、孤児院の子どもたちやコロナ禍で奮闘される医療従事者の家庭の子どもたちへ贈られたとの嬉しい報告がありました。

(写真2)体育館でレスリングの交流会をする人たち 第2回モンゴル・日本レスリング交流会
(2019年2月)
(写真3)チンギス・ハン騎馬像前での記念写真 都城市青少年モンゴル訪問団
ウランバートル市チンギス・ハン騎馬像前にて(2019年7月)

4 終わりに

  「明かりを届けたい」という都城市民からの想いから始まった民間の協力活動が民間交流、そして友好交流都市提携へとつながり、その絆は現在でも温かく続いています。両市の交流が今後も末永く続いていくことが期待されます。

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