グローカル外交ネット
つながって、その先へ。サッカーと共生社会のレガシー
(岩手県遠野市とブラジル)
岩手県遠野市
年齢を超えて、性別を超えて。
サッカーをプレーする人、サッカーを応援する人。
人口3万人に満たない遠野市には、「サッカーが大好き!」という人がたくさんいます。
そんな本市は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に、「サッカー」と「共生社会」をレガシーに掲げ取組をスタート。サッカーへの想いにより、故郷を想うブラジル岩手県人会の協力をいただいて、遠野市長からブラジル視覚障がい者スポーツ連盟会長に届けた1通の手紙からブラジルとつながり、2017年12月に「ホストタウン」、2018年5月は「共生社会ホストタウン」に登録され、2019年8月には「先導的共生社会ホストタウン」に認定されました。
1 これまでのブラジルとの交流
(1)ブラジル5人制サッカー代表チーム事前合宿
共生社会ホストタウン登録後の2018年7月、ブラジル・パラリンピック競技5人制サッカー関係者が遠野市を訪問、2019年7月の事前合宿が決定しました。
2019年7月には、ブラジル5人制サッカー代表チームの事前合宿を実施。本市の中・高校生が代表チームの練習のサポートをしたほか、パラスポーツ体験会や学校訪問、郷土芸能体験などを通じて、子どもたちをはじめ多くの市民と交流しました。
交流で印象的だったのは、市民の歓迎ぶりです。特に、中・高校生は、事前に5人制サッカー体験や、ブラジルの暮らしや文化、公用語のポルトガル語を学び、障がいや異文化への理解を深め交流に臨んでいました。

(2)中・高校生によるポスター・映像・ラジオ番組制作
事前合宿によるパラリンピアンの受入れを契機に、パラリンピック競技大会に向けた機運を醸成、地域の活性化を図ることを目的に、中・高校生が、ポスター・映像・ラジオ番組を制作しました。
2019年は、中・高校生が、事前合宿時に選手にインタビューを行い、ポスターと動画を制作。また、目の見えないブラジルの選手達に遠野市の良さを伝えようと中学生がラジオ番組を制作しました。

さらに、2020年には、コロナ禍において直接の交流ができない中・高校生が地域の人にインタビューを行い、地域の魅力を紹介する動画を制作しました。
本市のホストタウン交流による地域活性化において欠かせない存在である子ども達。 中・高校生は、テーマやシナリオを作る方法を一から学び、地域の魅力を発信するために様々な人を取材。取材を通して、地域や人、モノ、コトの魅力に気づくよい機会ともなりました。
制作した作品は、市内はもとより、ブラジルをはじめ国内外に広く発信。ホストタウン事業の認知度向上、東京2020大会への機運の醸成、さらには地域の活性化につなげていきます。
遠野市ホストタウン交流プロジェクト(youtubeリンク)
(3)コロナ禍における交流
2020年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、東京2020大会の延期、大会前の事前合宿も中止になるなど、ブラジルとの交流は様々な制限を受けての実施となりました。
そんな中、ブラジルやパラスポーツについて理解する機会を増やしたり、双方で励ましのメッセージを送り合ったりすることで、東京2020大会やその後の再会を願うとともに、ブラジルとの絆をより深めることができました。
中高生によるメッセージ動画(youtubeリンク)
2 共生社会ホストタウン
(1)心とまちのバリアフリー
遠野市では、パラリンピアンとの交流をきっかけに、心とまちのバリアフリーを推進する取組をスタートしました。テーマは「子どもから広める共生社会~違いを知る 違いを尊重する違いと絆(つな)がる」。取組については、まずは子どもたちから、パラスポーツ体験や障がい理解教室などを通じて、「心のバリアフリー」への理解を深めることからはじめており、家族や地域に広めているところです。
2020年2月には、「遠野市バリアフリーマスタープラン」を策定。策定にあたっては、小学生が学校周辺のバリアについて調査し、バリアフリーマップを策定したほか、健常者と障がい当事者が一緒になって、市街地のバリアについても調査を実施し、バリアフリー化の促進が特に必要な地区(移動等円滑化促進地区)を設定しました。

(2)市民参画イベント「共生社会フォーラムinとおの」
共生社会の実現に向けた取組をさらに進めるため、市民参画イベントとして、2020年から「共生社会フォーラムinとおの」を開催しました。イベントでは、「共生社会」の理念を市民と共有するとともに、パラスポーツや多文化交流を通じて、障がいやジェンダー、国籍の違いを超えた多様性の尊重などを発信。共生社会の実現に向けた取組は、子どもたちをはじめ、広く市民に浸透してきています。
3 大会後、次の世代につなぐべきもの
違いを知り、違いを尊重し、違いと絆がってきたホストタウン交流。
大会直前、当初予定していたブラジル5人制サッカー代表チームの事前合宿は新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から中止となりましたが、これまでの交流により、相手国の選手や関係者とつながる喜びを体験する市民の様子を目にし、「ホストタウン」の可能性の大きさを実感しました。新型コロナウイルス感染症による制約はありますが、今後も様々な事業を展開していきたいと思います。
そして、東京2020大会後、「スポーツの力で、感動・勇気・活力を」、「誰もが活躍できる共生社会の実現を」、「文化を通じて世界とつながる」。この3つを次の世代につないでいきます。