グローカル外交ネット

令和3年5月17日

外交実務研修員  中村 俊朗
(鹿児島県から派遣)

1 はじめに

 令和2年4月、新型コロナウイルス感染症が世界中に猛威を振るう中、私は鹿児島県から派遣され、外交実務研修員として勤務を開始しました。外務省に着任する前は、商工業の振興業務や、福祉の生活保護業務に従事しておりました。2年間の本省勤務のうち、1年が終わり、本寄稿の機会をいただきましたので、これまでの勤務経験をご紹介します。

2 北東アジア第一課での勤務

 アジア大洋州局北東アジア第一課は、日本と韓国間の外交を担当しており、慰安婦問題、旧朝鮮半島出身労働者問題、竹島問題等、極めて重要な外交課題を扱っている部署です。
 着任当初、職場内で韓国語が頻繁に飛び交う光景を目の当たりにし、未知なる世界へ飛び込んだ地方自治体職員にとっては非常に新鮮であり、課内の緊張感漂う雰囲気に圧倒され、「凄い所に来たな...。」と一人勝手に感動したことを覚えています。
 私は課内の経済・交流班に配属され、韓国経済案件や経済団体との連携・調整等を担当させていただきました。その他の担当業務もありましたが、新型コロナウイルス感染症拡大により、予定されていた会議等が開催見送りとなってしまったため、限られた範囲ですが以下の業務をご紹介します。

  • (1)韓国経済・日韓経済情勢等に係る情報収集業務
     主要経済指標、韓国政府の経済政策、韓国企業の動き、雇用、貿易、日韓両企業による第三国協業の状況等、韓国経済・日韓経済全般に関する動きを常日頃からチェックし、話題となり得るタイムリーな案件については、在韓国大使館経済部の方々にも協力をいただきながら、一目で状況が把握できる分かりやすい概要資料の作成に努めました。
     韓国経済は、これまでなじみのなかった分野でしたが、経済資料を作成する過程の中で、「統計データの数字がもつ意味や事案が発生した根の部分の背景は何か?」と考えることを意識し、自身の知見を広げることができた貴重な経験でした。
  • (2)日韓経済人会議
     日韓経済人会議は、日韓両国を代表する企業・団体のトップが一堂に会し、経済の側面から見た両国の協力関係や課題について意見交換を行う会議です。同会議は1969年以来、日韓経済協会と韓国側の韓日経済協会が共催し、毎年1回、一度も絶やすことなく日韓交互に開催されてきました。
     令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により開催が危ぶまれましたが、東京とソウルをつないだオンライン形式で開催し、「未来を切り拓く日韓協力 -2020 SDGs新時代-」をテーマに活発かつ真摯な議論が交わされました。また、経済・人材・文化交流の継続と拡大、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向けた協力の推進を含む共同声明が採択されました。
     実際に会議に参加した際、日韓の経済人の方々が経済・人材・文化交流の重要性をしっかりと受け止め、今後も継続と拡大に向けた取組を力強く推進するという両国の強い志をこの肌で感じることができたことは、地方自治体では味わうことのできない貴重な機会となりました。
オンライン形式で開催された、「未来を切り拓く日韓協力 -2020 SDGs新時代-」の様子 【第52回日韓経済人会議(出典:一般社団法人 日韓経済協会ホームページ)】

3 おわりに

 コロナ禍において、社会全体の仕組みが大きく変動する中、テレワーク勤務が導入されるなど、従来の働き方も大きく変化しました。新しい環境下で、対面によるコミュニケーションが減少し、業務を進めるうえでも懸念する機会は少なからずありました。しかし、北東アジア第一課の皆さんは、省内随一の忙しい部署であるにも関わらず、鹿児島弁丸出しの私に対しても、気軽に相談しやすい環境を作ってくださり、親切丁寧にご対応いただきました。
 また、外務省での勤務を通じて、省員の方々の迅速なスピード感、業務が多岐にわたり、昼夜問わず粘り強く業務にあたられる姿勢には非常に深い感銘を受けました。
 残り1年の本省勤務を終えた後、在外公館での勤務予定ですが、今後も地方は外交上の重要なプレーヤーであることを念頭に置きつつ、業務に取り組んでいきたいと思います。今回このような機会をいただきました外務省及び鹿児島県に心より感謝申し上げます。

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