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(青森県三沢市と米国ワシントン州ウェナッチ市・東ウェナッチ市の交流)

令和3年3月16日
(写真1)ミス・ビードル号 ミス・ビードル号
(写真2)ウェナッチバレー姉妹都市友好親善使節団来訪 ウェナッチバレー姉妹都市友好親善使節団来訪
(写真3)(3)中学生大使によるウェナッチバレーの小学校訪問 中学生大使によるウェナッチバレーの小学校訪問

外務省地方連携推進室

 青森県三沢市は、米国ワシントン州ウェナッチ市並びに東ウェナッチ市と姉妹都市を提携していますが、そこには日本と米国の間に広く横たわる太平洋を飛び越えて実現したある冒険の物語が関係しています。

1 青森県三沢市と米国ワシントン州ウェナッチ市の概要

 青森県三沢市は青森県の南東部に位置しており、東は太平洋に面し西は小川原湖に臨んでいます。また、世界的に重要な湿地としてラムサール条約に登録された「仏沼」を始めとする豊かな自然に恵まれています。古くから馬産地として栄えた県南にあって、三沢市域は江戸時代には藩政牧場の「木崎牧」に含まれ、人々は馬産や漁業に携わっていた歴史がありますが、現在は、全国有数の航空施設がある大空のまちとして栄えています。市には、空との深い関わりを物語る「青森県立三沢航空科学館」、国際交流の拠点施設「国際交流教育センター」、近代洋式牧場を開牧した斗南藩士・廣澤安任の紹介と市の特産物を販売する「道の駅みさわ斗南藩記念観光村」、さらには、鬼才・寺山修司の独自世界を紹介する「寺山修司記念館」などがあり、国際文化都市として独自の発展を遂げています。
 一方、米国ワシントン州ウェナッチ市は、米国西海岸シアトル市の東方、ワシントン州のほぼ中央にあります。周囲はカナダから続くカスケード山脈沿いの盆地にあり、コロンビア川を挟んで東ウェナッチ市が位置しています。人口は両市を合わせて約4.7万人(2017年推計)です。コロンビア川沿いのロッキーリーチダムからロックアイランドダムにかけてのエリアはウェナッチバレーと呼ばれています。
 気候は全般的に暖かくそして乾燥地帯ですが、豊富な河川水を活用しての果樹農業が盛んな地域です。主な果樹は、りんご、梨、さくらんぼであり、米国の「フルーツ・バスケット」「世界のりんごの首都」とも呼ばれています。また、コロンビア川流域にはダムがあり、水力発電による市経済も豊かです。“ウェナッチ”という名の由来は、先住民(インディアン)の言語の「水の噴き出し」や「峡谷のわき水」といったものにあると伝えられているそうです。

2 姉妹都市交流のきっかけ

 三沢市とウェナッチ市・東ウェナッチ市が姉妹都市となったきっかけは、昭和6(1931)年のミス・ビードル号による史上初の太平洋無着陸横断飛行に成功したことでした。
 アメリカ人パイロットであるクライド・パングボーンとヒュー・ハーンドンがミス・ビードル号での太平洋無着陸横断飛行を目指し、三沢市の淋代海岸を飛び立ちました。飛行時間41時間10分後、2人の飛行士を乗せたミス・ビードル号は、米国ワシントン州ウェナッチ地区に着陸し、世界で初めて太平洋無着陸横断飛行を成し遂げました。
 成功の影に、滑走路整備から宿泊の世話、ガソリンの輸送など、献身的な三沢村民の協力や援助があったそうです。この時から、三沢市民と米国人との国際交流は始まっていると言えるでしょう。この太平洋無着陸横断飛行の発着地という縁を契機に、離陸の日を記念して50年後の昭和56(1981)年10月4日に三沢市はウェナッチ市との姉妹都市提携を行いました。その後の交流はウェナッチ市だけにとどまらず、隣接する東ウェナッチ市民も多数参加するようになったことから、太平洋無着陸横断飛行70周年にあたる平成13(2001)年8月に、東ウェナッチ市とも姉妹都市を提携し、現在も両市との交流が続いています。

3 人と人との関係に重きを置いた交流

 三沢市とウェナッチ市、東ウェナッチ市の姉妹都市交流は、地域の活性化や経済効果を主目的とした交流ではなく、歴史的背景のもと人と人との交流に重きを置いています。
 ウェナッチ市では、ワシントン州の州祭である“Apple Blossom Festival”(りんごの花祭り)が毎年4月末から5月初旬にかけて開催され、東ウェナッチ市では、毎年10月最初の週末に“Wings and Wheels Festival”(翼と車輪の祭り)が開催されます。現在、三沢市からの友好親善使節団は、この両市の祭りの時期に合わせて毎年5月又は10月に交互に訪問しています。三沢市からの使節団は現地でホームステイを行いながら、小学校訪問や小型飛行機搭乗など、現地の方々との交流と異文化理解を体験しています。
 ウェナッチバレーからの使節団は、8月の三沢まつりの国際サマーフェスティバル・パレードに合わせて来訪します。滞在中は全員がホームステイを行いながら、ミス・ビードル号が飛び立った淋代海岸や三沢航空科学館、市内の学校の訪問、お琴や茶道などの日本文化体験やゴボウ掘り体験などを行い、異文化相互理解を行っています。
 また、国際感覚の醸成と語学力に対する向上心の涵養を図り、次代を担う人材の育成のため、これまでの姉妹都市交流により培われた絆を基盤に、ウェナッチ市に所在する「ウェナッチバレーカレッジ」(公立短期大学)で行われる9日間の夏期英語研修プログラムに市内在住の高校生を派遣しています。

4 おわりに

 昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で海外との往来が難しく、例年行っている友好親善使節団の派遣事業が見合わせとなってしまいましたが、三沢市とウェナッチ市、東ウェナッチ市の市民はオンラインでの交流を続けています。令和2(2020)年には東ウェナッチ市民らから激励のメッセージビデオが届き、翌月には三沢市民からも感謝と励ましのビデオレターを送りました。また同年の12月には米国のホリデーシーズンに合わせ、三沢市の子供らから両市に向けたグリーティングや合唱の動画も送りました。三沢市とウェナッチ市、東ウェナッチ市の市民は、また太平洋を横断し実際に会いにいける日を楽しみに、心を通わせあう交流を続けています。

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