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2020トルコ沖地震被災者に対する被災地石巻からの義援金(宮城県東部地方振興事務所)
宮城県東部地方振興事務所 地方振興部 飯川 斉
1 義援金の贈呈の経緯
昨年10月30日にトルコ沖で発生した大地震は、116名の死者を出すなど、トルコ国内に大きな被害をもたらしました。一般社団法人石巻観光協会と宮城県東部地方振興事務所(宮城県石巻市)では、この大地震に対する義援金をいち早く募り、駐日トルコ共和国大使館に贈呈を致しました。1月18日にオンラインで行われた贈呈式では、メルジャン特命全権大使から「東日本大震災の恩を忘れないでいてくれることに深い感銘を覚える」とのお言葉を頂きました。石巻市民から多くの善意の義援金が寄せられた背景には、10年前にトルコから頂いた「恩」がありました。
2 トルコと石巻との関係
エルトゥールル号遭難事件を紐解くまでもなく、トルコは世界有数の親日国です。また、両国は地震が多いとの共通点があり、相互に支援を行ってきた経緯があります。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、トルコは震災発生直後の3月20日に救援隊を派遣し、3月22日及び23日に石巻市雄勝地区で救援活動に従事して頂きました。当時の雄勝地区は壊滅的な被害を受けており、トルコ救援隊の記録にも「1つの町が地図から完全に消し去られてしまった。まるでゴーストタウンのようだった」と書かれています。その様な厳しい状況の中、トルコ救援隊には行方不明者の捜索を行って頂くなど、地元警察や地域住民とともに活動して頂きました。大震災の際にトルコから受けた「恩」を石巻市民は今でも忘れず、このトルコでの大地震に対しても、多くの皆さんが心を痛め、善意を寄せて頂きました。
3 義援金の募集の状況
義援金の募集は石巻観光協会が主体となり、当事務所が協力する形で昨年11月と12月の2か月に渡って実施しました。市内の観光施設や当事務所の窓口への募金箱の設置、各種主催イベントでの募金の呼びかけ、石巻観光協会や当事務所の職員への募金の協力依頼などを行った結果、ささやかながら15万円の善意の募金が寄せられました。トルコ救援隊の活動が行われた雄勝地区で新たに造られた観光施設にも募金箱が置かれ、地元の皆さんが感謝の気持ちを口にしながら、募金しておられました。また、封筒に入れた現金に感謝の気持ちを添えて、当事務所の窓口にわざわざお持ち頂いた方もいらっしゃいました。この様なお一人お一人の善意に、募金をお願いした私たちも胸が熱くなりました。

4 オンラインでの贈呈式
義援金の贈呈式は、東京の在日トルコ大使館と石巻市内の石巻観光協会を結んで、オンライン形式で実施されました。当初の予定では、石巻観光協会と当事務所の関係者がトルコ大使館を訪問の上で義援金を贈呈する予定でしたが、東京での緊急事態宣言発令に伴い上京が叶わず、急遽オンラインで実施する運びとなりました。石巻観光協会の後藤会長からの義援金贈呈の後に、復興しつつある雄勝地区の様子などを、当事務所の佐藤所長からご説明を致しました。オンラインへの急な予定変更だったにも関わらず、メルジャン大使からは上記の様な感謝のお言葉を頂き、お魚好きの大使から石巻特産の金華サバの話題も出されるなど、終始和やかな会談となりました。また、この後にはメルジャン大使より丁寧なお礼の書簡を頂き、トルコから石巻への感謝の気持ちに改めて感慨を覚えました。

5 広がるトルコとの縁
この義援金を機にトルコと石巻との縁は更に広がり、外務省国際報道官室のご支援によって、2月16日と18日の両日には、トルコ救援隊が活動した雄勝地区などを、トルコ国営放送に取材して頂きました。トルコ救援隊の足跡をたどり、復興を果たしつつある雄勝地区の現在の様子を、トルコ国内はもとより、トルコから全世界に向けて報道して頂けるとのことです。エルトゥールル号遭難事件から脈々と続くトルコと日本とのご縁、その友好関係の一端を石巻が担わせて頂けることを、大変光栄に感じております。震災への支援でつながったトルコと石巻とのこの大切な関係を、更に発展させて参りたいと考えております。
