グローカル外交ネット

令和2年1月27日

兵庫県明石市政策局
公益財団法人明石文化国際創生財団

 子どもにも,高齢者にも,障害にもやさしいまちを目ざし,全国で初めて障害のある人に必要な合理的配慮を提供するための公的助成制度を開始するなど,「誰一人として取り残さない」施策を積極的に展開している明石市。SDGsの理念に合致するさまざまな取組により,東京2020オリンピック・パラリンピックの先導的共生社会ホストタウンにも第一次で登録されました。
 大会後には韓国,台湾のパラ卓球選手との交流を計画しており,今回はホストタウンの人的・文化的交流の一環として,2019年12月,韓国の高校生たちとの明石市内での交流を行いました。

明石市×共生社会ホストタウン

 明石市はホストタウン制度がスタートする前から,年齢,性別,障害などに関わらず,「いつまでも,みんなで,助けあう」暮らしやすいまちづくりを重点的に推進してきました。無戸籍者,犯罪被害者への支援も制度化するなど,「暮らす」「育てる」を大切にした分け隔てのないやさしい社会づくりを明石から率先して始め,広げています。
 また,前回リオ大会の旗手で,車いすテニスの上地結衣選手は市立明石商業高校出身,4大会連続出場中のパラ卓球・別所キミヱ選手は市内在住。いずれも世界的に著名な車いすのパラリンピアンが,明石ふるさと大使としても活躍しています。
 今大会では別所選手とのご縁をいかし,近隣の韓国,台湾の車いす卓球選手等との交流を行うほか,国際パラリンピック委員会公認教材I’mPOSSIBLEを活用した全ての市立小中高,特別支援学校でのインクルーシブ教育,バリアフリー教室の開催やユニバーサルデザインのまちづくりなど,共生社会の進展に向けて幅広くホストタウン事業を実施しているところです。

高校生の文化交流プログラム

(写真1)明石市内の天文科学館でお互いの紹介をする韓国と明石市の参加者 明石市内の天文科学館でお互いの紹介をする韓国と明石市の参加者

 今回の交流は,外務省の対日理解促進プログラムJENESYS 2019の一環として来日した韓国の高校生を,同じ兵庫県内の南あわじ市で開催されたアジア国際子ども映画祭の本選大会の翌日に,明石市に招待する形で行われました。時間にするとわずか5時間程度でした。明石市内を一台のバスで移動しながら,共生社会づくりの取組みや,「時のまち」「魚のまち」など明石の魅力を感じられるよう,短い時間ながらも多彩な文化交流内容をスケジュールに盛り込みました。

主な訪問先

  1. 日本標準時・子午線の通る「時のまち」のシンボル,市立天文科学館で見学,意見交換
  2. 約400年前に明石城築城とともに誕生した「魚の棚商店街」で名物・あかし玉子焼の昼食
  3. 総合福祉センターで共生社会の取組を学び,パラスポーツ体験(卓球バレー),意見交換
  4. ヘッドアートフォトコンテスト別ウィンドウで開くアカシ2019,コレクション会場ステージを見学

当日の交流の様子

(写真2)韓国の高校生は明石焼を完食するなど地元名物を堪能 韓国の高校生は明石焼を完食するなど地元名物を堪能

 交流には,韓国から,韓国デジタルメディア高校の男子3名,梅香女子情報高校の女子3名,随行の先生1名が訪問,明石の高校生7名,大学生2名,市の文化国際財団の職員などが出迎えました。
 今年開館60周年となる天文科学館では3つのグループに分かれ,若干ぎこちないながらも日本語,韓国語,英語を交え,和やかに挨拶を交わしました。交流に参加した韓国の高校生が所属する2つの高校の紹介映像を見た日本の高校生たちは,IT関係施設・設備の充実ぶりに驚きの表情です。
 市域東部を俯瞰できる14階の展望室からは,明石海峡大橋,淡路島など明石海峡も一望できます。韓国の高校生たちは熱心に何度も撮影していました。日本国内で現役最古,世界でも5番目に古いプラネタリウムや展示室も興味深く見学していました。

 お昼は旬の海の幸で名高い魚の棚商店街に出かけました。大漁旗がはためき,年末の買い物客で賑わう中,車いすでも飲食でき,点字メニュー,筆談ボードを設置しているバリアフリーのお店で地元名物・明石焼を堪能。ふわふわの生地に,コシのある蛸が入った明石焼は,温かい出汁につけていただきます。韓国の高校生も戸惑うことなく,揃って完食しました。

(写真3)ヘッドアートコレクションで披露された作品の一つ ヘッドアートコレクションで披露された作品の一つ

 午後は2019年5月にオープンした市立総合福祉センター・新館に。年齢,性別,障害の有無に関わらず,誰もが気軽に交流できる新たな共生社会の拠点です。
 障害者も働く喫茶・交流スペースでは,日本の高校生による「分け隔てのない社会」について発表があり,職員からの共生社会の拠点機能,国際社会の共通目標・SDGsや共生社会への取組の説明にも熱心に耳を傾けていました。さらに,軽食を片手に,共生社会の取り組みへの意見や感想,自分たちのことや韓国と日本の若者事情など,和気あいあいと交流を深めていきました。
 多目的ホールではパラスポーツの卓球バレーを体験,日韓混合でのミニゲームは大いに盛り上がりました。言葉の要らないスポーツ交流で,さらにお互いの距離が縮まりました。

 次は明石文化国際創生財団が主催するヘッドアートコレクション。ヘッドアートは世界的に注目されている表現方法の一つで,人の髪や顔をデザインする新しい芸術として明石から発信しています。2019年のテーマは,明石市制施行100周年を記念して「100」。出来上がった作品=モデルの姿に最初は驚いた様子でしたが,次第に積極的に会場を回って写真に収め,自分好みの作品への投票にも参加しました。
 最後は出発間際まで一緒に写真を撮り,連絡先を交換するなど,別れを惜しみました。

交流を終えて

 明石の高校生たちからは「直接触れ合うことで,韓国の高校生たちを身近に感じられた」「自分達と同じようにいろいろなことを悩んだり,考えたりしていることが分かり,参加して本当に良かった」などの声が聞かれました。
 また,韓国の高校生からも「現在,日韓関係が良くないため,訪日前は日本に対して良い印象はなかったが,宿泊先等でのサービスや日本人との対話,交流を通じて,不満は一つもなく,とても良いイメージを抱くようになった」,「今までは地方都市にあまり魅力を感じていなかったが,今回の経験を通じて,日本の地方都市には大都市に負けない魅力があると感じるようになった」などの感想が寄せられました。
 言葉の壁や国籍,生活背景を超えて,互いに理解し合おうとする姿勢が心のバリアフリーにつながると実感できたのは,これからの共生社会を担う若い世代,これからの社会にとって大きな意義があったものと考えています。今後もさまざまなかたちで,共生社会の進展に寄与していきたいと思いを新たにしたところです。

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