グローカル外交ネット

令和2年1月27日

外交実務研修員 亀井 鈴子
(栃木県から派遣)

1 はじめに

 私は,平成30年4月から,外交実務研修員として外務省に勤務しています。外務省に出向する前は,栃木県庁で,精神保健,学校施設,土地利用,消防防災,多文化共生,救急・災害医療,東日本大震災復興支援(岩手県庁への派遣)など,様々な分野で地方行政に携わってきました。そのような私の元に,突然,外務省への派遣の話が舞い込み,当初は迷いましたが,「望んでいても,なかなか経験できることではなく貴重な機会」という気持ちから,話を受け,外務省で勤務させていただくこととなりました。

2 儀典官室における業務

 配属先が「儀典官室」と知った時,全く聞いたこともない名前で,「一体,何をするところなのだろう?」というのが,最初の感想でした。
 儀典官室は,皇室の国際親善,外交官等の接受や,政府主催行事への駐日外交団の招待,外国人に対する叙勲の推薦,国際儀礼(プロトコール)などを担当している部署です。その中で,私はプロトコールに関する照会や各種研修,外務大臣主催天皇誕生日祝賀レセプション等における駐日外交団の接遇業務,各国大使が儀典長を表敬する際の資料のとりまとめ等を担当させていただきました。
 プロトコールとは,国家間の儀礼上のルールで,外交を推進するための潤滑油の役割を果たすものです。また,国際的・公式な場で,主催者側が示すルールを指すこともあります。具体的な例として,国際会議や外国の要人を招いてのレセプションの際の国旗の並べ方,配席,行事の服装(ドレスコード)などです。プロトコールには2つの基本精神があります。1つは,国の大小に関係なくすべて平等に扱うということ,国の大小で序列を決定しないということです。例えば,駐日大使の序列は,着任順が原則となっています。もう1つは,誰もが納得するルールに従うということ。基本的には,先方・当方共に不快な思いをしないよう配慮をすることで,無用の誤解を避け,真の理解を促進するための環境を作るということです。
 2019年は,G20大阪サミットやTICAD7,即位の礼など,大型外交行事が続いたため,関係部署からのプロトコールに関する照会が多いように感じました。
 また,各国大使が儀典長を表敬する際の資料のとりまとめ業務は,各国情勢に関する資料を,儀典長に入れる業務です。
 儀典長のポストは,外務省が各国大使と接する最前線の1つであるため,各国との信頼関係を構築し,日本外交にとって不可欠と思われる情報や資料を収集する必要があります。この情報や資料収集を通じて,日本と各国との関係を知ることができ,いろいろな関わり合いの中で,世界中の人々の生活が成り立っていることを改めて感じました。

3 地方連携推進室での実務研修

 外交実務研修員は,自分の所属する課室のみならず,地方連携推進室で,約2ヶ月間,実務研修を受けます。地方連携推進室は,地方自治体と外務省との連携の推進を担当する部署で,主に駐日外交団を対象とした,地方の魅力を発信するための地方視察ツアー,レセプション,セミナーなどを行っています。
 私の研修期間中には,宮崎県,奈良県の魅力を発信するためのレセプション,鹿児島県視察ツアー,東京都内の中小企業視察ツアーがあり,私は中小企業視察ツアーについて,担当者として関わらせていただきました。
 中小企業視察ツアーは,東京商工会議所との共催により実施しました。オリンピック・パラリンピックの開催を間近に控えた東京において,日本の建設業界において課題となっている人手不足や世界的な課題となっているペットボトルのリサイクルなど,社会の様々な課題に対し,創意工夫の努力をしながら挑み続ける中小企業を外交団に視察いただきました。
 ツアー実施にあたっては,外交団,訪問先企業双方にとって有意義な視察となるよう,視察先企業の皆さま,東京商工会議所の皆さまと,プレゼンテーションや視察の内容について打ち合わせをし,また,外交団がスムーズに視察できるよう,留意事項等をまとめたものを英語で作成し大使館へ情報提供するなど,細かな調整を行いながら進めていきました。
 当日は,分野の異なる4つの中小企業を視察し,参加者からは,課題に対して常に技術改良の努力を惜しまず挑む企業の姿に感銘を受けるとともに,自国にも技術を取り入れたいなど,感想が寄せられました。各訪問先では,各国の参加者から様々な質問が飛び交い,その興味・関心事に触れられると同時に,参加者の間の様々な会話から,視察ツアーの意義として,日本の魅力を発信することはさることながら,各国の外交官が1つのことを共有できる場を提供することで,日本と各国のみならず,日本以外の各国間の関係づくりにも寄与していると感じました。

4 おわりに

 外務省本省での勤務も残すところ3ヶ月ほどとなり,来年度からはいよいよ在外公館勤務となります。春以降,どのような生活が待っているのか,全く想像もつかず,毎日,不安と期待の入り交じる日々を過ごしていますが,残りの日々を大切に過ごしていきたいと思います。
 最後に,このような機会を与えてくださいました外務省及び栃木県,日頃より丁寧にご指導いただいております儀典官室及び地方連携推進室の皆さま,また,外務省への派遣に理解を示してくれた家族,様々な形で支えてくれている人たちに心から感謝いたします。

駐日外交団の中小企業視察ツアー

(写真1)株式会社丸高工業視察 (株)丸高工業視察
(写真2)協栄産業株式会社視察 協栄産業(株)視察
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