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無関係だった世界に身を投じて思ったこと 語学力の無い県庁職員の外務省挑戦
外交実務研修員 磯村 真太郎
(宮崎県から派遣)
1 はじめに
宮崎県庁に入庁して今年で7年目になりますが、外務省へ出向する前は福祉関係の部署で障がい福祉のための業務や、県税事務所で県税の課税(税額の計算や家屋の評価等)に関する業務に携わっていました。
語学力はほとんど無く、海外への興味も無かったため、海外旅行もしたことが無い、そんな普通の県庁職員ではございましたが昨年から外務省で勤務しています。
2 担当業務
外務省では大洋州課に配属され、主に豪州(一部太平洋島嶼国に関する業務)を担当しています。日本と豪州とは特別な戦略的パートナーシップの関係にあり外交的に非常に重要な国であります。
そのような中で今回は私が昨年度業務で関わることの多かった(1)「戦後和解業務(草の根招聘事業)」、(2)「人物交流「対日理解促進交流プログラム」(JENESYS)」、(3)「要人往来」についてご紹介いたします。
(1)戦後和解関連業務(草の根招聘事業)
豪州とは第2次大戦中は敵対する国同士でしたが、戦後和解が進み今では「特別な戦略的パートナー」として戦後和解がうまく進んだ国の一つです。
そのような中、私は戦時中に日本軍の捕虜になった豪州人や関係者を日本に招聘する事業を担当しています。この事業はこれまで約20年にわたり行っており、当初は実際に日本軍の捕虜となった豪州人を招聘していましたが、最近は当事者の子供や孫といった若い世代を対象として招聘事業を行っています。これまでに累計約140人の当事者及び関係者を招聘してきました。日本滞在中には日本の学生や市民団体等と交流を行い、豪軍人が捕虜となっていた場所などゆかりの土地への訪問も行います。
日本を訪問した多くの方は、現代日本における平和教育の視察や、子供達を含む一般市民との触れ合いを通じて心のわだかまりがとけ、帰国後に日本での経験を伝えたいという方も多く、日豪の戦後和解に大きく貢献している事業ではないかと思います。
(2)人物交流「対日理解促進交流プログラム」(JENESYS)
また、私は、大洋州課以外に対日理解促進交流室を兼務しており、「対日理解促進交流プログラム」を担当しています。このプログラムは、各国の青少年を日本に招待し、日本の文化、歴史等に関する理解促進を図り、帰国後には日本の魅力を発信する役割を担ってもらうことを狙いとする事業です。私はパラオやフィジー等の太平洋島嶼国を担当し、年間約200名近くの青少年を招待しています。交流事業は、将来に向けた二国間の友好関係の基盤として重要な役割を果たしています。日本と他国の将来を見据え、各国の方々が日本から何を学び、帰国後にどう生かしてもらえるか、関係者のご意見・ご協力をいただきながら事業を行ったことは貴重な経験でした。過去の交流事業が、日本と太平洋島嶼国の関係強化につながっていることを目の当たりにし、本件事業にとてもやりがいを感じています。
(3)要人往来
所管する国の首脳や大臣等の要人が往来する際には、受け入れ面での作業に従事しています。この作業はいわゆる「裏方」の業務になりますが、要人往来の成功を左右するため失敗が許されないという緊張感があります。首脳や事務方の当日様々に起こりうる可能性を想定する必要があり、相手国側とのやりとりを通じて、細部を詰める必要があります。
特に昨年度は要人が訪日する機会が多く、立て続けに訪日する要人の対応に慣れない点も多く苦慮しましたが最終的には様々な方の力添えにより何とか乗り越えることができました。


3 本省勤務で学んだこと
外務省の業務は、高いレベルで迅速な対応を常に求められます。外務省の方々は、相手国との外交関係上の経緯や相手国の文化や考え方等、様々な要素を踏まえ、非常に早いスピードで業務を処理しており、そのスピード感に正直なところ毎回驚かされています。
多忙で厳しい業務ではありますが、相手国との関係を深化させるために仕事を前向きに捉える姿勢を見習いたいと思います。
4 今後に向けて
外務省での研修の機会をくださった、外務省及び宮崎県の関係者に感謝申し上げます。そして何よりも外務省の事を何も分からなかった自分に優しく接していただいた外務省の皆様には本当に頭が上がりません。
外務本省での勤務も残り約5か月となり、その後は在外公館にて2年間勤務させていただくこととなりますが、日々勉強との思いのもと、残りの期間の1日1日を大切に過ごしていきたいと思います。