グローカル外交ネット
「外から見る」ということ 外務省での勤務を通じて
外交実務研修員 古木 辰史
(岐阜県から派遣)
1 はじめに
2019年に岐阜県から派遣され,外務省北米第一課に勤務しています。派遣前は,県の国際関係の部署での勤務経験がなかったため,外務省への派遣の話を聞いたときは「自分に務まるのか」と真剣に思い悩みました。
しかし,自身のキャリア形成を考えたとき,誰しもができるわけではない貴重な経験をさせてもらえるよい機会である,と前向きに捉え,外務本省~在外公館の4年間という研修に身を投じる決意を固めました。とはいえ当初は,慣れない職場・生活環境に不安100%,ガチガチに緊張して勤務に臨んでいたことを覚えています。
2 担当業務
北米第一課について
北米第一課は,いわゆる「地域課」と呼ばれる,各国との二国間外交を所管する部署の一つであり,名前のとおり北米(米国・カナダ)が管轄地域です。管轄の国の数は2つと少ないですが,いずれも外交上非常に重要な国であり,必然的に非常に多くの,重要な業務が求められます。
北米地域との交流事業「カケハシ・プロジェクト」

(尾身外務大臣政務官と記念撮影)
その中で,私は北米地域との交流事業の計画・実施を担当しています。米国・カナダから,要人や将来各分野で活躍が期待される方々を日本にお招きし,日本の良いところを知ってもらうことで,将来にわたる「日本の味方を増やす」ことが目的です。担当としては,日本でのスケジュールの立案,訪問先のアポ取り等が主な業務です。
中でも「カケハシ・プロジェクト」は,毎年1,000人近くを招へいし,外務省への表敬訪問や文化体験,地方都市の訪問などを実施しています。幅広い年代の方々が対象ですが,多くは高校生~大学生で,地方の高校・大学生との交流,ホームステイが目玉となっています。
一般的なイメージの,政府間で難しい交渉をする「外交」とは違うかもしれませんが,交流事業でまいた種が,いずれ日本と米国やカナダとの関係を円滑にする,と考えると,とてもやりがいのある業務です。
要人往来
広義の交流事業と言えなくもないかもしれませんが,国家元首レベルの往来の際は,相手国を所管する地域課が中心となります。在籍中の2019年4月には安倍総理夫妻が訪米,5月には米国トランプ大統領夫妻が「令和初の国賓」として来日しました。その際は,いずれも「プレス班」として,国内外のプレス対応を担当しました。決して楽な仕事ではありませんでしたが,まさに貴重な経験をすることができたと感じています。
3 本省勤務で学んだこと

ライトアップされたスカイツリー
国際社会で日本が強いリーダーシップを発揮していくための外交の重要性,といったことは言わずもがなですが,あえて外交実務研修員としての立場で言わせていただくならば,日本を,また地方を「外から見る」ということの大切さです。
特に交流事業を担当しているから,ということもありますが,日本という国を代表して(外務省という看板をつけて)行われる海外とのやりとりや,交流事業で来日した方々との会話の中で,良きにつけ悪きにつけ,日本が外からどのように見られているのかということに気づかされることが多々ありました。それは,地方公務員としての経験・視点だけでは決してわからなかったことだと思います。
同時に,国の機関という立場から地方自治体等と接することで,同様に地方の持つ魅力や課題などが見えて来ることもありました。こうしたダブルの発見は,まさに外務省でしか味わえない経験であると感じています。
4 今後に向けて
研修期間としては,本省勤務があと半年ほどあり,その後在外公館に赴任することになります。在外公館でも,きっとさらに得難い経験・視点を得ることができると思うと,期待が高まります。
最後に,この場をお借りして,未熟な研修員を受け入れ,いろいろと教えてくださった北米第一課員の皆様,このような機会を与えていただいた外務省,岐阜県の関係の皆様に,心より御礼申し上げたいと思います。