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令和元年10月28日

亀岡国際交流協会事務局長 井尻浩嗣

 スティルウォーター市コミュニティーセンターには素晴らしい日本庭園が,オクラホマ州立大学(OSU)の植物園には小さい日本の茶庭(ティーガーデン)があります。これらは2つとも,1997年に米国オクラホマ州スティルウォーター市との姉妹都市交流の絆を強めるために,京都府亀岡市造園事業協同組合が寄贈したものです。

 今回,海外日本庭園再生プロジェクトに選定され,2019年4月16日から22日まで,亀岡の造園家さんと私は,これらの日本庭園の修復とメンテナンスのためアメリカに渡りました。メンバーは,若手4名と,22年前この庭園の当初の建設にあたったベテラン2名。合わせて6名で,若手の一人は,当時の別のメンバーの息子さんです。今回の訪問は,4人の若手造園家さんにとって,造園による国際交流を引き継いでいく最初のステップとなりました。

(写真1)水琴窟の設置(OSU植物園,ティーガーデン) 水琴窟の設置(OSU植物園,ティーガーデン)

 OSUの植物園では,ティーガーデンに新たな要素として,「水琴窟」を追加設置しました。伝統的な水琴窟は,陶器の瓶や壺を地面に埋めて作るのですが,今回大学側が,リサイクルの観点から廃材となった水道メーターボックスを使ってほしいと言われ,そのようにしました。水がしたたる音は,本来の水琴窟の音とは少し違いましたが,クリアーで鐘のような音がしていました。ここでの作業は,オクラホマガーデニングというテレビが取材に来ていました。Youtube別ウィンドウで開くで見られます。

(写真2)スティルウォーター市植栽管理スタッフと記念撮影 スティルウォーター市植栽管理スタッフと記念撮影

 スティルウォーター市コミュニティーセンターでは,そこの国際交流記念庭園の全体的な修復とメンテナンスを行いました。スティルウォーター市から,5名の屈強な植栽管理スタッフが作業に参加してくれました。作業を通じて,彼らに樹木の剪定や枝の切り方,低木を間引いたりする方法を指導しました。おそらく普段彼らは動力工具を使って作業しているはずですが,今回は剪定ばさみ,ショベル,のこぎり,レーキなどを使って作業しました。

(写真3)埋もれてしまっていた枯山水 埋もれてしまっていた枯山水

 スティルウォーターの気候は,夏とても暑く乾いているので,地面は大量のマルチ(ウッドチップなどの自然素材)でおおってありましたが,造園家さんたちがそれを取り除いて地面をきれいにすると,石や小石で形作られた流れが出てきました。スティルウォーター市のスタッフたちは,そんな物が下に隠れていたことに驚いていました。

 コミュニティーセンターでは,日本庭園一般に関するプレゼンテーションを実施しました。「池泉回遊式」,「枯山水」といった表現スタイルの説明を行いました。 また,スティルウォーター市が,庭園22周年記念を祝うセレモニーを開催し,姉妹都市委員長からこの日本庭園の今までの歴史についての説明の後,ウィル・ジョイス市長,パット・ダーリントン副市長からお礼の言葉と感謝状をいただきました。セレモニーのあとには,記念にもみじの木を植樹しました。

 滞在中はホームステイをして,現地の方との交流も行いました。期間中はスティルウォーター市役所,OSUの大学スタッフの皆さんに大変歓迎して頂き,若手造園家の皆さんはとても感動されていました。 春のオクラホマは,竜巻(トルネード)やサンダーストームといった災害がよく起こり,滞在中にも激しい雨やサンダーストームが通過しました。それもまたアメリカの貴重な体験となりました。

 日本庭園に関するプレゼンテーションで造園家さんのリーダーが,木や草はいつかは朽ち果てるが,石は決して形を変えない,と説明されていました。亀岡とスティルウォーターの関係も,国際交流記念庭園の大きな石のように,ずっと続くように願っています。

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