グローカル外交ネット
ホストタウン交流「長井市×タンザニア」
山形県長井市総合政策課
オリンピックパラリンピック・文化スポーツ交流推進室
長井市がタンザニアのホストタウンに!

2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて,国内外で様々な取り組みが進められています。その一つが参加国・地域との人的・経済的・文化的な相互交流を図る地方公共団体を「ホストタウン」として政府が登録する取り組みです。とりわけ山形県におけるホストタウンの登録件数は,東北で一番多く,全国でもトップクラスとなっています。
長井市は,タンザニア連合共和国(以下,タンザニア)をホストタウン相手国とする交流計画を策定・申請し,2016年12月9日に政府の登録を受けました。まちの将来像を「みんなで創る しあわせに暮らせるまち 長井」と位置付ける長井市第五次総合計画では,「市民ひとり一スポーツを楽しむ元気なまち」を生涯スポーツ分野における施策の目指す姿としており,年齢や性別,障がい等を問わず,市民の誰もがいつでも,いつまでもスポーツに親しむことができる環境を整備することを基本としています。そしてスポーツの推進に取り組み,スポーツを通じてすべての市民が幸福で豊かな生活を営むことができる社会を創出することを目指しています。
スポーツを「する人」だけでなく,スポーツを「観る人」,指導者等の「支える(育てる)人」にも着目し,市民が生涯にわたってスポーツに親しめる環境を整えていくことを目指す総合計画の方針は,ホストタウン事業の理念にも通じるものがあります。
山形とタンザニアのつながり
タンザニアはアフリカ東部に位置し,インド洋に面しています。人口約5,500万人,国土面積は94.5万平方キロメートルと日本の約2.5倍となっており,年率7パーセントの高い経済成長を維持しています。北東部にはアフリカ最高峰のキリマンジャロ山,世界自然遺産として登録されているセレンゲティ国立公園など,世界でも有数の大自然の宝庫として知られています。また,農業は国の重要な産業となっており,キリンマンジャロコーヒーに代表されるように上質なコーヒーの産地として世界中で知られています。
山形県とタンザニアの結びつきは深く,国内で唯一の地方友好団体である「山形・タンザニア友好協会」が中核となり,20年以上にわたり交流を深め,タンザニア音楽のイベントや写真展,絵画展等の開催をはじめ,総会の開催時期に合わせ駐日タンザニア大使等要人が山形を訪れるなど,現在も民間レベルで活発な交流を続けています。2003年には,当時のタンザニア大統領が来県し,今もなお,山形県に訪れた唯一の外国の国家元首となっています。
また,山形県の調べによると,国際協力機構(JICA)が派遣している青年海外協力隊で,山形県出身の隊員がこれまでに派遣された国の中で,タンザニアが最多となっております。かつ,ホストタウン登録申請時には,JICAタンザニア事務所に長井市出身の職員が駐在しており,スポーツ当局との橋渡しを担っていただきました。また,青年海外協力隊員だった市民との結婚を機に長井市に移住したタンザニア人の方が30年以上も前から長井市に暮らしています。様々な縁が長井市とタンザニアをつないでおり,ホストタウン登録のきっかけとなっています。
長井市のホストタウン事業
ホストタウン登録後は,講演会の開催など,タンザニアとの相互の理解を目的とした企画を実施しています。2017年3月に開催された講演会では,JICA職員としてタンザニア赴任時に野球の普及支援に尽力された,アフリカ野球友の会代表の友成晋也氏をお招きしました。タンザニアの青少年を中心に野球の普及に携わった経過や,東京大会の追加競技として「野球・ソフトボール」が加わったことも踏まえ,「いつかアフリカチャンピオンになって,国際大会で日本に行きたい」というタンザニアの子どもたちの夢をご紹介頂き,オリンピックに向けた気運の醸成とレガシーの構築に向けて取り組む有意義な企画となりました。
また,駐日タンザニア大使が2017年9月に長井市を訪問し,タンザニア選手団の競技施設及び市内の視察や市民との交流などを行いました。市内の中学校にも訪問し,生徒の皆さんから部活動の活動発表や,生産量日本一を誇る競技用けん玉を使って大使が大皿の技に初めて挑戦するなど,和やかに交流を深めました。
昨年の2018年10月には本市で開催される長井マラソン大会に合わせ,タンザニア選手団が事前合宿を実施しました。
市内中学生がタンザニアを訪問

ホストタウン交流の⼀環として,おととし10月に初めて市民研修員などを含めた訪問団がタンザニアを訪問しました。タンザニアでは,政府スポーツ当局や競技団体関係者と会談し,事前合宿などについて覚書の締結することで大筋合意しました。大会まで1年となった今年も7月25日から8月2日の日程で長井市長を団長とする市民訪問団13人がタンザニアを再び訪問しました。タンザニア政府情報・文化・芸術・スポーツ省とホストタウン事業に関する覚書の調印式が7月31日,駐タンザニア日本大使公邸で行われました。その後,タンザニア五輪委員会事務局において,タンザニア五輪委員会とも覚書を交わしました。両者との覚書締結により,東京オリンピックに向けて相互交流を深めていきます。
市民訪問団には,市内中学生2人と市民研修員3人も参加し,柔道場での練習の様子や地元小学校の授業風景を視察。長井市特産のけん玉を使って市の紹介を行いました。また中学生はタンザニア・ザンジバルの青少年チームと野球をし,交流を深めました。調印式のため訪れたダルエスサラーム市では,日本政府の支援で建設された野球場のあるアザニア中等学校を訪問。長井市野球協会(手塚隆幸会長)から提供を受けたボール等,スポーツ用品の贈呈を行いました。
2020年東京大会に向けて

タンザニアは2012年ロンドンオリンピックに選手6名(陸上,競泳,ボクシング)が,2016年リオオリンピックには選手7名(陸上,競泳,柔道)が出場しています。特に陸上競技については1980年代にマラソンの国際大会で活躍したジュマ・イカンガーさんは日本でも人気のあるランナーとして知られています。また東京大会で入賞をうかがうマラソン選手もおり,その活躍が期待されます。
長井市では,山形県内で唯一の日本陸上競技連盟公認フルマラソンコースを有しており,毎年秋に開催される「長井マラソン」には全国から多くのランナーが参加しています。ホストタウン登録を機に国際陸連の認証も取得し,海外からも多くの選手が参加できる大会になるよう取り組んでいきます。
長井のまちは最上川の舟運によって栄えた「山の港町」です。外へと開かれたこのまちの気風は,現代においても息づいています。ホストタウン事業をきっかけに,タンザニアとの関係が深まるよう積極的な交流活動を展開し,本事業が次世代の両国民の理解促進と友好関係の強化につながるよう,スポーツだけでなく文化面等においても交流を広めていきたいと考えています。