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令和元年7月23日

外交実務研修員 赤木 和也
(岡山県赤磐市から派遣)

1 はじめに

 私は,平成25年4月に岡山県赤磐市役所に入庁し,以降5年間農林課で勤務していました。外務省には,平成30年4月に外交実務研修員として派遣され,現在,国際協力局事業管理室で勤務しています。

2 担当業務について

 国際協力局は,主にODA(政府開発援助)に係る業務を行っています。ODAの目的は,ODAを通じた国際社会の平和と安全および繁栄の確保に務め,日本の国益増進にも貢献することです。ODAを実施するためには,相手国からの要望をもとに案件を発掘・形成し,日本政府の関係機関で案件の妥当性を検討し,妥当と判断された案件について詳細計画を練り上げ,日本と相手国との間で援助に係る国際約束を交わすなど様々なプロセスが必要です。
 事業管理室は,ODAを円滑に実施するための制度管理と調整業務を担っており,私は技術協力班に所属しています。技術協力班は,主に技術協力の実施にかかるスキーム管理や国際約束である技術協力協定を担当しています。技術協力とは,開発途上国の人材を育てること,日本の技術や知識を開発途上国に移転することなどを目的とした援助であり,人と人との接触を通じた「顔の見える援助」です。
 外務省に派遣される前までの私のODAに対する理解は,中学・高校の社会科で習った「開発途上国を日本が援助している」といった程度のもので,なんとなくしかODAを知りませんでした。しかしながら,現在では業務を行っていく中で,案件が様々なプロセスの中でたくさんの人が汗を流して行われ,それが開発途上国の発展につながっているのだということを目の当たりにしていくことで,ODAがより身近な存在に感じられるようになりました。

(写真1)ジブチ最終日(平成30年10月18日),降雨で冠水した道路を走る調査団を乗せた四輪駆動車。 写真:ジブチ最終日(平成30年10月18日),降雨で冠水した道路を走る調査団を乗せた四輪駆動車。ほとんど雨の降らない砂漠及びステップ気候のジブチ(年平均降水量200mm以下)において,一週間ほどの滞在中に奇跡的に雨に遭遇。

日本と開発途上国との科学技術のコラボレーション『SATREPS(サトレップス)』

 私の担当する業務の一つには,日本の科学技術とODAとの連携により,日本と開発途上国の研究機関が協力して国際共同研究を行い,その研究成果の普及を目指す取組(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム,通称:SATREPS)があります。
 昨年度は,アフリカのジブチで初のプロジェクトとなる「ジブチにおける広域緑化ポテンシャル評価に基づいた発展的・持続可能水資源管理技術確立に関する研究」の事前調査団に同行させていただきました。本プロジェクトは,乾燥地に適した持続可能な農牧業の実現を目指すものであり,事前調査では,共同研究を開始する前の相手国各研究機関との協議・調整,フィールド調査などを行いました。
 赤磐市農林課での勤務で見てきたような日本の農業環境とは全く異なり,過酷な自然環境の中でも様々な工夫を凝らし農業を行っている遊牧民の生活を見るなど,執務室にいるだけでは決して感じることのできない現地の空気感を肌で感じるという貴重な経験をさせていただきました。

(写真2)ジブチ最終日,市内のレストランでの昼食(左:子ヤギ肉,中:カレースープ,右:サフランライス) 写真:ジブチ最終日,市内のレストランでの昼食(左:子ヤギ肉,中:カレースープ,右:サフランライス)
子ヤギ肉は直火でじっくりローストされている。臭みもクセもなく柔らかく,特に皮の脂がジューシーで絶品。サフランライスにはライムを搾りさっぱり仕上げていただく。昼食を食べながら現地のドライバーさんから現地語でありがとうの「ワ,マカラハ」を教えてもらいました。
(写真3)地域の魅力発信セミナー(令和元年6月4日ホテル椿山荘東京にて開催) 写真:地域の魅力発信セミナー(令和元年6月4日ホテル椿山荘東京にて開催)
秩父市,堺市,京丹後市,立山町の4市町が各々のまちをPR。

地方連携推進室での実務研修

 外交実務研修員は,自分の所属する課室のみならず,地方連携推進室という地方と外務省との連携の推進を担当する部署で,約2か月間実務研修を受けます。私の研修期間中,地方自治体が各国に地域の魅力を発信するセミナーが開催され,私は駐日各国大使をはじめとする約150名を前に,英語で司会を務めさせていただきました。
 人生で初めての英語での司会であり大変緊張しましたが,前日まで上司に指導してもらったおかげで無事最後まで務めることができ,大きな自信にもつながりました。

3 事業管理室勤務で感じたこと,印象に残ったこと

 配属されてすぐに英語で書かれた技術協力協定の案文を渡され,英語の苦手な私は冷や汗をかいたのを覚えております。すぐに書店で英和辞書を買い求め,それからは辞書片手に協定案文を読み込んでいく毎日が始まりました。
 国際約束は日本と相手国との国と国との取り決めであり,国によって状況が異なり,時には締結に向けた協議が平行線を辿り,互いに折り合いがつかないこともあり,互いの主張・考えを検討し,妥結点を探っていきます。
 そのような中,内容について何か少しでも分からないことがあれば,例えば「shall,will」など単語一つ一つが持つ意味についても理解できるまで上司に丁寧に指導してもらい,日々成長を重ねさせていただいております。また,外務省内では英語研修もあり,自身の英語力を磨いていくことができるようになっています。
 外務省ならではと感じたことは,「午後から総理の通訳です」などといった業務連絡が聞こえたり,お昼休みにはスマホで現地の友人とベトナム語やインドネシア語で話している声が聞こえたりと,全く今まで経験したことのない世界に驚いています(外務省には通訳担当官という通訳のプロがいます)。

4 おわりに

 外務本省での勤務も残すところ9か月ほどとなりましたが,来年度からはいよいよ在外公館での勤務となり,毎日を不安と期待の入り混じる中で過ごしています。昨年度の1年間を振り返ると色々とやっておけば良かったと後悔を感じることもありますが,残りの期間,悔いのないよう研鑽を重ねていきたいと思っています。
今回,このような機会を与えていただいた外務省と赤磐市に心から感謝するとともに,外務省への派遣を通じた人との出会い,貴重な知識と経験を赤磐市に持ち帰り,市の発展に貢献することができればと思っています。

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