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海外デザイナーとの連携による県産品の海外展開 本関刀を例に
岐阜県 商工労働部 県産品流通支援課
1 岐阜が誇る関の刃物

豊かな自然を有する飛山濃水の地、岐阜県では、古くから人々の生活に根ざしたものづくりが盛んで、製造業は岐阜県の中心的な産業となっています。様々な特色ある地場産業を代表するものの一つが、刃物の生産です。
岐阜県関市には、切れ味の良いハサミや包丁などを手がけるメーカーが数多くあります。包丁、ナイフ、ハサミ、医療器具、工業機械など様々な製品が製造されており、「関の刃物」として、国内でも大きなシェアを誇っています。その品質は海外からも高い評価を受けており、関市は、ドイツのゾーリンゲン、イギリスのシェフィールドと並び、「世界三大刃物産地」の一つとされています。
2 県産品の海外販路拡大のための施策
岐阜県では、人口減少等に伴い国内市場が縮小する中、世界各国における日本製品への信頼や評価の高まりも踏まえ、経済成長著しいアジアや、高付加価値品の販路拡大が期待できる欧米等、海外市場における販路開拓に積極的に取り組もうとする県内企業への支援を行っています。
その施策の一つとして、「海外デザイナー連携新商品開発事業」を実施しています。
世界で活躍するデザイナーと県内ものづくり企業のコラボレーション等により、世界に通用する商品開発を支援し、情報発信力の高い国際見本市に出展することで、岐阜ブランドを世界に向けて発信し、県内企業の海外販路開拓の促進を図っています。
3 本関刀の完成

(c) atelier oï

上記事業の一環で、2017年にイタリア・ミラノで開催された国際見本市「ミラノ・サローネ」に試作品を出品し好評を博した日本刀がこのほど商品化され、2023年1月30日、岐阜県庁で披露されました。
本関刀(ほんせきとう)と名付けられたこの刀は、スイスの著名なデザイナーであるパトリック・レイモン氏が共同代表を務めるアトリエ・オイ社と関市の刃物メーカーである長谷川刃物株式会社が連携して制作したものです。
アトリエ・オイ社のデザインに基づき、刀の外装部分にあたる拵(こしらえ)は、スイスの宝飾職人が制作しました。拵には牛革が使用され、純金のワイヤーがらせん状に巻きつけられており、日本の刀匠が脈々と伝統を受け継ぎ、現代、未来へと引き継がれていくことを表現しています。また、刀身部分は、関市の第二十六代刀匠・藤原兼房氏により制作されました。本関刀の長い剣先は、美濃の小さな山々が連なる様子をイメージしています。
岐阜県が誇る伝統工芸品である日本刀に、海外ならではの発想によるデザインが加わり、新しい魅力を持った商品が誕生しました。長谷川刃物株式会社の長谷川尚彦代表取締役社長は、「拵に金を巻き付けたのは初めてで、大変でした」と苦労を語りました。
報告を受けた古田岐阜県知事は、この本関刀について、「ついに商品化の段階に達しました。国内外に広くアピールしていきます」と話しました。
4 今後の展開
岐阜県では、このように海外デザイナーとの連携による新商品開発等を通じて、地場産業や県産品の新たな可能性を引き出し、海外に向けてその魅力を広く発信する取組を行ってきました。今後も、海外市場の開拓を目指す県内事業者への支援を推進していきます。