グローカル外交ネット

令和4年1月5日

外交実務研修員 栗木 智章
(福岡県から派遣)

1 はじめに

 私は、2020年4月に福岡県から外務省へ派遣され、南部アジア部南西アジア課で勤務しています。福岡県庁では、部局内の予算に関する総合調整、財政当局との折衝等に携わっていました。これまで国際的な業務とは無縁でしたが、外務省で勤務する機会をいただき、日々貴重な経験をさせていただいています。

2 南西アジア課での業務

 私の所属する南西アジア課は、南西アジア地域7か国(インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブ)との二国間関係を所掌しています。日本と南西アジア諸国は伝統的に良好な関係にあり、また、日本の安全保障、地域の平和と安定の観点から重要な地域です。なお、2022年に、日本は南西アジア各国との関係における節目の年を迎えるところ、外務省として2022年を「日本・南西アジア交流年」としています。様々な周年事業が行われる予定ですので、皆様が南西アジア諸国について更に知るきっかけとなれば幸いです。
 この重要な地域を担当する南西アジア課において、私はインド班にて日印関係(主に人的交流関係)に携わっています。日印は「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」の関係にあり、インドは日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた重要なパートナーです。その重要性は年々高まっており、日々の業務は重要かつ充実したものばかりですが、中でも私の印象に残った点について、いくつか紹介します。

(1)新型コロナウイルス対応

 私の外務省勤務は、新型コロナウイルス対応で始まりました。これまでのコロナ対応として、在留邦人の出国支援やクルーズ船対応等、いくつも印象的な出来事があったのですが、私が当初より継続して関わっているのが、現地の感染状況や各種渡航制限・行動制限等に関する情報収集です。これらの情報は我が国の意思決定にも影響を及ぼしうるもので、関係者の高い関心を集めているところ、情報収集・資料作成作業は地道ながら非常に重要な業務の一つです。当初は慣れない英語での情報収集に苦戦しましたが、自身の基本的な能力の向上に繋がったほか、これまでほとんど知らなかったインドについて理解を深める機会となりました。

(2)コロナ禍での外交

(写真)日印首脳会談の様子 2021年9月 日印首脳会談(出典:首相官邸ホームページ)

 着任から当面の間は、新型コロナウイルスの影響で各種外交日程が止まってしまいましたが、しばらくしてからオンラインも活用しつつ各種協議等が動き始めました。これまで、様々なレベルの協議・会談に関わりましたが、その中でもやはり首脳レベルの案件は大変印象深く残っています。2021年9月の総理訪米の際は、いわゆる「サブロジ」という裏方の業務に携わりましたが、失敗が許されない緊張感の中、あらゆる可能性を想定し細部を詰めていく作業は地道ながら大変やりがいのある業務でした。

3 本省勤務で感じたこと

 外務省は想像以上に少ない職員数で業務を回しており、担当レベルでも多くのことを任せてもらえる環境にありますが、その裏返しとして、各個人に高いレベルの専門性とスピード感、オーナーシップが常に求められます。省員の皆さんが国益のためにハードな仕事を高いレベルで日々こなしているのを目にする度に、自身がその要求水準を満たせているのか反省の連続ではありますが、このような環境に身を置き勉強する機会をいただいていることを大変有り難く感じます。また、省内に他省庁、民間企業等、多様な組織からの出向者が多数在籍しているほか、諸外国の様々な立場の方とも仕事をする機会がありますので、異なる組織や国の考え方・文化に触れ、自身の思考を柔軟にする貴重な機会となっています。

4 最後に

 本省勤務は大変な部分も多いですが、南西アジア課は雰囲気が良く、関係各位の暖かい支援のおかげでここまでやってこられました。まもなく本省での勤務を終え、在外公館に赴任することになりますが、残りの日々を大切にし、少しでも成長できるよう研鑽を積んでいきたいと思います。

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