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令和3年7月21日

神戸市 市長室国際部国際課
国際渉外専門官 ルチュク・レオ

(写真1)ルチュク・レオさん 神戸市内の六甲山最高峰にて。登山好きで、市内に山が多く、大変楽しんでいます。

 神戸市国際渉外専門官を務めております、ルチュク・レオと申します。東ヨーロッパのウクライナ、その西部に位置するリヴィウ市に生まれました。両親の仕事関係でしばらくアメリカに暮らし、ウクライナ以外のヨーロッパの各地をまわった経験から、異文化や外国語にとても興味を持ちました。

 大学では言語学を学びました。その時に日本文学に魅せられ、同時に日本語も勉強し始めました。卒業時点では副専攻程度で勉強していたはずの日本語が、最も学習時間が長くなりました。今では生活のほとんどが日本あるいは日本語に関連していて、すっかり副から主に変わりました。

 大学卒業数年後は、フルブライト奨学生としてアメリカのインディアナ大学に留学。日本語の理論言語学や平安時代の文学等を勉強しました。ウクライナ帰国後は、在ウクライナ日本国大使館に就職し、3年間に渡り大使通訳や資料翻訳などを担当しました。さらに翻訳や通訳の技術を向上させるために東京外国語大学に留学し、翻訳学の研究等を重ね、神戸市役所にたどり着きました。現在は、神戸市長の日英通訳、翻訳業務管理及び外国の連携先との交渉等を担当しております。

(写真2)マスクと軍手をして伐採するルチュク・レオさん 竹林の伐採

 本職は通訳者ですが、最近では渉外官として、いくつかの地方活性化の戦略的な取組にも大きく携わっています。その一部をここで紹介したいと思います。

 まずは、神戸市特有のエコボランティア育成の取組を紹介します。

 海外では、学生の進学や就職時には、ボランティア活動の経験を求められる場合が多く、特に大学生にとって重要な活動になっています。特に主要先進国では、地球温暖化対策が重要視されていることから、環境問題解決に特化したボランティアが最も重視されています。このような背景を踏まえ、神戸市では、市内や近郊の教育機関や民間企業等と連携し、学生に海や山での環境保全活動に取り組んでもらう計画を進めています。市役所の選定した問題をボランティアに解決してもらうのではなく、問題発掘から解決策まで、専門家の指導の下で全て学生に考えてもらいます。また、脱炭素の取組について、国連の国際会議等で広報活動をしてもらう目標も掲げています。

 令和2年度から、過去に類を見ない淡水のブルーカーボン事業において、水草の二酸化炭素吸着能力を評価する研究に乗り出しました。また、今年1月には「ブルーカーボンフォーラムin神戸」を開催し、小官から事業の概要や海外の事例を紹介させていただきました。水草の繁茂を促進するには、自然に任せるだけでなく、人が環境を整備しなければなりません。神戸市の新型コロナウイルス感染症対策として始まった「外国人留学生等有償ボランティア事業」の参加者らと、竹林の伐採やため池の整備を実施しました。今年度からは、エコボランティアの中核となる関西学院大学の学生と今後の活動を協議するとともに、大学に出向いて、海外のエコボランティアについて講義も行いました。エコボランティア活動には多様な学生の関与が大切であるため、小官の役割として、これからいかに留学生を参画させるかに注力したいと考えています。

(写真3)パソコンを操作するルチュク・レオさんとモニターを見つめる2人の男性 オンラインイベントでのプレゼンの風景

 もう一つの取組は、スタートアップ企業や高度外国人材の集積・交流に不可欠となる国際的なネットワークの構築です。

 少子高齢化社会の状況下において、イノベーションを起こす人材がますます重要になってくると思われ、そのような人材の受入れ体制やいわゆる人材循環環境の構築が不可欠と考えます。神戸市の五ヵ年実施計画である「神戸2025ビジョン」でも、「神戸の産業の発展に寄与するため、海外の都市や大学とのネットワークを構築、深化することで、外国人材の獲得を支援するとともに、神戸への定着をめざします」と言及されており、すでにいくつかの機関や団体等とのネットワークを作り始めています。

 例えば、令和元年9月に経済等の交流促進に関する覚書が締結されたアメリカのポートランド市(オレゴン州)とは、数回に渡りB2Bマッチングイベントを開催していただき、令和3年3月には、小官も神戸市におけるクリーンテックの取組について紹介しました。

 そして、ICT高度人材が豊富で、高度技術のスタートアップ等も盛んな中東欧地域とのネットワークの構築にも取り組んでいます。その第一歩として、中東欧の中でもICT分野での発展が最も著しい小官の母国、ウクライナとの連携を始め、6月に駐日ウクライナ大使館に協力していただき、ICT関連の企業が特に集積している西部地域の企業や政府関係者等に、神戸医療産業都市やスタートアップ支援といった神戸市の取組をオンラインで紹介する機会をいただきました。また、同月下旬にウクライナスタートアップ基金主催のオンラインピッチセッションにも参加しました。

 スタートアップの事業紹介を聞くと、1分毎10件の発見があるようなもので、場合によっては頭がボーっとしてしまうのですが、興味深いアイデアが非常に多く、これからも可能性のある連携先を探り続けます。

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