グローカル外交ネット
未体験のアフリカ外交 地方公務員の外務省での経験
外交実務研修員 佐藤 隆彦
(横浜市から派遣)
1 はじめに
私は2019年4月より横浜市から派遣され、アフリカ部アフリカ第一課で勤務しております。2年間の本省勤務も残り数か月余りとなりました。本寄稿の機会をいただいたので、拙いながらこれまでの勤務経験を御紹介させていただきます。
2 TICAD7

赴任前はアフリカに関する業務に従事したことは全くなく、恥ずかしながらTICAD7についても何となく横浜市で開催される、と知っているくらいでした。そのため、赴任が決まってからあわてて前任から情報をもらってTICAD7に係る資料を読みました。
TICADとは、1993年に日本が立ち上げたアフリカ開発に関する首脳級の国際会議(Tokyo International Conference on African Development:TICAD)です。横浜市ではこれまで2回TICADが開催(TICAD IV(2008年)、TICAD V(2013年))されており、配属された時期は2019年8月に開催されるTICAD7の開催準備に係る業務に従事しました。具体的には、行事、広報、配偶者プログラム関連の業務を行い、派遣元である横浜市との調整業務も行いました。
業務を通して感じたのは、行事に係る事務的な後方支援(いわゆるロジ)への完璧さの追求です。各国の要人が参加する会議ですので、移動手段の確保、行事次第、現地での連絡方法の確認等、ロジでは完璧さが求められます。外務省職員の皆様の能力は非常に高く、細かい調整を含め、多岐に渡る業務を効率的に捌き、ロジを完璧に仕上げていく様子にとても衝撃をうけました。
TICAD7開催直前と開催中は、とにかく発生する業務に対応することで精一杯で、正直あまり記憶にないのですが、それでも業務が無事に終わったときは大きな安堵感と喜びを感じました。
3 アフリカ第一課での業務
アフリカ第一課では、サントメ・プリンシペ、赤道ギニア、コートジボワールの3か国を担当しており、これらの国に係る情報収集を日常から行い、関係課や在外公館と連携しながら日々発生する様々な業務に対応しております。これまで従事させていただいた業務はどれも印象深いものばかりでしたが、ここでは日・コートジボワール投資協定に係る業務について少し触れさせていただきます。
西アフリカ市場への進出の拠点として、日系企業のコートジボワールへの関心は高まっており、投資協定の締結により、日系進出企業の自由で安定した企業活動を確保し、両国間の経済関係を一層発展させることが期待されています。
私は本協定署名までの協定文言等の調整、署名後の国内手続に係る業務に従事しました。派遣元の横浜市で条例改正に係る業務を担当したことはありましたが、その経験は全くといっていいほど役に立ちませんでした。関係各署からくる質問に対応するために、コートジボワール国内の制度・文書を調べ、在外公館に伺い、上司に確認していただいてから回答する、ということを何度も繰り返す日々が続きました。
恵まれた上司や同僚のおかげで何とか署名までたどり着けた際は、TICAD7のときとはまた違う安堵感を感じました。
4 終わりに
2019年4月に赴任した当初、外務省職員の皆様の業務をこなすスピードとその量が自分の想像を遥かに超えており、果たして自分はここでやっていけるのか相当不安でした。実際、飛び交う聞いたことのないカタカナ用語、気づいたら溜まっている受信メール等、これまでに経験したことのない環境を理解するのに時間がかかりました。それでも自分が生き延びることができているのは、恵まれた上司、同僚、関係課の皆様、在外公館の皆様のおかげだと日々実感しております。この場を借りまして、関係者の皆様に御礼申し上げます。優秀な方々と一緒に勤務できたことは、私の今後の人生の貴重な財産となると確信しています。
本省での勤務も残りわずかとなりましたが、今後少しでも成長できるよう、日々精進いたします。