グローカル外交ネット

令和2年4月20日

国立大学法人宮崎大学地域資源創成学部准教授
一般社団法人日本トーゴ友好協会設立者兼会長
金岡 保之

1 はじめに

 私は宮崎大学地域資源創成学部で教員を務める傍ら,2011年に一般社団法人日本トーゴ友好協会(以下,協会と呼ぶ)を設立し,会長をしています。東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に,研究テーマである「地域の国際化」を進めようと考え,トーゴ共和国(以下,トーゴと呼ぶ)の日向市へのホストタウン登録のきっかけを作りました。
 2017年7月,地域の国際交流を後押しするために,宮崎大学金岡研究室(以下,研究室と呼ぶ)は,セダミヌ・トーゴ共和国臨時代理大使を,JICA(独立行政法人国際協力機構)の協力を得て,語感が似ている宮崎県日向市東郷町に招へいしました。地域の国際化を目的に,十屋幸平日向市長とセダミヌ代理大使の「ひょっとこ踊り(日向市の伝統芸能)」共演ビデオなどを,研究室のホームページなどで公開していましたが,内閣官房東京オリンピック・パラリンピック競技大会推進本部事務局の担当職員が見つけて,ホストタウン提携のきっかけとなりました。
 2018年12月に日向市がトーゴのホストタウンに登録をされ,研究室は日向市,内閣官房,駐日トーゴ大使館等と連携して様々なプロジェクトを進めて参りました。

2 これまでの交流

(画像)トーゴ一行を歓迎する塩見小学校の生徒たち 女性アスリートモデル事業で,日向市を訪れたトーゴ一行を
歓迎する塩見小学校の生徒たち

(1)女性アスリートモデル事業(2019年3月6日~10日)で,トーゴから女性アスリート(マラソン種目),打楽器演奏のエンターティナー,トーゴ日本友好協会代表者の3人と駐日トーゴ大使館外交官ら2人の計5人のトーゴ人が日向市を訪問しました。
 一行は宮崎空港に到着後,宮崎大学を訪問し大学生や留学生との交流後,日向市に移動し,保育園,小学校,高校などの教育機関や,日本刀工房,伝統的建築物が残る港町である美々津地区,日向市役所(市長表敬訪問,市民交流会)を訪問し,「ひょっとこマラソン」にも出場しました。

 交流で特に印象的だったのは,児童や生徒たちの歓迎ぶりです。塩見小学校では,生徒たちは事前にトーゴの歴史や文化を学びこの日を待ちわびていました。トーゴ一行が到着すると「ボンジュール!」とトーゴの国旗を振って5人を歓迎しました。その後,トーゴのプロダンサーが小学生約100人に対して,言葉の壁を超えて伝統のダンスを教えました。
交流事業の紹介動画別ウィンドウで開く

(写真2)集合写真 第7回アフリカ開発会議(TICAD7)サイドイベントでの
アフリカホストタウンの集合写真

(2)第7回アフリカ開発会議(TICAD7)サイドイベント(2019年8月)に,研究室は日向市と参加し,日向市の橘ひょっとこ踊り保存会とジャンベ演奏グループのメンバーが連携して,音楽とダンスでイベントを盛り上げました。
 また,私は来日中のトーゴ共和国ニャシンベ大統領を十屋日向市長と共に表敬訪問し,ホストタウンの取り組みを説明しました。大統領の多忙なスケジュールの中,20分間の会談でしたが,大統領は私たちの取組みを真剣な表情で聞いていただき,その後「日向市に一度行ってみたい」と言われたのがとても印象的で,「是非お越しください」とお答えしました。

(写真3)トーゴのダンサーと交流する市民 日向市主催の「ダンスDE国際交流 with TOGO」で
トーゴのダンサーと交流する市民

(3)宮崎県で,様々なホストタウン国際交流イベントを日向市と企画し,研究室のゼミ生が運営や情報発信などを行いました。
 イベントの例として,トーゴでの日本人起業家と「アフリカ・トーゴ理解セミナー」を主催,トーゴ共和国大統領特使(TICAD7)スティーブ・ボジョナ前トーゴ駐日大使を宮崎大学に招へいし国際交流セミナーを主催,宮崎県主催の「ALL MIYAZAKI スポーツ&ホストタウンフェスタ」で日向市ブースを出展し,県内農業高校とGAP食材を使ったトーゴ料理を振る舞いました。
 さらに,2019年8月に,日向市が開催した「ダンスDE国際交流 with TOGO」があります。集まった日向市民が,西アフリカの伝統楽器ジャンベのリズムにのりトーゴのダンスにチャレンジしました。参加者の約50名に向けたアンケートでは,参加者のほぼ全員がこのような「国際交流をする機会が必要である」と回答しました。
 日向市民,参加者団体,本研究室所属のゼミ生や留学生は,国際理解や国際協力について事業を通じて実践的に学ぶ良い機会になったと考えます。一方,トーゴ大使館の大使,外交官,本国からきたトーゴ人達もこの一連の活動についてはとても協力的で,皆で楽しみながら行っている印象は日向市民にも良く伝わっていると思います。

(4)今後は,日向市でトーゴ共和国独立60周年記念事業の開催を予定しています。内容は,60周年記念植樹,日向市・駐日トーゴ大使館・日本トーゴ友好協会の3者連携協定の署名などです。
 この連携協定では,日向市が友好協会に毎年寄付をして,その資金でトーゴ現地の壊れた井戸を修復する事業やトーゴの子供達にフランス語の図書を寄贈するなど,現地のNPOと協力して人道支援を行うことを予定しています。駐日トーゴ大使館はその事業をサポートする役割です。友好協会はこれまで,図書を寄贈する教育支援や井戸修復をして村人に安全な水を供給して参りました。ホストタウン事業を契機に,このような活動を安定的に継続することで,トーゴと日本の良好な友好関係を続けていきたいと考えています。

3 情報発信

 これまで,私たち研究室の活動が,新聞,テレビ,ラジオ,インターネット,雑誌,広報誌,ジャーナルなどで数多く取り上げられました。また,大学人として論文や講義・講演・セミナーなどで広くホストタウンの活動や成果を発表しました。
 地域のほぼすべてのマスメディアは,ホストタウン事業を毎回大きく取り上げて,県民,市民との架け橋になってくれました。この1年間でトーゴの存在やアフリカについて話題になることが多くなりました。また,ゼミ生が中心となって国内外にYouTube,Facebook,Skypeなどのネットメディアを使って,日本語・英語・フランス語などの多言語でも情報発信したことで,トーゴを始め,アフリカやアジアの国々にもホストタウンの活動が発信できたと思います。

4 レガシー

 私は,地方の国立大学地域資源創成学部の研究室を,「地域の国際化を通じてのグローバル人材育成」を教育目的として運営しています。そして,東京オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーは,地域の為の人材育成だと考えています。日向市がトーゴのホストタウンになったことから,様々な交流を通じて,アフリカをはじめ世界の多様な文化を理解し交流を深め,グローバルな視点をもった,地域のために活躍できる人材を育成したいと考えています。
 その成果の1つとして,研究室所属のゼミ生達が「大学SDGs ACTION! AWARDS 2020」(朝日新聞主催,文科省・外務省後援)のファイナリスト賞を受賞しました。発表のテーマは「アフリカの人道支援を通じたグローバル教育の実践 トーゴ共和国の井戸修復プロジェクト」です。
 また,「地域の国際化」の役割はもう一つあると考えます。それは「地域活性化」です。地域レベルの交流は,異文化の理解など諸外国との相互理解を一層推進するとともに,この過程において,地域の魅力を再発見し自信を持つなど自らの地域のアイデンティティーを明確にし,さらに魅力ある地域づくりの手助けともなります。
 今後も,このホストタウンを契機にオール宮崎で連携し,宮崎県で「地域の国際化」「地域の為のグローバル人材育成」に努めていきたいと考えています。

グローカル外交ネットへ戻る