
政治宣言(案)
(仮訳)
- 「HIV/エイズに関する誓約宣言」に盛り込まれた目標の達成状況につき包括的にレビューする会合(5月31日から6月1日)及びハイ・レベル会合(6月2日)に参加した我々首脳及び政府代表は、
- エイズ蔓延から25年が経ち、エイズ問題は人類に対する未曾有の惨事であることを懸念し、(エイズにより6,500万人以上が感染、2,500万人以上が死亡し、1,500万人の子供が孤児となっている。現在、HIVとともに生きている4,000万人のうち95%以上が途上国に存在)。
- エイズは、国際的緊急事態を生み出し、開発・発展、安定への最も恐るべき脅威となっており、包括的・国際的な特別対応が必要であることを認識し、
- 国内及び国際的な努力により、2001年以来、重要な進展が資金面、予防・治療・ケア・サポートへのアクセス拡大、エイズ罹患率の低下等に繋がってきたことを認識し、
- エイズ対策におけるドナー諸国の役割・貢献及び2005年のエイズ対策に向けられた資金の1/3が中低所得国の国内資金により支出された事実を認識し、世界的エイズ対策における国際協力拡充の重要性を強調し、
- 一方、感染症の流行の拡大及びその女性化が進んでいることを深く懸念し(エイズ感染者の半分が女性、アフリカでは60%を占める)、その観点から、ジェンダー差別と女性・女児へのあらゆる形での暴力が、彼らのエイズに対する脆弱性を強めることを認識し、
- 新規感染者の半数が25歳以下の若者及び児童であること、また、小児薬の欠如が将来の世代を保護する努力を著しく阻害していることを深く懸念し、
- 人権及び基本的自由の実現は国際的エイズ対策において不可欠な要素であることを再度確認し、
- すべての人が可能なかぎり最高の身体的・精神的健康水準に徐々に達するためには治療薬へのアクセスが根本的に重要であることを再度確認し、
- 蔓延は全ての地域に影響を及ぼし、アフリカ、特にサハラ以南のアフリカが最も影響を受けていること、またその影響を抑制するためには迅速で特別な対策が必要なことを深い懸念をもって再度強調し、
- エイズの蔓延は、貧困の原因であり、結果であること、エイズ対策を効果的に行うことは、MDGsを含む国際的に合意された開発目標を達成するために必須であることを認識し、
- 我々は、世界的な流行を逆戻りさせ、不必要な何百万もの死を避けるために必要な手段を現在、有していることを認識し、また、効果的な対策のためには、エイズ患者、市民社会等と協力しつつ、集中した、より緊急性を有し包括的な対策を実施しなくてはならないことを認識し、
- 包括的対策を実施するためには、予防、治療、ケア・サポートへのアクセスを阻害する法・規制、貿易及びその他の障壁を乗り越え、必要な資金を誓約し、人権と基本的自由を保護・促進し、ジェンダー平等、女性及び女児のエンパワーメントを促進し、保健システムを強化し、保健労働者を支援し、エイズ患者の参加拡大を支援し、治療薬及び予防ツールへのアクセス確保のために必要なことを全て実施し、将来のために薬、診断方法、予防技術などの改善されたツールを開発しなくてはならないことを認識し、
- 政治的意思、強力なリーダーシップ、持続的なコミットメント、全ての関係者による協調した努力及び資金の増加なくしては、流行は止められないと確信する。
よって我々は、
- 「HIV/AIDSに関する誓約宣言(2001年)」の完全実施、MDGsを含む国際的に合意された開発目標、主要国連会議及びサミットでの合意、及び2015年までにリプロダクティブ・ヘルスへのユニバーサル・アクセスを達成するとの目標の達成へのコミットメントを確認し、
- 政策とプログラムとの連携、エイズ対策と国家開発計画及び戦略との調整強化の必要性及び国家計画・戦略の実施評価を行う上で、適切な場合には、エイズを主要指標に含むことの必要性を強調し、
- エイズ予防、治療、ケア・サポートを拡大するためには、全関係者を含めた国家主導プロセス及びUNAIDS他により促進されている地域間の協調の推進の重要性を認識し、
- 全ての関係者による活発な参加を得た上で、2010年までに予防、治療、ケア・サポートへのユニバーサル・アクセスを達成することを目標にし、幅広く、様々なセクターにおいて予防、治療、ケア・サポートが達成されるべく、国家主導の持続的・包括的対策を拡大するために必要な全ての努力を行うことを決意し、
- エイズ感染への予防が国家、地域及び国際的な対策の要であることを再確認し、
- 効果的なエイズ予防、治療、ケア・サポート、医薬品、物品及びサービスへのアクセスを阻害する法・規制、その他の障害を取り除くための適切な解決策を模索することを合意し、
- 保秘及びインフォームド・コンセントが完全に確保された、自発的カウンセリング、テスト及び関連サービスを促進し、エイズ・ステータスの自発的開示を行う上で、安全で支援的な法的・社会的環境作りを促進することを誓約し、
- 証拠に基づいた包括的な予防戦略を実施することで、エイズ・フリー世代を確保すべく、若者の間での感染率の上昇問題に対処することをコミットし、
- 妊娠女性のための出産前のケア、情報、カウンセリング、その他のエイズ関連サービスへのアクセスの確保、母子感染削減のため、エイズに感染した女性及び子供の効果的治療へのアクセス拡大の確保、インフォームド・コンセント、治療、特にARTへの一生のアクセス及び、適切な場合、人口母乳の提供を含む自発的で秘密のカウンセリング、テストなどの効果的な介入の確保を進める決意をし、
- 食糧・栄養支援及び食糧安全保障をエイズの包括的対策に含むことを決意し、
- 立法、政策立案、教育、国内・国際啓蒙キャンペーン、その他適当な方法を通じ、エイズに関連したスティグマ・差別を排除し、エイズ患者、弱者グループの人権及び基本的自由を保護・促進し、エイズ対策における彼らの意味ある参加を促進するための努力を強化することをコミットし、
- ジェンダーによる不平等、ジェンダーに基づいた虐待・暴力の問題を取り上げ、エイズ感染リスクから自らを保護するために女性・女児のキャパシティを向上させることを誓約し、保護の方法として、主に保健ケア・サービスを提供し、就中、セクシャル及びリプロダクティブ・ヘルス、包括的情報と教育へのアクセスを提供し、女性のエンパワーメントを可能とする環境作り、女性の経済的独立を強化するための全ての必要な措置をとることを誓約し、この観点から、ジェンダー平等達成のためには男性・男児の果たす役割の重要性を再度強調し、
- エイズにより影響を受けている子供、また感染している子供の脆弱性を優先的に取り上げ、これら子供たち、家族等への支援を提供し、子供中心のエイズ政策・プログラムを促進し、エイズ孤児等の保護を拡大し、治療へのアクセスを確保し、子供のための新しい治療を開発する努力を強化し、彼らを保護する社会保障システムの支援を必要に応じ創設することをコミットし、
- StopTB世界計画2006-2015に沿った結核及びエイズ対策の強調活動の拡大促進、また、複合感染者のための新薬、診断方法、ワクチンの開発に向けた投資の必要性を強調し、
- 国家の既存の保健、社会システムの強化につながるような、包括的プログラム提供のキャパシティを出来る限り拡大することを決意し、
- 保健分野の人材のキャパシティを強化し、訓練及び管理能力を改善し、保健関係者の採用、維持、配置を効果的に管理するために、必要に応じ、国家計画・戦略の実施、採択、強化を行い、
- 中・低所得国におけるエイズ関連保健システム及び人材資源のギャップへの対策を強化するために必要な資金を提供するよう、国際金融機関、世界エイズ・結核・マラリア対策基金、その他のドナーに対し呼びかけ、また我々もコミットし、
- 紛争、人道危機、自然災害の発生している国及び地域への政府、国連機関、地域並びに国際機関及びNGOによる支援に、HIV/エイズの予防、ケア、治療の要素をプログラムに組み込む必要性を再度強調し、
- 積算根拠が明確で、包括的、持続可能で、信憑性があり、証拠に基づく国家エイズ計画には、資金運用の透明性、説明責任及びその有効性以外の条件をつけることなく、全面的に資金供与が行われることを確保することを誓約し、
- 予測可能で持続可能な資金源へのアクセスを可能とするために、国内及び国際資金の拡大を通じ、エイズ対策のために必要な世界的な資金ギャップを削減し、国際的な資金供与が国家エイズ計画・戦略と調整されていることを確保することにコミットし、この観点から、2015年までに各国ODAを対GNP比0.7%まで引き上げるとの目標達成に向けた一部先進国のタイムテーブル確立を歓迎し、
- UNAIDSによると、中・低所得国における早急なHIV/エイズ対策の拡大には、2010年までに推計220億ドルから230億ドルが必要であることを認識し、ドナー国、各国国家予算、その他の資金源による必要資金の確保に向け措置をとることにコミットし、
- 持続的で予測可能な資金拠出や革新的財源からの追加的資金供与を通じて、世界エイズ・結核・マラリア対策基金を含む、既存の金融メカニズムを支援・強化することを更にコミットし、
- 購入可能な価格で質の高いエイズ予防製品・医薬品等へのアクセスを加速・強化するため、価格・関税・貿易政策、規則の改善、規制政策、調達・供給、研究開発への主要な障害の撤廃に向け適切な対処をとることに合意し、
- 世界貿易機関(WTO)のTRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)、その他関連規定を使用する権利を再確認し、それらが規定する柔軟性を途上国が適用できるように、そのキャパシティを強化することを決意し、
- エイズ関連の安全で購入可能な価格の新しい医薬品・医療製品・技術の開発に向けた投資、伝統的医薬品への研究開発への投資を増加することにコミットし、
- 製薬会社、ドナー諸国、国際機関及び他のパートナーに対し、研究・開発及び技術移転を支援し、更にエイズへの包括的対策を行うための官民パートナーシップを発展させることを慫慂し、
- エイズ予防・診断・治療にかかる製品の、一括購入、価格交渉、低価格ライセンスを促進する二国間、地域的、国際的な取組を奨励し、
- 途上国においても購入可能な価格で治療薬を提供するという目的で、刷新的な財政メカニズムに基づき、国際薬品購入ファシリティ(International Drug Purchase facility)を創設するイニシアティブを歓迎し、
- 2010年までに予防、治療、ケア・サポートへのユニバーサル・アクセスを達成すべく予防、治療、ケア・サポートを拡充すると共に、その厳格なモニタリング及びエイズ戦略における枠組み評価を行うため、2006年に国家目標を設定することにコミットし、
- UNAIDSに対し、スリーワンズ原則にあるとおり、各国エイズ対策の調整努力を支援し、Global Task Teamの勧告に基づき、上記ターゲット達成に向けた各国及び地域レベルでの対策の評価・報告を行い、エイズに関する地球規模での調整を強化することを求め、
- 各国政府、議会、ドナー諸国、地域機関、国連機関、世界基金、市民社会、弱者グループ、民間セクター、感染者・患者団体等に対し、上記目標達成のため協力することを求めると共に、エイズ対策への参加型レビューを通じ説明責任と透明性を確保するよう求め、
- 国連事務総長に対し、国連決議S-26/2(2001年6月27日)に基づき、国連総会への年次報告にHIV/エイズに関する誓約宣言の実施状況を含めるよう要請し、
- HIV/エイズに関する誓約宣言の実現にかかる進展状況を確認するため2008年及び2010年に包括的レビューを行うことを決定する。