国際保健
「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」について
【第1章】三大感染症の現状
HIV/エイズ(後天性免疫不全症候群)
エイズとは人体の免疫系を破壊するHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染して免疫不全に陥ることにより、通常ならば問題のない弱い病原体までもが体内で活発に活動し、健康を保持できなくなった状態をいいます。
1981年に最初のエイズ症例が報告されて以来の約30年間で、延べ約7800万人がHIVに感染し、3900万人以上が死亡したとみられています。ただし、世界の新たなHIV感染者は、2001年の340万人から2013年の210万人と38%減少し、2014年のエイズによる死亡者数は120万人と推定され、ピークだった2004年から42%減少しました(数字出典:2015年WHO、UNAIDS)
一方で、感染率が上昇している国・地域が存在すること、15歳から24歳までの若年層の感染リスクが高まっている等の課題があります。母子感染などを通じた子供への感染も問題になっています。
結核
結核菌にによる感染症で、我が国では昭和初期まで死因の第一位で国民病といわれていました。感染初期にはせき・たん・微熱などの症状がみられます。結核患者の95%は低・中所得国の住人で、予防や効果的な治療法が存在するにもかかわらず、2014年の死亡者数は150万人に上ります(2015年WHO)。さらに、1990年以降は、HIV感染者が結核菌に感染すると、HIV非感染者よりも致死率が数倍高いとの結果が出ており、結核対策とHIV/エイズ対策を同時に行うことが重要となっています。
マラリア
マラリアとはハマダラ蚊などの蚊を媒介してマラリア原虫が人の体内に侵入し発生する感染症で、高熱や下痢などが主な症状です。なかでも熱帯熱マラリア(悪性マラリア)に感染した場合には、適切な治療法が早期に施されないと死に至ることがあります。世界の総人口の約半数がマラリアの脅威にさらされており,2015年の死亡者数は約44万人に上りました(2015年WHO)。