1 経緯
- (1)「地球の持続可能性に関するハイレベル・パネル」(GSP)は,潘事務総長のイニシアティブにより,2010年8月に設置されました。ズマ南ア大統領及びハローネン・フィンランド大統領が共同議長を務め,日本からは,鳩山由紀夫元総理がメンバーとなっています。
- (2)パネル・メンバーは,個人の立場で参加し,持続可能な開発を達成するためのビジョンと具体的提言について,6回の会合を通じ議論を行ってきました。その結果作成された報告書が,1月30日(現地時間),エチオピアのアジスアベバにおいて,共同議長から潘基文国連事務総長に提出されました。
2 報告書の概要
GSP報告書(概要)は,6月にブラジルで開催されるリオ+20への重要なインプットとなることが期待されているものです。第一章において,持続可能な開発は,経済,社会及び環境の3本柱を統合することによって達成可能であるが,その実行が伴っていないとして,共通の課題を解決し,共有された利益を促進するためにより良く協力し,持続可能な開発を主流化し,強靱な人々と強靱な地球という人類の未来を選択すべきとのビジョンを提示しています。その上で,第二章で持続可能な開発の現状を分析した上で,第三章で人々の能力強化,第四章で持続可能な経済の構築,第五章で制度的ガバナンスの強化について論じ,56の具体的提言を行っています。
- (1)人々が行う選択が持続可能性に大きな影響を与えるとの考えから,人々が持続可能な選択を行えるよう,人々の能力強化(エンパワーメント)が必要と論じています。その関連で人権や人間の安全保障を開発の基本と位置付けるとともに,教育,職業訓練,女性や若者の参画を促進するための提言を行っています。
- (2)持続可能な経済を構築するとの観点から,社会・環境の外部経済性(コスト)を価格に反映させるべきことや,経済活動において持続可能な開発を尊重すべきことを提言しているほか,GDPを超える新しい指標を2014年までに策定すべきことなどが提言されています。
- (3)制度面では,地方,国家,国際のあらゆるレベルで良いガバナンスと一貫性を確保し,説明責任を明確にすることが重要としています。そのような観点から,持続可能な開発に関する情報を集約するアウトルック報告書の作成や,持続可能な開発を総合的に扱う理事会を国連総会の下に設けることの検討といった提言を行っています。また,持続可能な開発に関する具体的目標の策定(ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals, MDGs)を補完し,2015年以降は一つの枠組みに収斂されるもの)を提言しています。
- (4)グリーン経済について,持続可能な開発のビジョンを達成するための包括的アプローチを提供するものと位置付け,技術革新の重要性,省エネ技術・再生可能エネルギーの促進,グリーン雇用,グリーン経済の各国予算・戦略における主流化など,報告書を通じ,グリーン経済への移行の重要性が提起されています。同様に,防災や強靱性の観点を予算や戦略において主流化すべきことも提言されています。
「地球の持続性に関するハイレベル・パネル」(GSP)
メンバー
共同議長
- ハローネン・フィンランド大統領(共同議長)
- ズマ・南ア大統領(共同議長)
メンバー(アルファベット順)
- ナヒヤーン・アラブ首長国連邦外務大臣
- ズバイル・ナイジェリア大統領補佐官(MDGsアドバイザー)
- ババチャン・トルコ副首相
- バルシリー・リサーチ・イン・モーション社(注)共同CEO (注:ブラックベリーのメーカー)
- ベドリツキー・ロシア気候変動問題大統領特別代表兼世界気象機関(WMO)総裁
- ブルントラント・ノルウェー元首相
- カルミ=レ・スイス外務大臣
- カラビアス・メキシコ元環境大臣
- カールソン・スウェーデン国際開発協力大臣
- ディオゴ・モザンビーク国会議員(元首相)
- ハン・韓国元国務総理(グローバル・グリーン成長研究所(GGGI)理事長)
- 鳩山由紀夫元総理
- ヘデゴー気候行動担当欧州委員
- ルイス・スペインOECD大使(元環境大臣)
- ラメシュ・インド環境・森林大臣
- ライス米国連大使
- ラッド・オーストラリア外務大臣(前首相)
- スチュアート・バルバドス首相
鄭国光 中国気象局長- テイシェイラ・ブラジル環境大臣