平成24年5月25日
5月14日~25日,ドイツ・ボンにおいて,「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」,「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)」,「京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)」及び2つの補助機関会合が行われたところ,概要は以下のとおり。本会合は,昨年末に南アフリカ共和国・ダーバンで国連気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)が開催されて以降の本年最初の公式な国連交渉であった。我が国から,外務・経済産業・環境・文部科学・農林水産・国土交通各省関係者が出席した。
今回の会合では,5つの特別作業部会・補助機関会合が並行して開催された。既存の2つの作業部会(AWG-LCA及びAWG-KP)では,本年末のCOP18でこれらの作業部会が終了することを念頭に作業が進められた。COP17で新たに設立されたダーバン・プラットフォーム特別作業部会は,立ち上げに必要な組織的事項を決定し,今後の作業計画に合意することが期待されていたが,議題の採択や議長等の選出に多くの時間を費やし,実質的な議論に入ることができず,今後の作業計画案については新たに選出された共同議長により次回会合前に各国に提示されることになった。
我が国は,本年末のCOP18に向けて,将来の枠組みについての議論が行われるダーバン・プラットフォーム特別作業部会を立ち上げること,また,既存の2つの作業部会をCOP18で成功裏に終わらせることが重要であるとの考えの下,精力的に交渉に参加した。また,各国の野心レベルの向上の方法や,将来の市場メカニズムの在り方に関するワークショップにパネリストとして出席し,我が国の考え方を説明した。
交渉と並行して,我が国は,二国間・多国間の会談等を通じて,我が国の立場への各国からの理解,今後の交渉の進め方についての共通理解を得られるよう努めた。また,各種イベントにおいて,我が国が主導する東アジア地域をはじめとする世界の低炭素化に向けた取組や途上国への支援等について説明を行った。
本作業部会は,昨年末のCOP17で立ち上げられて以来初めての会合が今回開催された。議題の採択と議長等の選出を行い,2020年以降の枠組みの交渉と2020年以前の野心のレベルの向上の2つの作業項目を平行して交渉することとなったが,具体的な作業の進め方については次回会合の前に共同議長から案が提示されることとなった。議題の採択では,一部の途上国から,昨年のCOP17で閣僚レベルで合意した内容を再交渉しようとするような試みがなされ,議論が紛糾した。議長等の選出についても,3人の立候補者の間で調整が難航したが,最終的には,COP18で承認されることを条件として,今後4年間の役員の構成及び本年の共同議長をインドのマウスカル環境森林省特別次官とノルウェーのドブランド元AWG-KP議長が務めることが決定した。 また,野心レベルの向上に関するワークショップが開催され,我が国からは,長期目標の設定,MRV(測定,報告,検証)を通じた透明性の確保の必要性等について説明を行った。
COP17での決定に基づき,COP18において京都議定書第二約束期間を設定するための議定書改正に関する議論(第二約束期間に参加する国の目標値(QELROs)の設定,第一約束期間の余剰達成が生じた場合の繰り越し(キャリーオーバー),約束期間の長さ等)が行われたが,合意には至らなかったため,引き続き次回会合で議論を行うことになった。
年に2回開催される,実施に関する補助機関(SBI)及び科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)の会合では,国別報告書,途上国の緩和行動,適応,対応措置,技術,キャパシティ・ビルディング,REDD+,LULUCF(土地利用・土地利用変化及び林業),農業等に関する議論を行い,その結果が結論文書にまとめられた。研究と組織的観測に関しては結論文書が合意に至らず,引き続き次回会合で議論を行うこととなった。
会合期間中,カタール(COP18議長国),米国,英国,フランス,ドイツ,豪州,ニュージーランド,韓国,インドネシア,サウジアラビアとの二国間会談を行い,交渉の状況,COP18で目指すべき成果,将来の枠組みの在り方等について意見交換を行った。また,小島嶼国,アフリカの主要国と会合を行い,COP18の成功及び将来の枠組みの構築に向けて協力していくことを確認した。さらに,東アジアサミット(EAS)諸国と会合を行い,国連の下での交渉と並行して地域レベルでの協力を強化していくことで一致した。
期間中,インドネシア政府,国連開発計画(UNDP),地球環境戦略研究機関(IGES)の関係者の参加を得てサイドイベントを開催した。我が国からは,本年4月に東京で開催した東アジア低炭素成長パートナーシップ対話の結果を報告し,また我が国が進める二国間オフセット・クレジット制度についての説明を行った。約60名の参加者に対し,我が国が進める地域レベル・二国間レベルでの協力について包括的な説明を行い,建設的な意見交換を行うことができた。
会合期間中,邦人NGO及び国際NGOと意見交換を行った。
会合期間中,海外の記者や邦人の記者に対し記者ブリーフ等を行い,交渉の状況や我が国の立場等について説明した。