
国連気候変動枠組条約に関する特別作業部会等 結果概要
平成23年10月7日
10月1日~7日,パナマ・パナマシティにおいて,国連気候変動枠組条約(UNFCCC)及び京都議定書(KP)の下の特別作業部会(AWG)が行われたところ,概要は以下のとおり。我が国から,外務・経済産業・環境・農林水産・国土交通各省関係者が出席した。
本会合は,4月及び6月に続いて開催された本年3回目の公式な国連交渉であった。前2回の会合では,議題の採択や会合の進め方等に多くの時間を費やし具体的な議論が進まなかったこと,また,本会合が本年末に南ア・ダーバンで開催される第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17)の前に行われる最後の国連交渉であることから,COP17に向けてより具体的な議論を加速させる必要があるとの認識の下,COP17で採択するための決定文書の案文を作成するべく精力的に交渉が行われた。その結果,多くの分野でCOP17での議論の基礎となる文書が作成された。
我が国は,カンクン合意に基づき,全ての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的枠組みを構築する新しい一つの包括的な法的文書の早急な採択という最終目標を念頭に,COP17の成果がそのような最終目標に結びつくものとなることを目指して交渉に参加した。会合期間中にさまざまな場で行われたCOP17の成果に関する議論では,途上国が京都議定書第二約束期間への合意の必要性を引き続き強く主張したが,我が国は,気候変動問題の解決には全ての主要排出国の参加が必要であり,第二約束期間には賛同できないとの立場を明確に述べた。
交渉と並行して,我が国は,二国間・多国間の会談等を通じて,我が国の交渉立場に対する各国の理解を深めるとともに,カンクン合意の各要素についてバランスのとれた前進が得られるよう努めた。また,各種イベント等において,脆弱国を始めとする途上国への支援や我が国の取組について説明を行った。
1.気候変動枠組条約作業部会(AWG-LCA)
- (1) 気候変動枠組条約作業部会では,共有のビジョン,先進国・途上国の緩和(排出削減)の約束・行動及びその透明性の確保(MRV),セクター別アプローチ(農業・国際バンカー油),REDD+(途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減等),新たな市場メカニズム,対応措置(排出削減措置による悪影響への対処),適応(気候変動の悪影響への対策),資金支援の在り方,技術移転,長期目標及び条約の目的達成に向けた進展のレビュー,本作業部会の成果の法的形式等に関する非公式協議がそれぞれ開かれた。
- (2) 技術移転,適応,資金等については,カンクン合意で設立することが定められた組織の立ち上げに向け,解決すべき論点は残るものの,具体的な議論が行われた。特に途上国の関心の高い資金分野においては支援のあり方や脆弱国支援に関する議論に積極的に参加し,交渉の円滑化に貢献した。緩和及びその透明性の確保の議論については,報告書作成のためのガイドラインやその報告内容を検証するための仕組み等についてCOP17で決定することを目指した議論が行われた。他方,共有のビジョンや対応措置について,論点を絞って効率的に協議すべきと主張する先進国と,個別の関心事項をすべて等しく扱うことを求める途上国が引き続き対立し,議論は平行線をたどった。本作業部会の成果の法的形式については率直な意見交換が行われたものの各国の立場には引き続き大きな隔たりがあることが確認された。
2.京都議定書作業部会(AWG-KP)
- (1) 京都議定書特別作業部会では,第3条9に基づく京都議定書の改正(ナンバー),土地利用・土地利用変化及び林業(LULUCF),京都メカニズム,方法論(バスケット),潜在的影響について議長テキストを基にした議論が行われた。LULUCF等一部の技術的論点については一定の前進がみられたが,多くの論点については結論が先送りされた。
- (2) 我が国は,京都議定書の第二約束期間には賛同できないという従来の立場に変更がないことを表明するとともに,全ての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提とする我が国の目標は,全ての主要国の参加を確保しているAWG-LCAの交渉においてのみ有効なものであり,AWG-KPでは有効なものではない旨発言した。
3.我が国の立場に関する説明等
- (1)二国間・多国間の会談
会合期間中,英国,韓国,グレナダ,米国,モンゴル,欧州委員会,EUと二国間会談を行い,交渉の状況,COP17で目指すべき成果,次期枠組みの在り方,二国間オフセット・クレジット制度等について意見交換を行った。また,小島嶼国,アフリカの主要国と意見交換し,相互の立場や我が国の支援に関する率直な意見交換を行ったほか,小島嶼国の全ての国が集まる定期会合に参加し,我が国の立場を詳細に説明するとともに,COP17の成功に向け協力していくことを確認した。このほか,世界銀行,UNDP及びアフリカ諸国と,「アフリカ低炭素成長・持続可能な開発戦略に関する関係者会合」を開催した。
- (2)サイドイベントにおける日本の小島嶼国支援の説明
UNDP,JICAからの関係者の参加を得てサイドイベントを開催し,短期資金支援実施状況,小島嶼国における支援一般,太平洋環境共同体等島サミットを通じた大洋州諸国との協力を紹介した。約60名の参加者に対し,我が国が他の機関と協力しつつ実施している取組について包括的な説明を行い,我が国の立場への理解を深めることに役立った。
- (3)ステークホルダーとの対話
会合期間中,日本のNGO,国際NGO,産業界と幅広く意見交換を行った。
- (4)記者会見
会合期間中,海外の記者や邦人の記者に対し記者会見を行い,交渉の状況や我が国の立場等について説明した。