
国連気候変動枠組条約に関する特別作業部会等 結果概要
平成23年6月17日
6月6日~17日,ドイツ・ボンにおいて,国連気候変動枠組条約(UNFCCC)及び京都議定書(KP)の下の特別作業部会(AWG)及び補助機関会合(SB)が行われたところ,概要は以下のとおり。本会合は,2013年以降の気候変動の国際枠組みについて議論する本年2回目の公式な国連交渉であった。我が国から,外務・文部科学・農林水産・経済産業・国土交通・環境各省関係者が出席した。
本会合では,本年末に南ア・ダーバンで開催される第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17)に向けて,昨年末に採択されたカンクン合意に基づく成果を得るために,さまざまな分野における議論や技術的作業を進めることが求められていた。しかし,会合前半は補助機関会合の議題の採択に多くの時間を費やしたことにより,特別作業部会も含めた交渉全体が大幅に遅れ,実質的な議論や作業が必ずしも十分に行われず会合が終了した。
我が国は,カンクン合意に基づき,全ての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みを構築する新しい一つの包括的な法的文書の早急な採択という最終目標を目指し,精力的に交渉に参加した。その一方で,会合期間中のさまざまな場で行われたCOP17の成果に関する議論では,途上国が京都議定書第二約束期間への合意の必要性を声高に主張したが,我が国は,第二約束期間には賛同できないとの立場を明確に述べた。
交渉と並行して,我が国は,二国間・多国間の会談等を通じて,我が国の立場への各国からの理解,将来の枠組みについての共通理解を得られるよう努めた。また,各種イベント等において,脆弱国を始めとする途上国への支援や我が国の取組について説明を行った。
1.気候変動枠組条約作業部会(AWG-LCA)
- (1) 気候変動枠組条約作業部会では,共有のビジョン,先進国・途上国の緩和(排出削減)の約束・行動及びその透明性の確保,セクター別アプローチ(農業・国際バンカー油),REDD+(途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減等),市場メカニズム,対応措置(排出削減措置による悪影響への対処),適応(気候変動の悪影響への対策),資金支援の在り方,技術移転,長期目標及び条約の目的達成に向けた進展のレビュー,本作業部会の成果の法的形式等に関する非公式協議がそれぞれ開かれた。
技術移転,適応,資金やセクター別アプローチ(農業・国際バンカー油)等,具体的な議論が前進した議題もあったが,共有のビジョンや対応措置では,カンクン合意を基礎として,論点を絞って効率的に協議すべきと主張する先進国と,バリ行動計画の全ての論点を等しく扱うことを求める途上国が対立し,議論は平行線をたどった。また,緩和及びその透明性の確保の議論について,その方策の議論が開始されたものの,議論の進め方を巡り先進国と途上国が厳しく対立し,必要な技術的議論に十分な時間が割かれず,実質的な進展がほとんどないまま次回会合に持ち越されることになった。
2.京都議定書作業部会(AWG-KP)
- (1) 京都議定書作業部会では,2012年末の第一約束期間終了後,排出削減約束の空白期間(ギャップ)が生じないよう第二約束期間の設定の政治的判断を求める途上国と,一部の先進国のみに排出削減義務を課す現状の枠組みの固定化につながるため第二約束期間の設定に賛同できない,又は新たな枠組みの構築等が第二約束期間への参加の条件であると主張する先進国の間で,対立が続いた。
- (2) このような状況で,先進国の第二約束期間に参加する意思の有無や条件の明確化等の政治的判断に関する議論を継続しつつも,京都議定書改正案・先進国の削減目標,森林等吸収源,市場メカニズム,対象ガス等の技術的論点に関する議論を並行して行うこととなり,それらの技術的議論を経て整理,短縮化された新たなテキストが提示された。
3.補助機関会合(SB)
- (1) 年に2回開催される,実施に関する補助機関(SBI)及び科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)の会合では,国別報告書,資金メカニズム,適応・損失,技術,キャパシティ・ビルディング,REDD+,対応措置等に関する議論を行い,その結果が結論文書にまとめられた。
- (2) 会合の前半では,議論を行う場の整理や議題の名称といった会合の様式について一部の途上国が反発を続けたことから,会合の議題を採択するのに時間を費やし,実質的な議論が開始されたのは会合中盤からであった。
- (3) 2012~13年度事務局予算をめぐり,一時交渉は難航したが,最終的には前2ヵ年比8.99%増(当初予算案は16.20%増)の予算案が採択されるとともに,事務局は一層の効率性改善に努めることとなった。
4.我が国の立場に関する説明等
- (1)二国間・多国間の会談
会合期間中,米国,カナダ,ニュージーランド,ポーランド,韓国,メキシコ,グレナダ,南ア,インド,ベトナム,ラオス,カンボジア,フィゲレスUNFCCC事務局長と二国間会談を行い,交渉の状況,COP17の成果,次期枠組みの在り方等について意見交換を行った。また,小島嶼国,アフリカの主要国と懇談し,突っ込んだ意見交換を行ったほか,アフリカの全ての国が集まる定期会合に参加し,我が国の立場を丁寧に説明するとともに,COP17の成功に向け協力していくことを確認した。このほか,世界銀行,UNDP,セネガル等と,「アフリカ低炭素成長・持続可能な開発戦略に関する関係者会合」を開催した。
- (2)サイドイベントにおける日本の脆弱国支援の説明
世界銀行,UNDP,セネガルからの関係者の参加を得てサイドイベントを開催した。我が国からは,短期資金支援実施状況や,TICAD閣僚級フォローアップ会合,アフリカ適応プログラム,アフリカにおける低炭素成長に向けた官民協力の在り方といったアフリカとの協力,太平洋環境共同体等島サミットを通じた大洋州諸国との協力を紹介した。約80名の参加者に対し,我が国が他の機関と協力しつつ実施している取組について包括的な説明を行い,我が国の立場への理解につながった。
- (3)脆弱国を対象としたレセプション
アフリカ諸国,小島嶼開発途上国(SIDS),及び後発開発途上国(LDCs)の交渉担当者を招いたレセプションを開催し,40名を超える参加者と意見交換を行った。短期資金支援を含む我が国の気候変動政策について各国の理解を深める機会となった。
- (4)ステークホルダーとの対話
会合期間中,邦人NGO,国際NGO,産業界及び労働界と幅広く意見交換を行った。
- (5)記者への説明
会合期間中,海外の記者や邦人の記者に対し記者会見等を行い,交渉の状況や我が国の立場等について説明した。
5.COP17までのプロセス
COP17に向けた今後の日程について,9月末から10月初旬を目途に追加の作業部会が開催されることとなった(場所は追って決定)。また,南アフリカが閣僚級会合を含む非公式会合の日程(※)の一部を明らかにした。
- ※
- 7月3~4日 気候変動に関する閣僚級会合(ドイツ)
- 9月前半気候変動に関する閣僚級会合(未定)
- 10月後半 COP17閣僚級準備会合 等