8月30日~9月5日,タイ・バンコクにおいて,国連気候変動枠組条約の下の「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」,「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)」及び「京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)」が行われたところ,概要は以下のとおり。我が国から,外務・経済産業・環境・農林水産・国土交通各省関係者等が出席した。
本会合は,5月にボンで開催された会合に続く本年2回目の国連交渉であり,3つの特別作業部会が並行して開催された。前回の会合で議題の採択と議長の選出を行ったADPでは,2020年以降の将来枠組みのビジョン及び野心の向上の2つのテーマについて「ラウンドテーブル」の形で各国が自由に意見交換を行った。AWG-LCA及びAWG-KPでは,前回の会合に引き続き,本年末のCOP18でこれらの作業部会を終了させることを念頭に議論が進められた。
我が国は,(1)ADPの作業計画を策定し,来年以降のADPにおける交渉の段取りについて認識を共有すること,(2)AWG-LCA及びAWG-KPの既存の2つの作業部会を終了させることの2点を達成することにより,「2015年の新しい法的枠組みに関する合意に向け,交渉の基礎的なアレンジメントを整えた」との明確なメッセージを世界に発信することが本年COP18において目指すべき最大の成果であるとの共通認識を各国間で形成することを目指して交渉に参加した。
交渉と並行して,我が国は,二国間・多国間の会談等を通じて,COP18で目指すべき成果等について我が国の考えを各国に伝えるとともに,各国の立場について情報収集を行った。また,東アジアサミット(EAS)参加国との会合を開催して本年4月の東アジア低炭素成長パートナーシップ対話のフォローアップを行うとともに,我が国の提案する二国間オフセット・クレジット制度に関して複数の国と協議を行った。更に,小島嶼国及びアフリカの主要国と意見交換を行い,相互の立場や我が国の支援に関する率直な意見交換を行った。
より詳しい会合の概要以下のとおり。
1.強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)
- (1)将来枠組みのビジョン及び野心の向上の2つのテーマについて「ラウンドテーブル」の形式で,自由かつ率直な意見交換が行われた。将来枠組みのビジョンのセッションでは,将来枠組みのイメージや,全ての国への適用(applicable to all)や各国の事情(national circumstances),柔軟性(flexibility)といった概念をどのように将来枠組みに反映させていくかについて意見交換が行われた。野心の向上のセッションでは,国連内外の取組や国際協力イニシアティブの活用により,排出削減を促進させるための方策について意見交換が行われた。
- (2)我が国は,(1)ADPの作業計画を策定し,来年以降のADPにおける交渉の段取りについて認識を共有すること,(2)COP18の場で各国の首脳や有識者等を集めたワークショップや閣僚級ラウンドテーブルを開催し,将来枠組みに関する議論を深めるべきと主張した。
- (3)今回の「ラウンドテーブル」の結果は共同議長の責任で取りまとめられ,後日公表される予定。すべての国が,今回の意見交換が有意義であったとしており,COP18においても同様の形式での議論が継続される見込み。
2.条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)
- (1)昨年COP17のダーバン合意において今年具体的な作業を進めることとされている議題(共有のビジョン,先進国・途上国の緩和(排出削減)の約束・行動,セクター別アプローチ(ジェネラル・フレームワーク,国際航空・海運),REDD+(途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減等),新たな市場メカニズム,長期目標のレビュー)については個別のグループ会合で議論が進められた。その他の議題(対応措置(排出削減措置による悪影響への対処),適応(気候変動の悪影響への対策),資金支援の在り方,技術移転,キャパシティ・ビルディング)については,全体会合の場で議論された。
- (2)我が国を含む先進国から,ダーバン合意で今年具体的な作業を進めるとされている分野の議論に集中すべきであり,まずどの分野でCOP18の成果文書を作成するかの合意を得た上で交渉テキストの議論を進めるべきと主張したが,結局,全ての議題について,これまでの議論の内容及びCOP18での合意に関する選択肢がまとめられたインフォーマル・ノートがAWG-LCA議長の責任において作成された。
- (3)COP17で開催が決定された5つのワークショップ(先進国の緩和目標,途上国の緩和行動(NAMA),新たな市場メカニズム(様々なアプローチ及び国連管理型アプローチ), REDD+(途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減等)実施のための資金オプション)が開催され,発表及び質疑が行われた結果,各議題に関する締約国間の理解が深まった。我が国は,途上国による適切な緩和行動(NAMA)及び新たな市場メカニズムのワークショップで発表を行った。特に,新たな市場メカニズムのワークショップでは,先進国・途上国双方の参加者から二国間オフセット・クレジット制度に関連する質問が寄せられた。
3.京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)
- (1)COP17での決定に基づき,COP18において京都議定書第二約束期間(CP2)を設定するための議定書改正に関する議論(CP2に参加する国の目標値(QELROs)の設定,第一約束期間(CP1)の余剰達成が生じた場合の繰り越し(キャリーオーバー),CP2の期間の長さ)が行われた。各論点について様々なオプションを整理した共同ファシリテーターのノンペーパーが作成されたが,結論を得るには至らず,引き続きCOP18で議論されることとなった。
- (2)また,CP1とCP2の法的ギャップを回避するための手段や,2013年以降の京都メカニズムの扱い(参加の適格性)等についても議論が行われ,COP18における決定のオプションを整理した副議長のノンペーパーが作成されたが,やはり結論を得るには至らず,引き続きCOP18で議論されることとなった。
4.我が国の立場に関する説明等
- (1)二国間・多国間の会談
会合期間中,ADP共同議長,AWG-KP議長,カタール(COP18議長国),米国,英国,豪州,NZ,スイス,グレナダ,モンゴル,カンボジア,バングラデシュ,ラオス,ケニア,エチオピアとの二国間会談等を行い,COP18で目指すべき成果,二国間オフセット・クレジット制度等について意見交換を行った。また,東アジアサミット(EAS)参加国と意見交換を行い東アジア低炭素成長パートナーシップ対話のフォローアップを行うとともに,引き続き東アジア地域の低炭素化に向けた連携を進めていくことを確認した。更に,小島嶼国及びアフリカの主要国と意見交換を行い,相互の立場や我が国の支援に関する率直な意見交換を行い,COP18の成功に向け協力していくことを確認した。
- (2)ステークホルダーとの対話
会合期間中,日本のNGO及び国際NGOと意見交換を行った。
- (3)プレスへの説明
会合期間中,邦人記者に対するブリーフを行った他,海外メディアによるインタビューに応じ,交渉の状況や我が国の立場について説明した。