地球環境

国連気候変動枠組条約に関する特別作業部会等 結果概要

平成23年4月8日

 4月3日~8日、タイ・バンコクにて、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)及び京都議定書(KP)の下の特別作業部会(AWG)等が行われたところ、概要以下のとおり。我が国から、南川環境事務次官、山田外務省国際協力局参事官ほか、外務・農林水産・経済産業・国土交通・環境各省関係者が出席した。

 今回のAWG会合は、昨年末にメキシコのカンクンで開催された第16回気候変動枠組条約締約国会議(COP16)後に初めて開催された、本年最初の公式な国連交渉であった。また、上記AWG会合に先立ち、先進国及び途上国の緩和(排出削減目標・行動)に関するワークショップ及び技術移転に関するワークショップが行われた。

 今回の会合では、本年末に南アで開催される第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17)に向け、本年前半にどのような作業を行うかを定めるための条約作業部会議題案に合意した。

 なお会合中、多くの国から、3月11日に発生した我が国の東日本大震災の犠牲者に対する弔意と連帯の意が表明された。

1 条約作業部会(AWG-LCA)

  1. (1)条約作業部会は、今次会合及び6月にドイツ・ボンで開催される同作業部会の議題案をめぐる議論に終始した。
  2. (2)先進国は、条約作業部会の議長が会合に先立って提示した議題案をもとに、COP16で採択された「カンクン合意」に定められた作業項目を、早急かつ着実に実施していくための議題を設定しようと試みたが、これに対し途上国は、「カンクン合意」ではなく、2007年のCOP13で採択された「バリ行動計画」に基づいた議論の再開を意図するような議題案に固執した。これらの対立する議題案をまとめるべく、先進国は折衷案を提示する等の努力を行ったものの、一部の途上国が強硬な態度をとったため、交渉は難航した。この結果、最終日の夜になって、漸くカンクン合意の構造を維持しつつも、その個別の作業項目には言及しない議題案を採択した。
  3. (3)また、条約作業部会と並行して、透明性の確保(MRV(測定・報告・検証))、適応(気候変動の悪影響への対策)、資金支援のメカニズムの在り方、炭素市場、技術移転等に関する先進国を中心とした専門家会合が行われ、先進国間では実質的な議論が進められた。

2 議定書作業部会(AWG-KP)

  1. (1)議定書作業部会では同部会における今後の作業の進め方について議論が行われたが、途上国が、まず先進国が、全ての主要国の参加する包括的な枠組みの成立等を前提条件とせず、ダーバンにおいて京都議定書第二約束期間に合意するとの政治的意思を表明すべきであり、それまではメカニズム、LULUCF等の具体的ルールの検討をすべきでない旨主張した。このため、今後の進め方について合意が得られないまま、終了した。
  2. (2)我が国からは、第二約束期間に対する立場はCOP16で表明したとおりであり変更はない旨表明した。

3 緩和及び技術に関するワークショップ

(1)先進国の排出削減目標に関するワークショップ(4月3日)

 作業部会に先立ち行われたワークショップでは、米国、EU、英国、ドイツ、フランス、ロシア等を含む17のグループ・締約国が、主に自国の排出削減目標についてプレゼンテーションを行った。その後質疑応答を通じ、各国の目標の前提条件や目標の野心度の引き上げ等に関する意見交換が行われた。我が国からは、南川環境事務次官が、震災に対する世界各国からのお見舞いと支援に謝意を表するとともに、我が国は震災の被災者救済と復興に全力を注いでいるところであるが、気候変動に対して、なし得る努力は惜しまないことと、全ての主要国が参加する一つの公平かつ実効性ある国際枠組みの構築に向けて交渉に引き続き積極的に参加していく旨のステートメントを行った。

(2)途上国の排出削減行動に関するワークショップ(4月4日)

 中国、インド、ブラジル、韓国、メキシコ、南アフリカ、小島嶼国連合(AOSIS)等を含む12のグループ・締約国が、主に自国の温暖化対策に関するプレゼンテーションを行った。その後質疑応答を通じ、各国の政策をさらに促進する方法等について意見交換が行われた。

(3)技術移転に関するワークショップ(4月4~5日)

 日本、米国、EU、中国、インド等が、「カンクン合意」で設立された技術メカニズムの在り方、気候技術センター・ネットワークの役割、技術メカニズムと他のメカニズムとの関係等に関するプレゼンテーションを行った。我が国からは、気候技術センター・ネットワークのデザイン等について我が国の案を説明した。

4 二国間会談等

 会合期間中、米国、EU、フランス、南アフリカ(COP17議長国)、インドネシア、メキシコ(COP16議長国)、ニュージーランド、アフリカ主要国等との意見交換を行った。会談では、本年末に南アフリカで開催されるCOP17に向けた交渉の進め方について議論するとともに、我が国からは、気候変動交渉における我が国の立場や震災の影響等について説明を行った。また、米国やインドネシアとは、技術・資金・市場メカニズム・森林保全等のさまざまな分野における二国間協力の可能性についても意見交換を行った。

このページのトップへ戻る
気候変動枠組条約締約国会議(COP)、京都議定書締約国会合(COP/MOP)、補助機関会合(SB)、特別作業部会(AWG) 平成23年 | 目次へ戻る