地球環境

国連気候変動枠組条約に関する特別作業部会等 結果概要

平成22年10月9日


 10月4日~9日、中国・天津にて、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)及び京都議定書(KP)の下の特別作業部会(AWG)が行われたところ、概要以下のとおり。我が国から、坂場COP16担当大使他、外務・農林水産・経済産業・国土交通・環境各省関係者が出席した。

 今回のAWG会合は、メキシコのカンクンで開催される本年末の第16回気候変動枠組条約締約国会議(COP16)前に行われる最後の公式な国連交渉であった。今回の会合では、包括的な法的文書の作成に向けて、COP16でその基礎となる一連の決定を採択するための議論が行われた。各国ともカンクンでの「バランスのとれた」成果を求めたが、「バランス」の意味については、先進国と途上国の間で大きな差異があった。

 今回も交渉全体にわたり、途上国が、先進国側のみの義務を追求して、京都議定書第二約束期間の設定、高い排出削減目標や資金支援等を強く求める一方で、我が国を含む先進国が全ての主要排出国が参加する法的拘束力のある国際枠組みを目指して、途上国の緩和行動やその透明性の確保を求めるという対立構造には全く変化がみられなかった。

 また、作業部会と並行して我が国が共同議長を務めるREDD+パートナーシップの会合が開催され、2011~2012年の作業計画、NGO・先住民グループ等の利害関係者の参加ルールの議論が行われた。

1.条約作業部会(AWG-LCA)

  1. (1) 条約作業部会では、バリ行動計画の区分に沿って、共有のビジョン、先進国・途上国の緩和(排出削減)の約束・行動およびその透明性の確保、適応(気候変動の悪影響への対策)、資金支援のメカニズムの在り方、炭素市場、REDD+(途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減等)、対応措置、分野別アプローチ(農業・国際バンカー油)等に関するドラフティング会合がそれぞれ開かれた。
  2. (2) 先進国は、カンクンでのCOP決定に含みうる要素案を議長に示すこと等によって、前回会合で大部化したテキストから主要な論点を抽出し、COP決定案作成に向けた交渉が行われる方向に議論が向かうよう努めた。しかし、途上国側が義務を負わされることにつながるとして難色を示す緩和の会合では議論は平行線をたどり、共有のビジョンでは、大部化した交渉テキストを基にした文言交渉に終始した。一部の途上国は引き続き、先進国の「歴史的責任」を強調して先進国の義務のみを強化する文言等を挿入する一方で、コペンハーゲン合意を踏まえず、自国の行動の透明性を確保することに関連する部分には先進国の支援を前提とするような文言等を確保しようとする立場を主張した。このため、最終的に交渉テキストの多くの部分は収れんせず、いくつかの選択肢が併記されたり、括弧が付されたりしたまま、COP16に送られることとなった。
  3. (3) 一連のバランスのとれたCOP決定案の作成に向け、カンクンでの最終交渉での使用を念頭に置いた文書が作成された資金支援や技術、適応などの分野もあった。一方で、共有のビジョン、緩和のように内容面でも先進国と途上国の主張が大きく乖離、対立している分野もあり、分野によって進展具合に大きな差がある結果となった。

2.議定書作業部会(AWG-KP)

  1. (1) 2013年以降の京都議定書の第二約束期間のあり方について議論する本作業部会では、附属書I国の削減目標を中心に、森林等吸収源、柔軟性メカニズム、対象ガス等の方法論、議定書の改正に関する法的事項等についての議論を行ったが、吸収量の算定方式等について比較的議論が進んでいる森林等吸収源を除き、全体的に議論はほとんど進展しなかった。
  2. (2) 法的事項の議論では、途上国が議定書の改正について、先進国の排出削減目標の強化以外の内容を議論することはAWG-KPのマンデート外であると主張して、作業の進め方自体で議論が紛糾して多くの時間を費やしたため、実質的な議論はほとんど進まず、意見の収れんは見られなかった。
  3. (3) 会合最終日には、議論の進展した部分を反映した新たな議長テキストが配布された。

3.REDD+パートナーシップ

 10月2日にワークショップを開催した他、3日から9日にかけてパートナーシップ会合を計5回開催し、2011~2012年の作業計画、10月26日に名古屋で開催する森林保全と気候変動に関する閣僚級会合におけるあり得べき成果等について議論を行った。2011~2012年の作業計画については、盛り込むべき要素についての具体的な検討が行われ、名古屋での閣僚級会合までに方向性をまとめることとなった。このほか、NGO・先住民グループ等の利害関係者がパートナーシップのプロセスに参加するためのルールが策定された。

4.二国間会談等

 会合期間中、カナダ、小島嶼国連合(AOSIS)、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、豪州、英国、サンガウェ条約作業部会議長、フィゲレスUNFCCC事務局長等との意見交換を行った。

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気候変動枠組条約締約国会議(COP)、京都議定書締約国会合(COP/MOP)、補助機関会合(SB)、特別作業部会(AWG) 平成22年 | 目次へ戻る