地球環境

国連気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)
京都議定書第8回締約国会合(CMP8)等の概要と評価

平成24年12月8日

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1 全体の概要と評価

(1)11月26日から12月8日まで,カタール・ドーハにおいて,国連気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18),京都議定書第8回締約国会合(CMP8)等が行われた。我が国からは,長浜環境大臣及び外務・経済産業・環境・財務・文部科学・農林水産・国土交通各省関係者が出席した。

(2)「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」,「京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)」,「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)」及び2つの補助機関会合における事務レベルの交渉を経て,12月5~7日のハイレベル・セグメントにおいて閣僚間でさらに協議を重ねた結果,最終的に以下の一連のCOP及びCMPの決定が「ドーハ気候ゲートウェイ」として採択され,またその他の議題についてもCOP及びCMPの決定等が採択された。

  1. (ア)ADPの作業計画を含むCOP決定
  2. (イ)京都議定書改正案の採択等に関するCMP決定
  3. (ウ)AWG-LCAに基づく合意された成果に関するCOP決定
  4. (エ)気候資金に関する一連のCOP決定
  5. (オ)気候変動による損失と被害(ロス&ダメージ)に関するCOP決定

(3)これにより,AWG-KP及びAWG-LCAはその作業を完了して終了し,来年以降のADPにおける交渉の段取りに合意した(以下3参照)。この結果,「2020年以降の新しい法的枠組みに関する2015年までの合意に向け交渉の基礎的アレンジメントを整えた」とのメッセージを示すという我が国政府代表団の目標を達成することができた。

2 日本政府の対応

(1)日本政府は,昨年COP17のダーバン決定で決まった,2020年以降の新たな法的枠組みに関する2015年までの合意に向け,「交渉の基礎的なアレンジメントを整えた」との明確なメッセージを世界に示すことを目指し,(1)ADPに関する来年以降の交渉の段取りについて各国が認識を共有することと,(2)AWG-KP及びAWG-LCAの作業を完了して両作業部会を終了させることを目指して対応した。

(2)ハイレベル・セグメントでの長浜環境大臣による演説等において,上記の我が国の交渉に対する立場を主張するとともに,我が国国内の温暖化対策の取組及び二国間オフセット・クレジット制度の構築等国際的な取組と貢献について説明した。特に,我が国が約束した本年末までの約3年間に官民合わせて150億ドルの資金プレッジについては,本年10月末時点で約174億ドルを達成したことを発表した。これにより,先進国全体の短期資金(2010~2012年までの3年間に先進国全体で途上国に対し300億ドルをプレッジ。供与実績は336億ドル。)のうち約40%(133億ドル)を日本が実施したことになる。

(3)長浜環境大臣は,会合期間中に各国と精力的に二国間会談を行い,本会合の成果に関する日本の立場や考えを説明し理解を求めると共に,会合の成功に向けた連携を確認した。 また,モンゴルとの間で「環境協力・気候変動・二国間オフセット・クレジット制度に関する共同声明」に署名し,来年の早い時期に同制度を開始すること,そのためにできるだけ早期に二国間文書に一致することを確認したほか,バングラデシュとの協議においても,実質的な内容に一致した。

3 今次会合の成果

(1)今次会合では,(1)新たな国際枠組みの構築等に向けたADPの作業に関する決定,(2)京都議定書改正とそれに伴うAWG-KPの終了,(3)条約の下での長期的協力に関する決定とそれに伴うAWG-LCAの終了,(4)資金に関する決定及び(5)気候変動による損失と被害(ロス&ダメージ)に関するCOP決定という5つの大きな成果があった。

(2)ADPに関しては,来年以降の作業計画及び議長アレンジメントが決定された。来年はADPを2回開催し,4月と9月の追加会合の可能性を検討すること,2014年及び2015年についても少なくとも2回の会合を開催することとし,具体的には前年中に決定すること,来年は2つのワークストリーム(「2020年以降の将来枠組み」及び「2020年までの緩和の野心向上)において,各国から提出される意見を基にラウンドテーブルやワークショップを開催し,より焦点を絞った実質的な議論に移行すること等が決定された。また,2015年5月までに交渉テキストを準備することを目指して,2014年末のCOP20に向けて交渉テキストの要素について検討を進めることが決定され,来年以降の交渉の段取りが明らかになった。

(3)第二約束期間設定のための京都議定書の改正については,同期間中の各国の排出抑制及び削減に関する約束が記載された附属書Bを含む改正案が成果文書として採択された。第二約束期間の長さを8年とし,2014年までに各国の約束の野心の引き上げに関する検討の機会を設けること等が決定された。これにより,AWG-KPはその作業を完了し,終了することとなった。

 第二約束期間に参加しないという我が国の立場は,改正された附属書Bに反映された。また,日本政府は,EU,豪州,スイス等とともに,第一約束期間から繰り越された余剰排出枠(AAU)を購入しないことを宣言した。

 クリーン開発メカニズム(CDM)については,第二約束期間に参加しない国もCDMプロジェクトに参加して2013年以降のCDMクレジット(CER)を原始取得(自国に転送)することが可能であることが確認された。ただし,第二約束期間における共同実施(同6条)や国際排出量取引(議定書17条)に参加してクレジットの国際的な獲得・移転を行うことは,第二約束期間に参加する国のみに認められることとなった(なお,第一約束期間の調整期間中(2013年から2015年後半以降まで)の我が国の国際排出量取引への参加は引き続き可能)。また,京都議定書における森林・農地等吸収源等(LULUCF)の取り扱いについては,第二約束期間に参加しない国も含め第二約束期間におけるルールにしたがって算定・報告を行うこととなった。

(4)条約の下での長期的協力については,昨年のダーバン決定で立ち上げられた新たな組織やプロセスを実施に移すための,バリ行動計画の全ての議題に関する一連の決定が採択されたことにより,AWG-LCAが多くの成果を上げ「合意された成果」を得たことが確認され,同作業部会は作業を終了した。一部の議題については,今後補助機関等で技術的な検討・作業を継続することとなった。

 また,日本が提案している二国間オフセット・クレジット制度(JCM /BOCM)を含む様々なアプローチについては,実施のための「枠組み」について作業計画を実行していくことが決定され,「枠組み」の機能や役割,国際的なクレジットの移動に関してダブルカウントを防止する方法等を検討していくこととなった。また,カンクン合意に基づき先進国が今後2年おきに提出する隔年報告書に関して,JCM/BOCMなど市場メカニズムの活用に関する報告事項を含む共通報告様式について合意された。

(5)資金については,先進国全体としての短期資金コミットメント達成の認知,長期資金に関する作業計画の2013年までの延長,COP19の際の長期資金に関するハイレベル閣僚級対話の開催,フォーラムの編成を含む常設委員会の2013~2015年の作業計画の承認,緑の気候基金(GCF)のホスト国承認(韓国)等の決定が採択された。今後数年間の先進国による義務的な支援額を具体的数字で書き込むことは回避された。なお,先進国全体に対して少なくとも短期資金の年平均の資金を2013年から2015年まで達成するために一層努力することを奨励することとなった。また,先進国全てに対して,2020年までに年間1000億ドルの気候資金を動員するとの共通の目標に向けて,多様な資金源からの資金(動員)の拡大を求めるとともに,これに関する戦略がアプローチについての情報を先進国がCOP19までに提出することを招請し,長期資金に関する検討作業を1年間延長することとなった。

(6)気候変動による損失と被害(ロス&ダメージ)に関しては,COP19において,気候変動の影響に脆弱な国における被害を軽減に取り組むための世界的なメカニズムなどの制度を設立することとなった。

(7)なお,次回のCOP19はポーランドが議長国を務め,ワルシャワで開催されることとなった。


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