
COP17における内外プレス記者会見
平成23年12月7日
12月7日,堀江地球環境問題担当大使が内外プレスに対し記者会見を行ったところ,概要以下のとおり。山田国際協力局審議官,関経済産業省審議官及び梶原環境省審議官が同席。内外プレス約30人が参加。
冒頭,細野環境大臣のハイレベルセグメントでのステートメントのポイントを詳細に説明するとともに,アフリカ低炭素成長戦略についてもポイントを説明し,こうした我が国の努力こそが気候変動に立ち向かおうとする開発途上国をサポートすることになる旨説明した。
細野大臣がステートメントで触れた点であるが,我が国は今年の夏,東京を含めた東日本地域で15%もの節電に成功した。エピソードとして説明させて頂くと,これは日本の国民の努力のたまものであり,環境に対する意識の高さが表れたものである。我が国においては資源を無駄遣いしないものの考え方がかなり浸透しており,3R(Reduce,Reuse,Recycle)と呼ばれる取り組みが行われてきた。
しかしながら,大震災による被害は甚大であり,日本国民は,これまで以上に家庭においていっそうの節電に励み,職場においても,例えば日中は窓から差し込む太陽光を利用して職務に励み,クーラーの温度も高めに設定し,廊下の照明も落とす等の努力を行った。また,公共のスペースにおいても,照明を落とすのみならず,エレベーターやエスカレーターも可能なものについては停止させ,また,工場などにおいても,従業員に土日に働き週日に代休を取らせることによって,電力使用量を平準化させる努力を行うことなどによって,この15%を達成したものである。
こうした日本国民とともに,日本政府としては,東日本の復興のため,最大限の努力を行っているが,細野大臣がステートメントで明確に述べたとおり,このような厳しい困難にあっても,日本国民は気候変動問題に積極的に取り組んでおり,世界に貢献する意欲を失っていないことを強調したい。
- (質問)細野大臣のステートメントの中で提案している「新しい作業部会(New Working Group)」の立ち上げによって日本は何を目指すのか。
- (回答)細野大臣は,新たな法的枠組みを構築し,全ての主要国が加わった公平で実効性のあるものとすることが不可欠であることを強調し,そのために,新しい枠組みの議論の場として,ダーバンで新たな作業部会を設立することを提案した訳であるが,これは,米・中・印を始めとする主要排出国が参加できる新しい枠組みの内容を議論するための作業部会を一日も早く立ち上げることを目指してのものである。
- (質問)京都議定書(KP)は日本で採択され,日本が早期に批准したものであるのに,なぜ日本はKPを殺すのか。
- (回答)これまで同じ趣旨の質問を何度も頂いているが,日本としては,KPから脱退することも考えていなければ,KPを殺すつもりも全くない。細野大臣が強調されているように,KPは気候変動に対処すべく最初に規定されたものであり,大きな意義を持ったものであるが,その後の世界の経済や社会の急速な変化に対応しておらず,今やKPは世界の排出量の4分の1しかカバーしていない。そうした状況下にあって,第二約束期間に参加することは将来の包括的な枠組みの構築には資さないことから,我が国は参加しない旨を表明したわけであるが,我が国は,今後ともKPの締約国で有り続けることを明確にしたい。KPにはいくつかの良い要素もあり,例えば,クリーン開発メカニズム(CDM)は改善する必要はあるものの,CDMは排出削減に資するのみならず,途上国への資金なり技術移転なりをもたらすものであり,途上国の持続可能な発展にも大いに資するものであり,可能な限り多くの国々に活用されて然るべきものと考える。我が国としては,こうしたKPのルールをさらに有効なものにしていく努力を今後とも継続していくつもりであり,CDMも活用していく考えである。
- (質問)KPの次の枠組みについての交渉の見通し如何。
- (回答)我が国の提案については,UG(アンブレラ・グループ,日本・米国・豪州・カナダ・ニュージーランド・ロシア等からなる先進国の交渉グループ)なり,その他の国々とも二国間ないし多国間での根回しを行っており,南アがとりまとめたINDABA(非公式コンサルテーション)における議論をまとめた「Big Picture」においても将来の枠組みに関するオプションがいくつか提示されている。我が国としては,今後とも,新しい枠組みを議論する作業部会が早期に立ち上がるよう,引き続き外交努力を行ってく所存である。
- (質問)緑の気候基金についてCOP17でまとまると考えるか。
- (回答)我が国としてはカンクン合意の実施がきわめて重要であると考えているところ,その中でも緑の気候基金(GCF)は極めて重要な部分であり,COP17の重要な成果となるものと認識している。昨日も専門家グループで8時間以上も議論したと聞いているが,多くの論点を詰めているところであり,我が国としては,GCFがCOP17の成果となるよう引き続き努力を続きていきたい。
- (質問)日本は二国間クレジットメカニズム(BOCM)でクレジットをどのくらい得られると考えているのか。
- (回答)先週発表した日本のビジョンにあるとおり,日本は,技術革新及び技術移転が将来の世界を低炭素に導き,世界の排出削減に大いに貢献するベースになると考えている。我が国が考えているBOCMは,CDMを補完するものとして検討しているところである。CDMはその審査プロセスに極めて長い時間を要したり,排出削減に資するプロジェクトであるにもかかわらず,最終的にはCDMに結びつかないケースが多く見られる,こうしたことから,BOCMは,温室効果ガス(GHG)の排出削減に結びつくプロジェクトにクレジットを認めていこうとするものであり,世界全体のGHG削減に貢献するものである。現在インドネシア・ベトナム・インド等と協議しているところであり,多くの実地調査(FS)を実施中である。BOCMは,新しい市場メカニズムであり,先進国にとっても途上国にとっても有益なものであるので,こうしたメカニズムが可能な限り多くの国に認められるものとなるよう努力していきたい。
- (質問)日本とEUの立場は非常に近いように見えるが,なぜEUのロードマップに賛同して日EUロードマップとして打ち出さないのか。
- (回答)将来の法的枠組みが必要という目的はEUと共有しているが,その道筋には違いがあるかも知れない。ポイントとしては,包括的な枠組みにしていくために,他の国も巻き込んでいく必要がある。特に,主要排出国を巻き込んでいくことが不可欠であり,そのためには,これらの国々との間で,議論することが必要であり,日本が新しい作業部会の立ち上げを提案したのもそのためである。
- (質問)日本は第二約束期間に参加しないと言っているが,その代わりにどのようなコミットメントをするのか。その点が曖昧だから日本がKPを殺そうとしているなどと言われるのではないのか。
- (回答)日本は2013年以降も緩和努力を続けていくよう他の国に呼びかけている。カンクン合意は世界の排出量の80%をカバーしており,途上国も先進国も一緒に緩和に取り組むことが重要である。細野大臣のステートメントの第三の柱で主張しているのはまさにこの点である。