地球環境

国連気候変動枠組条約に関する特別作業部会等 結果概要

平成22年8月6日
日本政府代表団


 8月2日~6日、ドイツ・ボンにて、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)及び京都議定書(KP)の下の特別作業部会(AWG)が行われたところ、概要以下のとおり。我が国から、古屋地球環境問題担当大使他、外務・農林水産・経済産業・国土交通・環境各省関係者が出席した。

 今次AWG会合は、4月会合、6月会合に引き続き本年3回目の、2013年以降の気候変動の国際枠組みを中心に議論する公式な国連交渉である。条約作業部会では前回同様、本年末の第16回気候変動枠組条約締約国会議(COP16)での成果に向けて議長テキスト第二版が会合前に回付され、その修文作業を通じて交渉が行われたが、各国からの修文案が相次ぎ、議論の収斂は見られず、議長テキストは大部化した。一方、議定書作業部会においては、各国から提出された意見等を踏まえ、議長から新たなテキストが配布された。

 今回も交渉全体にわたり、途上国が、先進国に対してCOP16における京都議定書第二約束期間の決定、排出削減目標の大幅な引上げや資金支援の増大等を強く求めつつも、途上国自身の緩和行動の透明性確保(MRV)等に抵抗する一方、我が国を含む先進国が、全ての主要排出国が義務を負う国際枠組みを目指して、途上国の緩和行動やその透明性の確保を求めるという対立構造には全く変化がみられなかった。

 また、作業部会と並行して行われた我が国が共同議長を務めるREDD+パートナーシップ(REDD+:途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減等)では、2010年までの作業計画及び2011~2012年の作業の要素案及び作業計画策定の行程表が合意された。


1.条約作業部会(AWG-LCA)

(1)条約作業部会では、共有のビジョン、先進国・途上国の約束・行動および透明性の確保、適応、資金メカニズムの在り方、炭素市場、REDD+、セクター別アプローチ(国際航空・海運、農業)、対応措置等に関する協議グループがそれぞれ開かれ、議長テキストを基礎とした議論が進められた。ほとんどの協議グループでは、議長テキストについて各国がそれぞれの立場について発言し、修文案をテキストに反映していく作業を行った。

(2)会合前に発表された議長テキストは、もともと昨年首脳間で合意に至ったコペンハーゲン合意(CA)を踏まえた記述と、それに相反する記述が混在するものであった。途上国の中にはCAは正式に採択された文書ではないと主張してCAに関連する記述を全て拒否する態度で臨んだ国もなおあった。また、今次交渉では、すべての会合参加国・地域が自由に案文の修文を提案する形式で議論が進められ、交渉終了時点での各国の主張を併記する案文は、CAを具現化しようとする先進国とCAとは別の考え方に立つ文言を反映させようとする多くの途上国との双方の主張を含む膨大なものとなった。

(3)COP16の議長国であるメキシコの主導により、本交渉の成果文書の法的性質に関する非公式協議が行われ、COP16での成果および2013年以降の気候変動の国際枠組みの在り方について、自由な意見交換が行われた。


2.議定書作業部会(AWG-KP)

(1)2013年以降の京都議定書の第二約束期間のあり方について議論する本作業部会では、附属書 I 国の削減目標(削減目標の水準、約束期間の数・長さ、基準年等)を中心に、森林等吸収源、柔軟性メカニズム、対象ガス、京都議定書の約束期間の間の空白期間(ギャップ)がもたらす法的影響等についての議論を行った。途上国は、先進国の「歴史的責任」を根拠に、CAに基づいて附属書I国が表明した排出削減約束は全く不十分であり、目標を大幅に引き上げるべき(90年比40~50%減等)、目標達成にあたっての手段(森林吸収源、メカニズム等)の利用を制限もしくは禁止すべき等の主張を展開した。

(2)附属書 I 国の排出削減目標等に関するワークショップが開催され、各附属書I国が掲げる排出削減約束の水準をいかに評価するか、透明性をいかに高めるか等のテーマについて、様々なプレゼンテーション、意見交換が行われた。

(3)会合最終日には、議論の進展や各国の意見を踏まえた議長による新たなテキストが配布された。


3.REDD+パートナーシップ

 今回の特別作業部会会期中にREDD+パートナーシップの取組(2012年までのREDD+の取組を強化するべく国際社会の協調・連携を図るために本年5月に設立。)を具体化するため、作業部会が開催された(我が国とパプアニューギニアが本年末までの共同議長。)。作業部会は3回開催され、2010年までの作業計画及び2011~2012年の作業の要素案及び作業計画策定の行程表を策定、合意した。その後、NGO・先住民族グループ等の利害関係者を含めた全体会合を開催して、作業部会で合意した作業計画を説明するとともに、意見交換を行った。


4.その他

(1)二国間会談等
 会合期間中、米国、欧州連合、ニュージーランド、ロシア、韓国、メキシコ、グレナダ、ウクライナ、南アフリカ、ASEAN諸国、パプアニューギニア、フィゲレスUNFCCC事務局長等との意見交換を行った。

(2)途上国を対象としたレセプション
3日、途上国の交渉担当者や事務局関係者を招いたレセプションを実施し、条約作業部会議長やフィゲレス事務局長をはじめ80名を超える交渉担当者等と意見交換を行った。短期資金支援を含む我が国の気候変動政策について各国の理解を深める機会となった。

(3)MRVに関するサイドイベント
 3日、豪州等と共催で、MRVに関するサイドイベントを開催した。我が国がアジア諸国に対して行っている支援等を紹介するとともに、アジア各国の参加者から自国のMRVに関する取組みが紹介された。

(4)今後の予定
 次回のAWG会合は、10月4日から9日まで中国・天津で開催される予定。

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