平成22年6月11日
日本政府代表団
5月31日~6月11日、ドイツ・ボンにて、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)及び京都議定書(KP)の下の特別作業部会(AWG)及び補助機関(SB)会合が行われたところ、概要以下のとおり。我が国より、古屋地球環境問題担当大使他、外務・文部科学・農林水産・経済産業・国土交通・環境各省関係者が出席した。
今次AWG会合は、2013年以降の気候変動の国際枠組みを中心に議論する、本年2回目の公式な国連交渉であり、作業工程を話し合った4月の第1回会合に引き続き、本年初めて枠組みの内容に関する議論を行った。京都議定書第二約束期間の設定を強く求める声がある等、昨年のコペンハーゲン会合前同様の主張が多く聞かれたが、条約作業部会で議長から新たなテキストが提示される等、一定の進展も見られた。ただし、先進国の緩和目標、途上国の緩和行動に関する情報を集積するとの結論文書については、途上国の反対により合意できず、新テキストも途上国から強い反発が示された。
(1)条約作業部会では、会合前に示された議長テキストに基づいて議論がなされたが、コペンハーゲン合意に消極的な国がいる中で、その成果をどの程度交渉に反映していけるかが焦点の一つとなった。共有のビジョン、先進国・途上国の約束・行動及び透明性の確保、支援の透明性の確保、適応、炭素市場等について、各国が各議題について予め用意された質問に沿って発言する形で会合が進められた。また資金・技術・適応・炭素市場については非公式協議が行われた。
今次会合における議論の結果を踏まえ、最終日前夜、議長側から各国の意見を考慮した新たなテキストが提示されたが、今次会合では詳細に議論する時間はなく、議論自体は次回会合に持ち越された。ただし、新たなテキストに関する各国の取りあえずのコメントにおいて、種々の問題が残っているとの指摘があり、特に途上国グループから新たなテキストに対して否定的な声があがった。
(2)条約作業部会における論点として、先進国・途上国の行動・支援の透明性の確保のあり方、先進国による途上国への資金支援のあり方等にとりわけ焦点が当たった。
(ア)先進国・途上国の行動・支援の透明性の確保は、コペンハーゲン合意の成果の一つであり、それらをどの程度テキストに具体化していくかが論点であった。我が国・米国・豪州・ニュージーランド(NZ)・カナダ・ロシア等の先進国(アンブレラ・グループ)は、現在ある排出量の目録及び具体的な政策・措置等を含む国別報告書のさらなる活用を行って透明性を高めるべきであると主張した。具体的には、包括的な国別報告書の提出頻度等については先進国・途上国の差異は設けつつも、緩和に関する重要な情報を盛り込んだ報告書については先進国・途上国とも2年ごとに提出とすること(先進国は目録を毎年提出)、途上国について、その行動は国際的な協議・分析にかけること、支援を受けた行動は国際的な測定・報告・検証(MRV)の対象となること等について、共同の具体的提案を行った。これらの提案は議長の新テキストにも相当程度反映されている。
(イ)資金については、非公式協議が最も多く行われ、組織のあり方等の議論が行われた。資金の流れを調整し検証するために新たな行政組織を設立することを求める途上国に対し、我が国は米国・豪州・カナダとともに、既存の組織を活かして、簡素な組織により可能な限り効率的かつ迅速な支援の実施を目指すこと、昨年秋に提案しコペンハーゲンで合意された緑の基金の早期設立を主張した。また、会合期間中、EUは毎年24億ユーロの支援を行うとの短期資金に関するプレゼンテーションを実施した。我が国・米国・豪州・カナダ・NZ・ノルウェーは、各国の資金支援の金額等具体的支援策を全体会合の場で説明した。
2013年以降の京都議定書の第二約束期間のあり方について議論する本作業部会では、附属書I国の削減目標を中心に、森林等吸収源、柔軟性メカニズム、対象ガス等についての議論を行った。この結果、次回会合にて、附属書I国の削減目標等に係るワークショップを開催すること、京都議定書の約束期間の間の空白期間(ギャップ)がもたらす法的影響の分析を事務局に行わせること等を内容とする結論文書が採択された。
(1)年に2回開催される、実施に関する補助機関(SBI)及び科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)の会合では、国別報告書、資金支援メカニズムのレビュー、適応、技術、キャパシティ・ビルディング、国際航空・海運からの排出、研究・組織的観測、農業等に関する議論を実施した。国別報告書(上記1(2)(ア)参照)等、多くのテーマはAWGの内容と重複するものであり、議論の場の整理の必要性や、交渉の結果を予断しないようAWGの議論の結論を待つべきとの声も聞かれた。
(2)COP16に向けた今後の日程について、中国より秋のAWGを主催したいとの意思が表明され、各国ともこれを歓迎した(日程等未確定。なお、次回AWG会合は8月2日~6日にドイツ・ボンで開催される。)。
(1)二国間会談等
会合期間中、米国、カナダ、EU、英国、フランス、NZ、ロシア、韓国、メキシコ、中国、インド、インドネシア、グレナダ、イエメン、コロンビア、エクアドル、コンゴ盆地諸国、ALBA諸国(ボリビア、ベネズエラ、ニカラグア、キューバ等)、条約作業部会議長、フィゲレス次期UNFCCC事務局長、NGO、ビジネス関係者等との意見交換を行った。
(2)サイドイベント
6月2日、我が国が主催し、地球シミュレータを用いた気候変動予測研究及びREDD+(途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減等)に関するサイドイベントを実施した。5月にノルウェー・オスロで立ち上がったREDD+パートナーシップ及び10月に我が国で開催する森林保全と気候変動に関する閣僚級会合につき、パートナーシップの共同議長国である日本及びパプアニューギニア、次期共同議長国であるフランス及びブラジル、並びにノルウェーによる説明等が行われた。
(3)途上国を対象としたレセプション
6月7日、途上国の交渉官や事務局関係者を招いたレセプションを実施し、フィゲレス次期事務局長やアッシュAWG-KP議長等の参加を得た。短期資金支援を含む我が国の気候変動政策について各国の理解を深める機会となった。