ODAと地球規模の課題
ストックホルム条約
(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約:
Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants (POPs))
令和5年11月30日
1 背景・作成の経緯
- (1)1992年6月の国連環境開発会議(UNCED、地球環境サミット)で採択されたアジェンダ21の第17章では、海洋汚染の大きな原因となっている物質の一つとして「合成有機化合物」を挙げるとともに、この問題への国際的な取組みを開始するための政府間会合の開催を要請しており、これを受けて1993年の国連環境計画(UNEP)第17回管理理事会決定によって、「世界行動計画」の採択のための政府間会合を行うことが決定された。
- (2)1995年10月~11月、ワシントンにおいて米国国務省とUNEPの共催により、約100か国の政府代表団、国際機関、非政府機関等の代表が参加した政府間会合が開催され、環境問題に関する「世界行動計画」及び同計画への各国のコミットメントを示す「ワシントン宣言」が採択された。右宣言には、特に早急な対応が必要であると考えられる12の残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants:POPs)の減少に向けて、これらの物質の排出を規制するために法的拘束力のある国際的な枠組を確立することに向けて行動することが含まれている。
- (3)これを受けて、1997年2月の第19回UNEP管理理事会において、POPsの規制について1998年から法制化に向けた国際交渉を開始し2000年末までに結論を出すことが決定された。1998年6月から5回にわたってPOPsの規制に関する政府間交渉会議が開催され、2001年5月、ストックホルムで行われた外交会議において、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」が採択された。条約事務局はジュネーブのUNEP内に設置されている。
2 締結状況
2004年5月17日に発効。2023年11月現在、我が国を含む184か国及びEU、パレスチナが締結。
3 残留性有機汚染物質(POPs)について
- (1)POPsとは何か
- 毒性が強く、残留性、生物蓄積性、長距離にわたる環境における移動の可能性、人の健康又は環境への悪影響を有する化学物質のこと(ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDT等)。
- (2)規制の必要性
- POPsは、環境中に放出された際、偏西風やグラスホッパー現象(蒸発、凝結を繰り返し、徐々に極域へ移動する現象)等を通じて国境を移動するものと見られており、実際にPOPsの放出がなされていない地域である極域に生息するアザラシ等からもPOPsが検出されている。従って、POPsの国際規制を強化し、その環境への放出を防止することが必要である。
4 条約の主な内容
残留性有機汚染物質から人の健康と環境を保護することを目的とし、(1)附属書A掲載物質の製造・使用、輸出入の禁止、(2)附属書B掲載物質の製造・使用・輸出入の制限、(3)非意図的に生成される附属書C掲載物質の削減等による廃棄物等の適正管理を定めている。
5 締約国会議
- (1)2005年5月、第1回締約国会議(COP1)が開催され(ウルグアイ)、締約国会議手続規則等法的事項、財政・予算事項、条約運営にかかる事項、補助機関(残留性有機汚染物質検討委員会:POPRC)の設置等が決定された。我が国は、POPRCアジア地域のメンバーとして選出された(任期4年)。
- (2)2006年5月、COP2が開催され(ジュネーブ)、多数国間環境条約のシナジーを促進する決議等が採択された他、世界モニタリング計画アドホック技術的作業部会の設立が決定された。
- (3)2007年5月、COP3が開催され(セネガル)、能力構築と技術移転を実施する地域センターの選定プロセスを決定した他、第1回有効性評価のための世界モニタリング実施計画、右実施計画のための地域グループ及び調整グループの設置が合意された。
- (4)2009年5月、COP4が開催され(ジュネーブ)、附属書に9種の化学物質を追加掲載する決定が採択された。第1回有効性評価が取りまとめられ、今後の有効性評価の手法を検討するワーキンググループ設置が決定された。また、地域センター8か所が選定された。我が国より、北野大(まさる)明治大学教授がPOPRCメンバーに再任された(任期2010年~2014年)。
- (5)2011年4月、COP5が開催され(ジュネーブ)、附属書にエンドスルファンを追加する決定が採択された。また、化学物質・廃棄物関連3条約(ストックホルム条約、ロッテルダム条約、バーゼル条約)の協力及び連携の促進(シナジー)の一環として、ジム・ウィリス3条約共同事務局長(当時)が就任したほか、3条約共通の条約実施プログラム、事務局機能の統合等、シナジー・プロセスの進展に関する決定が採択された。
- (6)2013年4月~5月、COP6が開催され(ジュネーブ)、新たに1種類の物質(ヘキサブロモシクロドデカン:HBCD)が同条約の附属書A(廃絶)に追加されることが決定された。
同時に、第2回バーゼル・ロッテルダム・ストックホルム条約拡大合同COPが開催され、3条約の協力・連携のレビュー、今後の協力・連携のあり方、3条約共同事務局の事業計画及び予算について議論が行われた。 - (7)2015年5月、COP7 が開催され(ジュネーブ)、新たに附属書A(廃絶)及び附属書C(非意図的放出の削減)への追加として、ポリ塩化ナフタレン、塩素数が2~8を含むものが掲載されることとなった。
- (8)2017年4月、COP8が開催され(ジュネーブ)、総合技術ガイドラインの改訂及び新規作成が提示され、採択された。
- (9)2019年4月、COP9が開催され(ジュネーブ)、附属書A(廃絶)にジコホル、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及びPFOA関連物質が追加された。
- (10)2021年7月(オンライン)及び2022年6月(対面、ジュネーブ)、COP10が開催され、ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)とその塩及びPFHxS関連物質の条約附属書Aへの追加が採択された。
- (11)2023年5月、COP11が開催され(ジュネーブ)、デクロランプラス、UV-328及びメトキシクロルの附属書Aへの追加が採択された。