軍縮・不拡散

「第24回国連軍縮会議in静岡」における
若林大臣政務官冒頭挨拶

平成25年1月30日

御列席の皆様,

 本日,「第24回国連軍縮会議in静岡」の開会に際し,日本政府を代表して,御挨拶申し上げる機会を頂きましたことを,大変光栄に存じます。主催者である国連軍縮部及び国連アジア太平洋平和軍縮センター,開催地・静岡市の皆様の熱意に敬意を表するとともに,御尽力に深く感謝申し上げます。また,世界各国からお越しくださった皆様を心から歓迎いたします。

 現在の国際社会は,軍縮・不拡散を巡る多くの困難な問題に直面しています。北朝鮮やイランの核開発は,地域における深刻な安全保障上の懸念であり,同時に核兵器不拡散(NPT)体制に対する重大な挑戦です。NPT体制の維持強化の努力は,締約国に等しく課された責務であります。また包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効,いわゆるカットオフ条約-兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の早期交渉開始等,国際的な規範整備においても進展を図らなければなりません。核軍縮に向けた機運をさらに高め,「核兵器のない世界」の実現に近づけるため,いかなる取り組みを進めていくべきか。霊峰富士の高嶺を望むこの風光明媚な地において,17世紀初頭,日本の戦乱の世に300年の天下太平をもたらした徳川家康公ゆかりのこの静岡市において,世界中からお集まりの皆様と共に議論できる機会を得られたことを,大変うれしく思います。

 軍縮・不拡散は,我が国が外交政策の中でも特に重視する分野の一つです。軍縮・不拡散を巡る問題は,我が国の安全保障に直結するものでありますが,それにとどまりません。我が国の取り組みには,唯一の戦争被爆国として,広島,長崎の惨禍を再び繰り返してはならないとの決意が込められています。広島出身である岸田外務大臣も核軍縮に積極的に取り組んでいく考えです。

 我が国は,「核兵器のない世界」の実現に向け,これまでも現実的かつ着実な外交努力を積み重ねてまいりました。1994年以降,毎年国連総会に提出している核軍縮決議案は,世界各国の圧倒的多数の支持を得て採択されています。昨年は,日本と共に,米国,英国を含む99か国が共同提案国となり,過去最多の圧倒的多数で決議が採択されました。我が国は今後も引き続き,このような決議案の提出を通じて,国際社会による取り組みを主導して参ります。

 また我が国は,2010年NPT運用検討会議の最終文書に盛り込まれた行動計画の着実な履行に貢献するため,同年9月にオーストラリア政府と共に,地域横断的な非核兵器国のグループ「軍縮・不拡散イニシアティブ」(NPDI)の立ち上げを主導しました。このNPDIは,これまでメンバー国外相による実質的な議論を通じ,核戦力の透明性向上のための提案等,具体的な実績を着実に挙げています。NPDIは次回2015年のNPT運用検討会議に積極的な貢献を行っていきます。

 我が国は,核兵器使用の人道的結末をどの国よりも深く理解する国です。唯一の戦争被爆国としての経験を世界と後生に伝えていくことは,我が国の使命であり責務であると確信しています。我が国はこれまでも,核兵器使用の悲惨さを世界に伝えるべく,非核特使を派遣したり,被爆証言を複数の言語に翻訳し,国際社会に発信するなど,様々な努力を重ねてきています。その一方で,被爆から67年を経て,被爆証言の担い手を若い世代へと継承していくことが課題となっています。2010年以降,これまでに延べ88名の被爆者の方々に非核特使として,国内外において貴重な被爆体験を語っていただいています。今後は,この活動に加え,高校生や大学生といった被爆を経験していない若い世代にも,様々な国際的な場面で,核兵器使用の悲惨さや非人道性,平和の大切さを世界に発信していただく機会を設けるなど,被爆体験の継承を図る方策を関係者の方々と共に検討してまいります。

 核兵器使用の結末を正確に認識することを出発点として,特に若い世代の皆さんと共に,「核兵器のない世界」を実現する道筋を考えていく-ここに我が国が率先して取り組んでいる軍縮・不拡散教育の意義があります。昨年の8月には,国連大学と共催で長崎市において「軍縮・不拡散教育グローバル・フォーラム」を開催しました。今回のここ静岡での会議でも,前回の松本会議に続き,地元学生と会議参加者との交流イベントが予定されています。軍縮・不拡散教育推進のため,政府や国際機関の取り組みが,研究・教育機関,NGO,メディアの皆様との連携を通じて,より大きな相乗効果を発揮することを期待します。

 今回の会議では,核兵器の人道的側面をはじめ,核軍縮と不拡散に関する幅広い議題を取り上げます。併せて,自動小銃など小型武器の問題についてのセッションも設けました。小型武器は実際に紛争や犯罪で主な武器として使用され,「事実上の大量破壊兵器」とも呼ばれています。我が国も小型武器の問題に大きな関心を持ち,国連を中心とする枠組みを通じて主導的な役割を果たしてきました。それぞれの議題について,世界各国の様々な立場から,活発な意見交換がなされることを期待します。また,市民の皆様が積極的に今回の会議のセッションに参加され,様々な角度から今回の国連軍縮会議をご満喫いただき,軍縮の推進に向けて行動されるきっかけとなるよう願っています。

 最後になりましたが,「国連軍縮会議in静岡」の成功を心から祈念し,私の挨拶とさせていただきます。

 御静聴ありがとうございました。