軍縮・不拡散

2010年NPT運用検討会議第3回準備委員会
(概要と評価)

平成21年5月15日

 5月4日から15日まで、ニューヨークの国連本部にて、2010年NPT(核兵器不拡散条約)運用検討会議第三回準備委員会が行われたところ、概要以下のとおり(議長は、シディヤウシク・ジンバブエ国連常駐代表。我が方より、柴山昌彦外務大臣政務官が代表団長として出席。樽井軍代大使、須田次期軍代大使他が出席)。

1.成果(運用検討会議の手続事項に関する決定)

 (1)運用検討会議の暫定議題が採択された。同議題の主な内容は以下のとおり。

(イ)核不拡散、核軍縮及び国際の平和と安全

(ロ)消極的安全保証

(ハ)保障措置及び非核兵器地帯

(ニ)締約国の原子力の平和的利用の権利

(ホ)その他

(2)運用検討会議の議長候補者としてリブラン・N・カバクテュラン(Libran N. Cabactulan)駐アラブ首長国連邦フィリピン大使が指名された。

(3)運用検討会議は、明年5月3日から28日までニューヨークの国連本部にて開催されることが決まった。

(4)その他、運用検討会議の手続規則、主要委員会への議題の割り当て等が採択された。

2.実質的討議

 核軍縮、核不拡散、原子力の平和的利用、中東決議、脱退、軍縮・不拡散教育等について、実質的討議が行われた。

(1)この中で、特に核軍縮については、最近の米露間における第一次戦略兵器削減条約(START I)の後継条約に関する交渉開始の合意、オバマ米大統領による前向きな演説等を評価する発言が、西側諸国からのみならず、非同盟諸国からも相次いでなされ、準備委員会の雰囲気が大幅に改善されていることが看取された。

(2)核不拡散については、北朝鮮の核問題の解決を求める発言が非同盟諸国を含む多くの国からなされるとともに、イランについては、その原子力の平和的利用の権利を認めつつも、国際的信用を回復するよう求める発言が西側諸国からなされた。核燃料供給保証については、途上国から原子力の平和的利用の権利を阻害するものであってはならないとの発言が多くなされた。核不拡散の強化を求める西側諸国と、核不拡散の強化を原子力の平和的利用に対する制限と捉えてこれを警戒する非同盟諸国の対立が、引き続き看取された。

(3)中東決議について、特にエジプトをはじめとするアラブ諸国より、中東地域の非核兵器地帯の設置等、95年の中東決議の実施に向けて具体的前進を求める発言がなされた。また、脱退に関し、条約に違反して脱退を図る事例を防止するため、そのような脱退を図る国に対する様々な措置についての提案が西側諸国よりなされた一方、非同盟諸国は殆ど発言を行わない等消極的姿勢を示した。

(4)軍縮・不拡散教育については、我が国を含む29か国が、広島・長崎の被爆に関する事実を世界及び将来の世代と共有していくべきとの考えを含む共同発言を行った。また、我が国、モントレー不拡散センター、国連軍縮部及び国連軍縮研究所共催にて、被爆者及びリーパー広島平和文化センター理事長の参加も得て、軍縮・不拡散教育についてのセミナーを開催した。

3.我が方の主張

 5月4日の一般討論において、柴山外務大臣政務官が、4月27日の中曽根外務大臣の演説に沿って発言した。その中で、北朝鮮による関連の国連安保理決議の実施を強く求めるとともに、イランによる国際的信用の回復を求めること、NPT未加入国による非核兵器国としてのNPT加入を求めること、そして、中曽根大臣が提案した「世界的核軍縮のための11の指標」を提案した。我が国は、この「11の指標」を含む作業文書を今次準備委員会に提出した。

4.運用検討会議への勧告案

 5月8日、議長が、運用検討会議への勧告案を配布し、12日、各国の一般的コメントを求めたところ、各国より、議長の努力を評価し、今次準備委員会における前向きな雰囲気を壊すべきでないとの見方が示された。同時に、一部の国からは、勧告案はほぼバランスが取れている上に、前文の「その他の提案について予断することなく」との文言により、運用検討会議での議論の柔軟性は確保されるとして、勧告案をそのまま採択すべきとの主張もあった。一方、勧告案は核軍縮、核不拡散及び原子力の平和的利用の3本柱の取扱い方についてバランスを欠いているとの指摘もなされ、同勧告案の構成及び内容を改善するための数多くの意見が表明された。結局、時間の制約もあり合意に至らず、明年の運用検討会議で合意文書の作成を目指すこととなった。

5.今次準備委員会に対する評価

 今次準備委員会は、運用検討会議の議題等の手続事項に合意し、その最大の課題を克服するとともに、勧告案の採択こそ見送られたものの、実質的な議論が進められ、各国の立場もより明確になるなど、明年の運用検討会議に向けての準備委員会の役割を十分に果たした。また、5核兵器国は、会合終了後、すべてのNPT締約国共通の義務である核軍縮に向けた取組への永続的かつ明確な約束を改めて表明する旨の共同プレスステートメントを発表した。

 NPT体制の維持・強化のため、明年5月のNPT運用検討会議において、核軍縮、核不拡散及び原子力の平和的利用についてバランスのとれた合意文書を採択することが期待されており、このことは国際社会が一致して取り組むべき重要な課題である。

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