軍縮・不拡散

2015年NPT運用検討会議第1回準備委員会(概要と評価)

平成24年5月11日


 4月30日より5月11日まで,国連ウィーン本部において2015年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議第1回準備委員会が開催された。議長は,オーストラリアのウールコット軍縮代表部大使が務め,我が国代表団としては,浜田外務大臣政務官(代表団長),天野軍縮代表部大使,小澤ウィーン代表部大使他が出席した。

ポイント

1.今次準備委の位置づけ

 今次準備委員会は,2015年NPT運用検討会議に向けたプロセスの出発点となる重要な会議であり,また,我が国が他の9カ国と共に立ち上げた軍縮不拡散イニシアティブ(NPDI)として活動する初めてのNPT関係会議であった。準備委員会の議題の採択等の手続事項も含め新しく始まる運用検討プロセスを円滑にスタートさせ,その上でNPT体制の維持・強化に貢献する実質的な議論を行い,NPTに対する国際社会の信頼を維持・強化することが今次準備委の重要な課題であった。

2.結果

  1. (1) 初日の冒頭,異論なく議題が採択され,その後,一般討論,NGOセッションに続き,実質事項(核軍縮,安全保証,核不拡散,中東非大量破壊兵器地帯,北朝鮮を含む地域問題,原子力の平和的利用,運用検討プロセス改善)についての議論が行われ,最終日に報告書が採択された。議長が議長の責任の下で議論の内容を総括した議長サマリーは,議長による作業文書として報告書の中で言及された。
  2. (2) 第2回準備委員会は,明年4月22日から5月3日まで,ジュネーブにおいて開催されることが決定した。

3.わが国の対応

  1. (1) わが国は,一般討論にて浜田外務大臣政務官が演説を行ったほか,天野軍縮代大使,小澤ウィーン代大使他が個別事項毎(核軍縮,安全保証,核不拡散,中東非大量破壊兵器地帯,地域問題,原子力の平和的利用等)の演説を行った。
  2. (2) わが国は,NPDI諸国と共同で作業文書を4本(核戦力の透明性(報告フォーム),兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT),軍縮不拡散教育,IAEA追加議定書)今次準備委員会に提出した。また,一般討論においてトルコがNPDIを代表して演説を行うと共に,オランダ主導で,NPDIの活動について紹介するサイドイベントを行った。
  3. (3) また,軍縮・不拡散教育の分野においては,廣瀬方人氏(長崎在住)が非核特使として,今次準備委員会の機会に開催されるサイドイベントにおいて自身の被爆体験を通じて核兵器使用の惨禍の実相を伝達し,核軍縮の必要性・重要性を訴えた。
  4. (4) わが国代表団は,ツイッターを通じてわが国の準備委員会での活動について広報に努めた(軍縮・不拡散教育に関するグローバル・フォーラムの公式アカウント:@global_forum)。

4.今次準備委に対する評価

  1. (1) 今次準備委では,議題の採択においても各議題での議論においても議論が紛糾することはなく,議事はスムーズに進行した。これは,議長であるウールコット大使による事前の関係各国とのきめ細かな調整と公平な議事進行に負うところが大きい。NPT体制が北朝鮮やイランの核問題等の深刻な挑戦に直面する中,2015年NPT運用検討会議に向けたプロセスを成功裡に開始することができたことは,NPTの信頼性を維持・強化し,核軍縮・不拡散を推進する上で大変有意義なものであった。
  2. (2) 北朝鮮については,日米韓を含む多数の国より,核問題に対する懸念,4月13日のミサイル発射への非難が表明されるとともに,北朝鮮に対し,完全・検証可能・不可逆的な非核化,核実験を含む更なる挑発行為の自制等を求める発言があり,議長サマリーにおいても,このような発言を反映した総括が行われた。
  3. (3) 原子力安全については,東京電力福島第一原発事故を受けて原子力安全を国際的に強化すべき旨の発言が行われ,IAEAの原子力安全行動計画を着実に実施すべき旨が指摘された。また,いくつかの国から,本年12月の原子力安全に関する福島閣僚会議に対する期待が表明された。
  4. (4) NPDIを立ち上げてから最初のNPT関連会議であったが,直前のトルコにおける局長級会合の結果を踏まえ,4本の共同作業文書提出,会議初日の共同ステートメント,第1週目のアウトリーチ・サイドイベント等を行うことにより一定の存在感を示すことができた。4本の共同作業文書の趣旨は,議長サマリーにもそれぞれ反映された。
  5. (5) 核兵器の人道上の側面に関し,スイスが16カ国を代表して発言し,参加各国やNGO等の間で注目が集まった。ノルウェーは,核兵器使用の人道上の側面に焦点を当てた国際会議を2013年春に開催する予定であり,2015年NPT運用検討会議に向けて,注目される論点の一つとなることが予想される。
  6. (6) 中東非大量破壊兵器地帯に関する議論において,本件国際会議のファシリテーターを務めるラーヤバ・フィンランド外務次官補が,これまでの準備状況と各国との協議の結果を報告し,日程について多くの国は本年12月に言及したが,現時点で具体的に発表できるまでには至ってない旨述べた。本件国際会議の開催は,次回準備委員会に向けた重要課題の一つ。我が国が,域外国としても本件国際会議及び中東非大量破壊兵器地帯の設置に向けて貢献できる旨述べたところ,他の代表団より前向きな反応が得られた。なお,我が国のウィーン代表部は,ウィーン軍縮・不拡散センター及びフィンランド代表部と共に,ラーヤバ外務次官補とNGOとの対話形式のセミナーを代表部内で開催した。
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