平成20年9月24日
9月24日、ニューヨークの国連本部において、第4回包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ外相会合が開催され、我が国からは川口順子政府代表(元外相)が団長として出席したところ、概要と評価は以下のとおり。(川口政府代表演説(仮訳))
(1)趣旨
本会合は、CTBT発効促進会議(2年に1度開催)が開催されない年にCTBT発効促進の機運を維持・強化するために開催される外相会議であり、会議の成果として閣僚共同声明を発出。今回が4回目(第1回、2002年。第2回、2004年。いずれも川口外務大臣(当時)が出席。第3回、2006年。伊藤大臣政務官(当時)が出席)。
(2)参加国
今次会合には、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長、俳優のマイケル・ダグラス氏(国連平和大使)、ペリー元米国防長官が来賓として出席し、共催国である我が国、豪州、オーストリア、コスタリカ、オランダ、フィンランドを含め、80ヵ国程度が参加(同共催国に加え、仏、バングラデシュ、独、コロンビア、フィリピン等から閣僚級が参加)した。
(3)議論の内容
(イ)スミス・豪州外相の開会挨拶。
(ロ)潘基文・国連事務総長の演説。
(ハ)プラスニック・オーストリア外相及びウガルテ・コスタリカ外相(昨年行われた第5回発効促進会議の共同議長)からの発言
(ニ)川口政府代表の発言:我が国は唯一の被爆国としてCTBTの早期発効を重視している、また、自らが日豪首脳のイニシアティブで設立される「核不拡散・軍縮に関する国際委員会」の共同議長として、2010年のNPT運用検討会議に向けてCTBTの早期発効のために精力的に取り組んでいきたい。先ずは核兵器国である米、中、そしてNPT未加入のインド、パキスタン及びイスラエルに対して、CTBT批准を呼びかけた(英語で発言)。
(ホ)マイケル・ダグラス国連平和大使の発言。
(ヘ)ペリー元米国防長官の発言:自らが国防長官であった1970年代後半に、年に2回程度、ソ連がICBMを発射したとの誤情報に惑わされた。CTBT早期発効、そのための米国の批准の必要性を強調。米国及びロシアが核軍縮でリーダーシップをとるべきであり、両国はより大幅な核の削減を進めるべき。
(ト)仏、英、独等、10ヵ国の各代表が、CTBTの発効を重視するとの発言を行った。但し、露が、閣僚共同声明について、露が提出した意見が反映されていないので、同声明に参加しない、これは露のCTBTを重視する立場が弱まったことを意味するものではない旨発言。
(チ)スタブ・フィンランド外相が閣僚共同声明を説明した(下記(4)参照)。
(リ)トートCTBTO準備委事務局長より、CTBTは核兵器開発に対する最後の砦であることを強調しつつ、今回の会合を主導したフレンズ各国外相への謝意を示した。
(4)閣僚共同声明の要旨
(イ)CTBTは、NPTの無期限延長を可能にした1995年NPT運用検討会議における合意の不可分の一体をなすものであり、CTBTの早期発効は、2000年NPT運用検討会議で核軍縮・不拡散の目標を達成する実際的措置として位置付けられている。
(ロ)CTBTは、核兵器拡散を防止するとともに、核兵器の開発並びに質的向上を抑制し、新型核兵器の開発を終わらせる。CTBT早期発効問題における進展は、2010年NPT運用検討会議の積極的な成果に資する。
(ハ)CTBT未署名・未批准国、特に発効要件国に対し、可及的速やかにCTBTを署名・批准することを要請する。
(ニ)2006年10月の北朝鮮による核実験に関し、国連総会決議61/104のとおりこれを非難するとともに、2005年の6ヶ国協議共同声明及び国連安保理決議1965及び1718の確実な実施による核問題の平和的解決の必要性を強調する。
(ホ)CTBT検証制度は、核実験の検証という第一義的な機能に加え、津波警報機関や他の防災警戒制度に対する貢献を含め科学及び民生上の利益をもたらしつつある。
(1)今回のCTBTフレンズ外相会合には、核兵器国の英、仏、露を含め、前回を大きく上回る80ヵ国程度の参加者が得られ(第1回会合の参加国10カ国の8倍程度)、CTBTへの支持のこれまでにない高まりを印象づけた。
(2)ペリー元国防長官が核軍縮に関してかなり踏み込んだ発言を行い、米国における新しい論調を強く印象づけた。他方、この新しい考え方がどれだけはっきりと政策化されていくかどうかについては、米大統領選挙及び議会選挙の結果が注目される。
(3)我が国は、ハイレベルでの代表派遣を通じて主催国の一つとして主導的役割を果たした(ウイーンにおける準備段階では、共催国会合を主宰するなど、積極的に努力した)。これにより、唯一の被爆国である我が国として、核軍縮・不拡散のための具体的措置としてCTBTを極めて重視している姿勢を示すことができた。